「トレンドが出てるって聞くけど、どれくらい強いのか、どう判断したらいいの?」そんな疑問を抱いたことはありませんか?特にFXや株式など値動きの大きい相場では、トレンドの“強度”を読み解くのが取引の命運を分けるカギになります。そこで注目したいのが「Trend Intensity Index(TII)」。この指標、ただのオシレーターではありません。
Trend Intensity Index(TII)とは?|意味と基本概念
Trend Intensity Index(TII)とは、価格が移動平均線からどれだけ離れているかをもとに、現在のトレンドの“強さ”を数値化する指標です。一般的なオシレーターとは異なり、TIIはトレンドの“勢い”を視覚的に捉えるのが特長。開発者はM.H. Peeで、2002年にその仕組みが紹介されました。
例えば、「今、トレンドが出てるらしいけど乗っていいの?」という場面で、TIIが80を超えていれば“強い上昇トレンド”を示唆します。逆に20以下なら“強い下降トレンド”。このようにTIIは、一定の目安を持ってトレンドの方向と勢いを判断できるのです。
ADXやRSIといった他のトレンド系・モメンタム系指標と比較しても、TIIは「価格の偏り」に注目している点で異彩を放ちます。ADXが“トレンドの有無”を、RSIが“買われ過ぎ/売られ過ぎ”を表すのに対し、TIIは「どれくらい離れているか=どれだけ価格が偏っているか」を重視します。
TIIの計算方法と構成要素の理解
TII(Trend Intensity Index)の計算は、「価格が移動平均からどれだけ上下に偏っているか」を測ることでトレンドの強さを定量的に把握するものです。具体的には、以下の手順で求められます。
まず、一定期間(通常は60期間)で単純移動平均(SMA)を計算します。続いて、その移動平均と実際の終値との差を「乖離」として記録。この乖離がプラスなら「強気方向」、マイナスなら「弱気方向」の動きとして評価されます。
次に、直近の一定期間(たとえば30期間)にわたり、プラスの乖離(SDpos)とマイナスの乖離(SDneg)をそれぞれ合計。その合計を用いて、以下のようにTIIが算出されます。
100 × SDpos ÷(SDpos + SDneg)
この式の意味は、「強気の乖離が全体のどれくらいを占めているか」をパーセンテージで表している、ということ。結果として、TIIの数値が高ければ高いほど、価格が移動平均線の上に位置する=強い上昇トレンド、という判断ができるわけです。
パラメーターの選び方にもコツがあります。基本は「移動平均期間の半分の期間で乖離を集計」する設定がスタンダード。たとえば、SMA60ならTIIの算出には30期間の乖離を使います。ただし、相場のボラティリティに応じて微調整も可能で、短期トレードならSMA30×乖離15期間の組み合わせも有効です。
TIIを使った売買シグナルの活用法
最も基本的な使い方は、「TIIが80を上抜けたときに買い」「20を下抜けたときに売り」というパターンです。この手法は、強いトレンドが発生した初動をキャッチし、その勢いに乗るというもの。トレンドが加速する局面では、TIIが鋭く閾値を突き抜けるため、タイミングよく乗れば大きな値幅を取れる可能性があります。
一方、「50ライン」を使った判断も人気があります。TIIが50を上回っている間は“買い継続”、下回れば“売り継続”とするシンプルなルールです。特にスイングトレードや中長期のトレンド判断において有効で、無駄な売買を減らすことができます。
さらに洗練された使い方として、「TIIとそのシグナルライン(移動平均)とのクロス」に注目する戦略もあります。たとえば、TIIがその9期間EMA(指数平滑移動平均)を上抜けたときは「買いシグナル」、下抜けたときは「売りシグナル」とすることで、より早いエントリー/エグジット判断が可能になります。
「お、TIIがEMAをクロスしたぞ。これは仕掛け時かも?」といった具合に、他のテクニカル指標(MACD、RSI、ボリンジャーバンドなど)と組み合わせることで、TIIの有効性はさらに広がります。
実際、TIIとMACDを併用することで、トレンドの“強さ”と“加速度”を同時に分析する手法が広まっており、エントリーポイントの精度が格段に向上したという報告もあります。
TIIのメリット
TIIを使いこなせば、トレンドの発生から終焉までを“視覚的に追える”ようになります。これは、取引判断に迷いがちな投資家にとって、大きなアドバンテージです。「今がエントリーの好機なのか、それとも一度様子を見るべきか…」そんな迷いをTIIが数字ではっきり示してくれます。
たとえば、TIIが50を超えて安定して推移している局面では、相場が明らかに上昇基調にあると判断できるため、「安心してトレンドに乗る」という選択が可能になります。特に、TIIが80を上回っているような強いトレンドでは、「短期の押し目」で買いを狙うチャンスが見えてくるのです。
このように、TIIを使うことで、相場に対する「根拠のある自信」を得ることができます。単なる“感覚”に頼らず、数値に基づいた判断ができるようになると、ポジションの保有時間も長くなり、結果的に利益を最大化しやすくなります。
また、TIIはトレンドの「持続性」を測る指標としても役立ちます。値動きが激しい場面でも、TIIが50以上を維持しているかどうかを確認することで、「これはまだトレンド中だ」と冷静に判断できる。結果として、ストップロスの誤発動や“チキン利食い”を減らすことにつながるのです。
TIIのリスク
どんなに優れたテクニカル指標でも「万能」ではありません。TIIも例外ではなく、特に「レンジ相場(横ばいの相場)」ではシグナルがブレやすくなるというリスクを抱えています。
たとえば、価格が一定の範囲内で上下するレンジ相場では、TIIが50前後で上下を繰り返す場面が多くなります。このとき、TIIが一瞬だけ80を超えたり、急に20を割り込んだりしてしまうことで、「トレンド発生だ!」と早合点してしまうケースが増えるのです。その結果、「ダマシのエントリー」に引っかかってしまい、損失を抱えることにも…。
「TIIが80を超えたから買ったのに、すぐに下がってしまった…」という経験をした方も少なくありません。これは、TIIが“価格の偏り”に反応しているからこそ起こる現象。つまり、短期的な急騰・急落に過敏に反応してしまうリスクがあるということです。
このリスクを軽減するために重要なのが、「他の指標との併用」と「相場環境の見極め」です。たとえば、移動平均線の傾きやMACDのクロス状況と合わせてTIIを確認すれば、シグナルの信頼性は格段に高まります。また、事前にチャート全体を見て、「いまはレンジ相場か、トレンド相場か?」を判断することも欠かせません。
さらに、TIIを使う前には必ず「過去チャートでのバックテスト」を行い、自分が使う時間軸や銘柄に合ったパラメーターを見つけることも重要です。これにより、“過去においてどのように反応したか”を把握でき、ダマシを避ける精度が高まります。
つまり、TIIはとても有用な指標ですが、使い方を間違えると「連敗続き」「資金が削られる」といった未来も十分に起こり得ます。正しい知識と補助ツールの活用が、“負ける未来”を避けるための必須条件と言えるでしょう。