
「投資で大きな損失を出したらどうしよう…」
そんな不安を抱えながら、相場の動きをチェックしている人も多いのではないでしょうか?
実際、資産運用をする上で、最も怖いのは「資産がどこまで減ってしまうのか」が分からないことです。特に、市場の急変動時には、一時的に大きく資産が目減りすることもあります。このような状況を客観的に把握し、リスクを適切に管理するための指標が「ドローダウン(Drawdown, DD)」です。
ドローダウンを理解すれば、投資リスクをより明確に評価でき、資金管理の精度も向上します。
アドバイス逆に、この指標を知らずに投資を続けると、知らないうちに許容範囲を超える損失を抱えてしまうリスクも…。
そこで本記事では、ドローダウンの基本的な考え方から、計算方法、リスク管理のコツ、さらにはDDを抑える具体的な投資戦略まで詳しく解説していきます。
ドローダウンの基本知識
ドローダウン(Drawdown)とは、資金がピークからどれだけ減ったかを示す”下落幅”です。
利益がどれだけ出ていても、途中で大きく資金が減る運用は危険です。その「どれだけ危険か」を数字で表すための指標がドローダウンです。
投資家やファンドマネージャーがパフォーマンス評価やリスク管理の指標として活用しており、長期的な資産運用を考える上で欠かせません。
「資金の落ち込み」を可視化する指標
トレードでは、勝ち続けても必ず含み損や負けが発生します。ドローダウンを見ることで、以下のことがわかります。
- どれだけ資金が減ったか
- どこまで耐えられる運用か
- 資金管理が適切か
残高が100万円 → 150万円 → 120万円
→ ドローダウン:30万円(ピークの150万円から30万円減少)
数字化することで、感覚ではなくリスクとして判断できるようになります。
「破綻しやすい戦略」が見抜ける
勝率や利益が良くても、ドローダウンが深い戦略は危険です。
- ナンピン・マーチンで利益を積むが、1回の損失が致命傷になる
- 過去に口座が何度も半減している
- バックテストの損益曲線だけが綺麗で、DDの深さが隠されている
こうした手法は、1回の急変動で即退場する可能性が高いです。
「どこまで耐えられるか」の基準になる
ドローダウンは、リスク管理の基礎です。以下のすべてをドローダウンから逆算できます。
- 口座資金に対して何%まで許容するか
- 強制ロスカットに耐えられるか
- Lotをどれだけ下げるべきか
- いくら入金しておけば安全か
ドローダウンの計算方法・種類(絶対・相対・最大)
ドローダウンは、資金がピークからどれだけ減ったかを数値化したものです。損失額だけではなく、「資金に対してどの程度のダメージか」を判断するために使います。
ドローダウンには3つの種類があり、それぞれ見る視点が異なります。
| 種類 | 何を見る? | 使う場面 |
|---|---|---|
| 絶対DD | 初期資金からの減少額 | 口座の生存ライン確認 |
| 相対DD | ピークからの下落率(%) | リスク・資金管理の標準指標 |
| 最大DD | 最悪の下落幅・下落率 | EA・ファンド・バックテスト評価で最重要 |
絶対ドローダウン(Absolute Drawdown)
口座初期残高からどれだけ資金が減ったかを見る指標です。
計算式
絶対DD = 初期残高 − 最低残高
- 初期残高:100万円
- 最低残高:70万円
- 絶対DD = 100万 − 70万 = 30万円
相対ドローダウン(Relative Drawdown)
資金が増えた後の”最大下落率(%)”を確認する指標です。「どれくらいの落ち込みに耐えられる戦略なのか」を判断するために最も使われます。
計算式
相対DD(%) = (ピーク残高 − ボトム残高) ÷ ピーク残高 × 100
- 一時的に150万円まで増加(ピーク)
- その後100万円まで下落(ボトム)
- 相対DD = (150 − 100) ÷ 150 × 100 = 33.3%
最大ドローダウン(Maximum Drawdown)
最大ドローダウンとは、「資産が過去のピーク時点(最高値)からどれだけ減少したか」の最大値を示す指標です。バックテスト・EA評価・ファンド分析で最も重要視されます。
最大ドローダウン(%)=(ピーク時の資産額 – 最安値の資産額)÷ ピーク時の資産額 × 100%

ケース1:株式投資の例

ある投資家が 100万円 を元手に株式投資を始めました。
- 相場が好調で資産は 150万円 に増加(ピーク)
- しかし、市場の急落により 90万円 まで減少(最安値)
- その後、再び相場が回復し、現在は 120万円
この場合、最大ドローダウンは以下のように計算できます。
(150万円 – 90万円)÷ 150万円 × 100% = 40%
ケース2:EA取引の例
あるEAで次のような運用をした場合を考えてみます。

1月:100万円(開始) 2月:150万円(ピーク) 3月:130万円 4月:90万円(底値) 5月:120万円
この場合、最大ドローダウンは40%(150万円から90万円への下落)となります。この指標は特に単利運用のEAを評価する際に重要で、取引システムの安定性を判断する基準となります。
「一番ひどい下落」を知ることで、最悪パターンへの耐久力を判断でき、実運用の安全ラインを決める材料になります。
ドローダウンが示すリスク・資金管理との関係
ドローダウンは、単なる「資金の落ち込み」ではありません。どれだけの損失に耐えられるか=生存率を示す指標であり、資金管理の核心そのものです。
ドローダウンが大きいほど破綻に近づく
ドローダウンの深さが致命的である理由は、回復に必要なリターンが指数関数的に増大するためです。
| ドローダウン | 回復に必要なリターン | 難易度の目安 |
|---|---|---|
| -10% | +11.1% | 比較的容易 |
| -20% | +25.0% | 数か月で回復可能 |
| -30% | +42.9% | 半年〜1年かかる |
| -50% | +100.0% | 非常に困難 |
| -70% | +233.3% | 実質的に再起不能 |
資金を半分失えば、元に戻すには「倍」の利益が必要。ドローダウン30%を超えると回復ハードルが急激に上がるため、20%以内に抑えることが資金管理の基本です。
適正ロットは「許容ドローダウン」から決まる
多くの人は「このくらいなら勝てるだろう」と感覚でロットを決めてしまいます。しかし正しい順番は逆です。
許容DD → 必要証拠金 → ロットの順で決めるのが正しいアプローチです。
- 許容DD:20%まで
- 資金:50万円 → 耐えられる損失は10万円まで
- EAの過去最大DD(円換算)から逆算してロットを設定
ロットを決める根拠=ドローダウンの許容量です。感覚ではなく数値で判断することが、長期的な生存につながります。
同じ利益でも「DDの浅い手法」の方が強い
年利が同じでも、ドローダウンの深さで戦略の質は大きく変わります。
| 項目 | 手法A | 手法B |
|---|---|---|
| 年利 | +50% | +50% |
| 最大DD | -40% | -10% |
| リカバリーファクター | 1.25 | 5.0 |
生存率もメンタルも、手法Bが圧倒的に優秀です。特にEA・裁量どちらでも、“勝ち続ける”より”死なない”方が価値が高いのです。
DDと他のリスク指標との違い
ドローダウンは、実際に発生した資産の下落幅を反映するという特徴があります。これに対して、他のリスク指標には以下のようなものがあります。

- 標準偏差(ボラティリティ):価格変動の大きさを示すが、上下の振れ幅を均等に評価するため、大暴落時のリスクを直接反映しない。
- シャープレシオ:リスクに対するリターン効率を測るが、資産の一時的な急落リスクまでは示さない。
ドローダウンが発生しやすい場面・原因
ドローダウンは「負けたから起きる」わけではありません。相場の性質・戦略の弱点・トレーダーの行動が重なったときに深くなります。
以下の3つが典型的な原因です。
レンジ崩壊・トレンド転換に逆張りで巻き込まれる
逆張り・ナンピン型の戦略は、”レンジ前提”でポジションを増やします。
- レンジ → 突然のブレイク
- 逆行が加速して建値に戻らない
- ナンピンが効かず含み損が膨張
「戻るだろう」の思考でロットが積み上がり、一気に口座を削る。裁量でもEAでも、このパターンが退場の大半を占めています。
高ボラティリティ(指標・戦争・要人発言)の急変動
値幅が跳ねると、以下の現象が同時に発生します。
- スプレッド拡大で想定外のコスト増
- 滑り(スリッページ)で約定価格がずれる
- 損切りが遅れて一撃で大きく削られる
ロットが大きい場合は即死もあり得ます。特にナンピン・グリッド・逆張り系の戦略は指標発表時に弱いため、経済指標カレンダーの確認が重要です。
ロット過多(資金に対してポジションが重い)
ドローダウンの”本当の原因”は、実はこれです。
- 手法が悪いから負ける → 多くの場合、原因ではない
- ロットが大きいから耐えられない → これが本質的な原因
同じ手法でも、ロットが1/3なら死なずに済むケースがほとんどです。
ドローダウンの回復期間と心理的影響
ドローダウンの「深さ」だけでなく、「回復にかかる期間」も投資判断において極めて重要です。どれだけ優れた戦略でも、回復に何年もかかるようでは実用的とはいえません。
ドローダウン回復期間の考え方
回復期間とは、資金がピークから減少した後、再びピークを更新するまでにかかる日数のことです。
| 最大DD | 月利2%の場合の回復目安 | 月利5%の場合の回復目安 |
|---|---|---|
| -10% | 約5〜6か月 | 約2か月 |
| -20% | 約12か月 | 約5か月 |
| -30% | 約18か月以上 | 約8か月 |
| -50% | 約35か月以上 | 約14か月 |
DDが深くなるほど回復期間は指数的に伸びます。月利2%でも-50%のDDから回復するには約3年かかる計算です。
心理的影響:DDが投資判断を狂わせる
ドローダウンが深くなると、投資家の心理にも大きな影響を与えます。
- パニック売り:「このまま続けていいのか」と不安になり、底値で損切りしてしまう
- リベンジトレード:損失を取り戻そうとロットを上げ、さらにDDが深くなる
- 戦略の放棄:有効な手法なのにDDの最中に切り替え、回復の機会を逃す
- 投資自体の撤退:メンタルが持たず、長期投資を途中でやめてしまう
アドバイスDDの深さ自体よりも、「想定外のDD」が心理に一番ダメージを与えます。事前にバックテストで最大DDを把握しておくことが重要です。
対策として、事前に「このDDまでは想定内」と許容ラインを決めておくことが有効です。数値で基準を持っていれば、DDの最中でも冷静な判断がしやすくなります。
ドローダウンを活用したEA・ストラテジーの評価方法
ドローダウンは、EA(自動売買プログラム)やトレード戦略を比較・評価するための最も重要な指標の一つです。ここでは、DDを軸にした実践的な評価方法を解説します。
リカバリーファクター(RF)で総合評価する
リカバリーファクターとは、純利益を最大DDで割った値で、リスクに対してどれだけ効率よく利益を出しているかを示します。
リカバリーファクター = 純利益 ÷ 最大ドローダウン
| RF値 | 評価 |
|---|---|
| 1.0未満 | リスクに見合わない(非推奨) |
| 1.0〜3.0 | 標準的(許容範囲) |
| 3.0〜5.0 | 優秀 |
| 5.0以上 | 非常に優秀 |
DD期間・DD回数も確認する
最大DDの「深さ」だけでなく、以下のポイントもチェックしましょう。
- DD回数:頻繁にDDが発生する戦略は、メンタル負荷が高い
- DD期間:回復に時間がかかる戦略は、途中で運用を止めてしまいがち
- DDの分布:特定の相場環境だけでDDが集中していないか
バックテストとフォワードテストのDD比較
EA評価で最も注意すべきなのは、バックテストのDDとフォワードテストのDDの乖離です。
- バックテストDD < フォワードDD → 過剰最適化の疑いあり
- バックテストDD ≒ フォワードDD → 信頼性が高い
- バックテストDD > フォワードDD → 相場との相性が良い(ただし今後変わる可能性も)
ドローダウンを実運用前に確認できる環境の重要性
FX自動売買では、バックテストの結果だけでEAを選ぶと、実際の運用で想定外のドローダウンに直面するリスクがあります。
バックテストは過去のデータに基づいた理想的な環境での結果であり、現在進行形の相場での振る舞いとは必ずしも一致しません。
バックテストと実運用の「DD乖離」が起こる理由
多くのEAマーケットプレイスでは、バックテストの最大ドローダウンのみが公開されていますが、実際の運用では以下の要因でドローダウンが想定以上に拡大することがあります。
- スプレッドの変動:バックテストは固定スプレッドで計算されるため、実運用での変動を反映しない
- スリッページ:急変動時の約定ズレがバックテストには含まれない
- 相場環境の変化:過去のトレンド・ボラティリティと現在の市場が異なる
そのため、実際の相場でどの程度のドローダウンが発生するのかを事前に把握できることが、EA選びにおいて最も重要なポイントとなります。
フォワードテストで「生の運用成績」を確認する
シストレ.COMでは、掲載されている全てのEAについてフォワードテスト結果をリアルタイムで公開しています。これにより、実際の市場環境下での収益推移を確認してからEAを選ぶことが可能です。
- 累計収益の推移:資金がどのように増減しているか
- 取引履歴:個別のトレード結果と勝率
- プロフィットファクター:総利益と総損失の比率
- 資金曲線の形状:急激な下落(=ドローダウン)の有無
公平な比較のため、すべてのフォワードテストは0.01ロットに統一して実施されており、資金量の違いによる影響を排除した純粋なEAの性能を評価できます。
また、開発者元のリアル口座でのフォワードテスト結果も掲載されているため、長期的な運用実績も確認可能です。
資金曲線の形状を見れば、「急激な下落がないか」「回復に時間がかかっていないか」といったドローダウンの特性を視覚的に判断できます。右肩上がりで安定した曲線を描くEAほど、実運用でも低ドローダウンで運用できる可能性が高いといえます。
実際の相場での運用成績を確認してからEAを選びたい方は、シストレ.COMのEAランキングで各商品のフォワードテスト結果をご覧ください。
ドローダウンを抑える投資戦略
では、どうすれば最大ドローダウンを抑えることができるのでしょうか? ここでは代表的なリスク管理の方法を紹介します。

分散投資の徹底
「卵は一つのカゴに盛るな」という格言の通り、資産を複数の投資対象に分けることでリスクを分散できます。
- 株式と債券の組み合わせ(例:60%株式 + 40%債券)
- 異なる地域への投資(米国株、日本株、新興国株など)
- 異なる資産クラス(株式、債券、不動産、ゴールド)
- EAの場合は複数のロジックを組み合わせる(EAポートフォリオ)
分散投資を行うことで、特定の資産が大きく下落しても、ポートフォリオ全体の最大ドローダウンを抑えられます。
損切りルールの設定と資金管理
最大ドローダウンを抑えるためには、損切りルールを設定することも重要です。
- 個別株の損切りラインを -10%〜-15% に設定
- ポートフォリオ全体の損失が -20%を超えたらポジションを見直す
- 1回の取引で投資資金の2%以上を失わないように調整する(2%ルール)
- レバレッジ取引は慎重に行い、リスクを管理する
その他のドローダウン軽減手法
- ヘッジ戦略:オプション取引や先物を活用し、価格変動リスクを抑える
- リバランスの実施:定期的にポートフォリオを見直し、資産配分を調整する
- ボラティリティの低い銘柄を選ぶ:値動きの激しい銘柄ではなく、安定した銘柄に投資する
- DD発生時にロットを縮小する:一定以上のDDに達したらロットを半分にするルールを設定する
このように、ドローダウンを管理することで、長期的に安定した資産運用を実現しやすくなります。
まとめ:ドローダウンを理解し、賢い投資戦略を
特に、市場の急変動時には、最大DDを把握しておくことで、リスク管理の精度が向上します。
本記事では、以下のポイントを解説しました。
- ドローダウンとは? → 資金がピークからどれだけ減少したかを示す指標
- 3つの種類 → 絶対DD・相対DD・最大DDを使い分ける
- リスク管理との関係 → DDの深さが回復の難易度を決める(-50%で回復に+100%必要)
- 回復期間と心理的影響 → DDが深いほど回復期間が長く、メンタルにも悪影響
- EA評価への活用 → リカバリーファクターやフォワードテストでDDを確認
- 投資戦略 → 分散投資・損切りルール・ロット管理でDDを抑制
アドバイス最大ドローダウンを理解し、リスクをコントロールすることで、安定した資産運用が可能になります。ぜひ自身の投資スタイルに合ったリスク管理戦略を取り入れてください。
ドローダウンに関してのよくある質問
- Q. ドローダウンはどれくらいが安全ライン?
-
一般的に10〜20%は「健全」、30%超はハイリスク、50%以上は再起不能ゾーンとされています。システムトレードなら最大DD<年間利益が最低条件です。
- Q. 最大ドローダウンと相対ドローダウンの違いは?
-
最大DDは過去すべての期間で最も深い落ち込みです。相対DDは過去の最大資産からの下落率を表します。複数のEAや戦略を比較するときは「最大DD(%)」を見るのが最も公平です。
- Q. ドローダウンは0%にできる?
-
不可能です。損切りがある限り必ずDDは発生します。重要なのは「小さく・短く・回復可能」に抑えることです。DDゼロを目指すより、許容範囲に収める資金管理を意識しましょう。
- Q. DDが深くなる一番の原因は?
-
ロット過多と逆張りナンピンが最大の原因です。手法そのものより資金管理の問題であることがほとんどで、ロットを半分にするだけで生存率は劇的に上がります。
- Q. EAでもドローダウンは起こる?
-
起こります。バックテストが右肩上がりでも、相場環境(ボラティリティ・トレンド性)の変化で必ず一時的な停滞や下落があります。フォワードテストで実際のDDを確認してからEAを選ぶことが重要です。
- Q. リカバリーファクターとは何ですか?
-
リカバリーファクター(RF)は「純利益 ÷ 最大ドローダウン」で計算される指標です。RF値が高いほど、少ないリスクで効率よく利益を出していることを意味します。一般的にRF3.0以上が優秀とされます。
- Q. どのくらいのDDで運用停止すべき?
-
過去のバックテスト・フォワードテストで記録された最大DDを明確に超えたら危険サインです。ロジックが相場環境に合わなくなった可能性があり、運用停止またはロット縮小を検討すべきです。





