基礎知識
ヘッジとは、保有している売買ポジションに対する損失リスクを回避・軽減するための取引手法のことを指します。具体的に言うと買いポジションを持っている状態で、売りポジションを同時に持つことで、相場の価格変動リスクを一部相殺させる手法です。
- ヘッジ手法の仕組みについて
- ヘッジ手法のメリット
- ヘッジ手法の扱い方
ヘッジとは
上記で述べた通り、FXにおけるヘッジ戦略とは、簡単に言うと通貨ペアで買い注文と売り注文の両方を同時に出す手法のことを指します。一見すると矛盾しているように見えますが、これには理由があります。
ヘッジ戦略の主な目的は以下の2点です。
- レンジ相場でのリスクヘッジ
- スワップポイントの収受
レンジ相場でのリスクヘッジ
まず1つ目のリスクヘッジですが、これはレンジ相場の中で有効的な戦略です。例えば、ある水準(エントリーレベル)で買い注文を出し、別の水準で売り注文を同時に出します。すると価格が上がれば買いポジションで利益が出る一方、下がれば売りポジションで利益が出ます。
つまり、値動きの方向に関わらず、どちらかでは必ず利益を得られるようになります。価格がレンジから一方に大きく割れでもリスクヘッジになりますし、そのまま反転してレンジ内に戻れば両建てした分の利益が残ります。
すでにポジションを持っているが、相場がどう動くかわからなくなってしまった時にこのような戦略を利用したりします。
スワップポイントの収受
2つ目のスワップポイントの収受ですが、これは金利の高い通貨を買い注文、金利の低い通貨を売り注文することで、その金利差からスワップポイントを得る戦略です。例えばドル円での買い注文とユーロ円での売り注文を行えば、スワップポイントを毎日収受できます。
ただしレンジ相場を大きく外れた場合、大きく損失が出る可能性があるので、相場全体の流れを読み取れる程の経験値が必要になります。
ヘッジで使われるトレード戦略
- オプションを活用したヘッジ手法
- 部分決済によるヘッジ手法
- 金利差からのヘッジ
- 短期変動に対するダイナミックヘッジ
オプションを活用したヘッジ手法
外国為替取引においてリスクヘッジを行う方法の1つに、オプション取引を利用する手法があります。これは、ある特定のレートで将来の一定期日までに通貨を買う権利または売る権利を持つ取引です。プレミアム(オプション料)を支払えば、損失リスクを一定の水準に抑えることができます。例えば、AUDNZDの売り手は、想定レート1.04でプットオプションを購入することで、それ以上の損失が発生するリスクをヘッジできます。
部分決済によるヘッジ手法
ポジションの一部を決済し、残りを利益確保のために維持するという手法もあります。これにより新たなポジションを取らずにリスクヘッジできます。例えば買いポジションの半分を利確し、残りは利益追求のために維持する、といった具合です。利益の一部は確保しつつ、より大きな値動きを狙えるメリットがあります。
金利差からのヘッジ
「キャリートレード」と呼ばれる手法では、低金利通貨を借りて高金利通貨に投資します。しかしこの戦略には為替レートが変動したリスクがあり、ヘッジが必要となります。高金利通貨での運用自体が一種のヘッジとなる場合もあれば、別の通貨でヘッジするケースもあります。経験が必要な高リスク戦略ですが、熟練者なら様々な通貨を使いこなせます。
短期変動に対するダイナミックヘッジ
保有ポジションを維持しつつ、短期的な逆行を小さなポジションでヘッジする手法もあります。主要なポジションは維持しつつ、一時的な値動きをサブポジションでカバーできます。反転の兆しを見つけ次第、この手法を使えば、大きな値動きを逃さずにリスクへッジができます。
戦略まとめ
最適なヘッジ手法はトレーダーによって異なりますが、ヘッジ自体は初心者には複雑すぎるかもしれません。ヘッジはあくまで保険と考えるべきで、コストがかかります。状況に合わせて、自分に最適な手法を選ぶ必要があります。
ヘッジEA解説
ここからは、実際にヘッジEAの運用方法を解説していきます。
EAの選び方
ヘッジEAを選ぶ際は、まずそのEAがどのようなヘッジ手法を使うかが重要です。取引したい通貨ペアによっては、向いてない可能性があるので注意しましょう。
さらに、使用する通貨ペア、タイムフレームの範囲、ヘッジの自動度合いなど、自分のニーズに合ったEAかどうかもチェックする必要があります。
EAの使い方
ヘッジEAを使う際は、まずリスク許容度に合わせてヘッジ比率を適切に設定する必要があります。運用中も定期的に状況を確認し、必要に応じて設定の変更を行う必要があります。
売買履歴もチェックし、ロジックが適切に機能しているかを監視することが重要です。
注意点
ヘッジEAを利用する際の主な注意点は、トレンドによって倍近くの損失が出る可能性があります。
また、スワップポイントを得るメリットはありますが、常にスプレッドコストがかさみ、レンジ脱却時のリスクを抑えきれなくなる可能性があります。資金管理は常に意識しましょう。
ヘッジでの取引で重要な経済指標
ヘッジでの取引は重要な経済指標の影響で、大きな損失になる可能性があります。
ここで、重要な影響をもたらす指標をいくつかご紹介します。
- 消費者物価指数(CPI)
- GDP速報値
- 小売売上高
- 戦争や内戦
消費者物価指数(CPI)
CPIは物価の上昇率を示す指標で、インフレ率を測る上で重要視されています。長期的にCPIが上昇基調にあれば、その国の通貨高が進む可能性があります。なぜなら中央銀行がインフレ抑制のために金利引き上げに動くと予想されるためです。逆にCPIが低迷すれば、通貨安・金利引き下げ観測が高まります。長期投資家はCPIの傾向を注視し、各国通貨の長期的な方向性を探ります。
GDP速報値
GDPは国内総生産を示す指標で、経済の足取りを表します。GDP速報値が市場予想を上回れば、その国の経済が力強いと受け止められ、通貨高/金利引き上げ観測につながります。逆に速報値が予想を下回れば、景気減速の危惧から通貨安/金利引き下げ観測が高まります。長期投資家はGDP速報値を重視し、各国経済の成長力と通貨の行方を判断する材料にします。
小売売上高
小売売上高は個人消費の動向を示す指標です。個人消費は経済の牽引役なので、この指標の伸び悩みは景気減速のシグナルになります。逆に小売売上高が伸びれば、個人消費の拡大から景気回復が期待でき、通貨高/金利引き上げ期待が高まります。長期投資家はこの指標を分析し、各国内需の力強さと経済の行方、ひいては通貨価値について手掛かりを得ようとします。
戦争や内戦
戦争や内戦、クーデターなどの地政学的なリスクが高まれば、当該国や地域の通貨は売られ安くなる傾向にあります。逆に平和な状況が続けば通貨は買われ高くなります。地政学リスクは短期的に為替相場に大きな変動をもたらします。
経済指標まとめ
これらの経済指標は長期的な経済の動向を示唆するものです。長期投資家はこれらの指標の傾向を注視し、各国の経済力と通貨価値の長期的な方向性を探ります。指標がよければ通貨高/金利上昇観測が、悪ければ通貨安/金利低下観測が高まるため、それに合わせた長期投資判断ができるのです。