「トレンドの転換点を的確に捉えたい!」——そう思っているトレーダーの皆さん、多いのではないでしょうか?特に、急激な価格変動やだましの多い相場では、「今がエントリーのタイミングなのか?」「このままポジションを持ち続けても大丈夫なのか?」と悩むことが多いですよね。
そんなときに役立つのが「パラボリックSAR」です。J.W.ワイルダー氏が開発したこのテクニカル指標は、チャート上に放物線状の点を描きながら、価格の動きに追随してトレンドの転換を示唆します。シンプルなルールで視覚的にも分かりやすく、多くのトレーダーに愛用されている指標の一つです。
しかし、パラボリックSARは万能ではありません。トレンド相場では強力な武器になりますが、レンジ相場ではダマシのシグナルが頻発することも…。適切な設定や他の指標との組み合わせを知らなければ、逆に損失を増やす原因にもなりかねません。
そこで本記事では、パラボリックSARの基本から具体的な使い方、設定のポイント、さらには他のテクニカル指標との組み合わせ方まで詳しく解説します。
パラボリックSARとは?

パラボリックSARは、相場のトレンド転換を視覚的に把握するためのテクニカル指標です。「SAR」とは「Stop And Reverse(ストップ・アンド・リバース)」の略で、価格がSARに触れるとトレンドが転換する仕組みになっています。
この指標の最大の特徴は、価格の動きに応じて放物線状のドット(点)がチャート上に表示される点です。上昇トレンドでは価格の下に、下降トレンドでは価格の上に点がプロットされ、トレンドの流れを一目で確認できます。
例えば、上昇トレンド中に価格がSARのドットに触れると、それまでの買い目線が売り目線に変わります。逆に下降トレンド中に価格がSARに触れた場合は、売り目線から買い目線へと変化するサインです。このシンプルなルールが、初心者にも扱いやすい理由の一つです。
ただし、パラボリックSARはトレンド相場には強いものの、レンジ相場ではダマシが多発するというデメリットもあります。そのため、単体で使用するのではなく、他のテクニカル指標と組み合わせることでより高精度なトレードが可能になります。
パラボリックSARの基本概念
パラボリックSARは、トレンドの方向を示すとともに、トレンドが反転する可能性のあるポイントを予測します。
このインジケーターの最大の特徴は、サインが反転することでポジションの変更を促すことです。価格が上昇トレンドにあるときは、SARの点は価格の下に表示され、下降トレンドでは点は価格の上に表示されます。
パラボリックSARの特徴
- トレンド追随型のインジケーターであり、レンジ相場には適さない。
- トレンドの終了を示す転換点を特定する。
- トレンドの強さを視覚的に捉えられる。
パラボリックSARの計算方法
パラボリックSARは、単なる視覚的なツールではなく、明確な計算式に基づいて算出されています。その計算には、「加速因数(AF)」と「極大値(EP)」という2つの要素が重要な役割を果たします。
パラボリックSARの基本計算式

- SARₙ:現在のSAR値
- SARₙ₊₁:次のSAR値
- AF(加速因数):0.02から始まり、新しい極大値が更新されるたびに0.02ずつ増加(最大0.2)
- EP(極大値):現在のトレンドにおける最高値(上昇トレンド)または最安値(下降トレンド)
SAR値の更新ルール
- 上昇トレンドの場合 → 最高値(EP)が更新されるたびに加速因数(AF)が増加
- 下降トレンドの場合 → 最安値(EP)が更新されるたびに加速因数(AF)が増加
- 価格がSARと交差するとトレンド転換が発生し、SARの位置が反対側に切り替わる
加速因数(AF)の役割と影響
加速因数(AF)は、パラボリックSARの感度を調整するパラメータです。
- AFが小さい(例: 0.02) → SARの変化が緩やかになり、だましを減らせるが、トレンド転換のシグナルが遅れる
- AFが大きい(例: 0.2) → SARが価格に素早く追随するが、レンジ相場ではダマシが発生しやすい
計算手順
SARの初期値として、最初のSARを設定します(通常、最初の価格の値や前回のSARの値)。
次に、トレンド方向に基づいてEP(極値)を設定します。上昇トレンドでは最高値、下降トレンドでは最安値です。
上記の式を使って次のSAR値を計算します。
SAR値が価格と交差したときに、トレンドが反転したと判断され、トレンドの方向が変わります。

この計算を繰り返すことで、チャート上にSARの点が描画され、トレンドの変化を示します。
パラボリックSARと他のトレンド指標との違い
パラボリックSARはトレンドフォロー型の指標ですが、他のトレンド系指標と比べてどのような特徴があるのでしょうか?ここでは、代表的なテクニカル指標である「移動平均線」と「MACD」と比較しながら、その違いを見ていきます。
移動平均線との違い
項目 | パラボリックSAR | 移動平均線 |
---|---|---|
表示形式 | ドット(点) | 線(ライン) |
シグナル発生 | SARと価格の交差 | 短期線と長期線の交差 |
反応速度 | 価格に早く追随 | 設定期間により遅れることも |
レンジ相場での信頼性 | 低い(ダマシが多い) | 一定の信頼性あり |
トレンドの強さ判断 | △(単体では弱い) | 〇(角度や乖離率で判断可能) |
→移動平均線はトレンドの強さや方向を把握しやすいですが、パラボリックSARは明確なエントリー・エグジットのタイミングを示すのが特徴です。

- 移動平均線の特徴
- 相場の方向性を滑らかに把握できる
- 短期・中期・長期の移動平均線を組み合わせて分析可能
- クロス(ゴールデンクロスやデッドクロス)で売買シグナルを判断
一方、パラボリックSARは価格の動きに対して点で表示され、トレンド転換のタイミングがより明確に分かるのが特徴です。ただし、移動平均線は長期トレンドの把握に優れており、SARと組み合わせることでより精度の高い分析が可能になります。
2. MACDとの違い
項目 | パラボリックSAR | MACD |
---|---|---|
主な用途 | トレンドの転換点を示唆 | トレンドの強さや勢いを測定 |
シグナルの発生方法 | SARと価格の交差 | MACDラインとシグナルラインの交差 |
反応速度 | 価格に即座に反応 | 遅行性がある |
ダマシ回避のしやすさ | レンジ相場ではダマシが多い | ヒストグラムを活用すれば回避可能 |
→MACDはトレンドの強さや勢いを分析するのに適しており、パラボリックSARはエントリー・エグジットの判断に役立ちます。そのため、両者を組み合わせることでより高精度なトレードが可能になります。

MACD(移動平均収束発散法)は、短期と長期の指数平滑移動平均(EMA)の差を利用し、トレンドの勢いや転換を測る指標です。
- MACDの特徴
- トレンドの強さを数値化できる
- MACDラインとシグナルラインのクロスが売買サイン
- ヒストグラムでトレンドの勢いを確認できる
パラボリックSARはシンプルにトレンド転換点を示すのに対し、MACDはトレンドの強さやダイナミクスを測るのに適しています。両者を組み合わせることで、「SARで転換点を捉えつつ、MACDでトレンドの勢いを確認する」といった分析が可能です。
ボリンジャーバンドとの違い
ボリンジャーバンドは、価格の標準偏差を基にした帯(バンド)を表示し、価格がバンドの上下どちらに位置しているかでトレンドの状態を判断します。
- ボリンジャーバンドの特徴
- 価格がバンドの上限に達すると買われすぎ、下限に達すると売られすぎの目安
- バンドの幅が広がるとボラティリティが高まり、狭まると低下する(スクイーズ現象)
パラボリックSARはトレンドの方向性にフォーカスしているのに対し、ボリンジャーバンドは価格の変動範囲(ボラティリティ)を測定する指標であるため、異なる用途で使われます。
パラボリックSARと他の指標を組み合わせるメリット
各指標の違いを理解すると、それぞれの弱点を補いながら使うことができます。例えば、
- SAR × 移動平均線 → トレンドの方向性を確認しつつ、トレンドの持続性を判断
- SAR × MACD → 転換点をSARで捉え、MACDでトレンドの勢いを測る
- SAR × ボリンジャーバンド → SARのシグナルがボリンジャーバンドのブレイクと重なるかを確認
このように、パラボリックSAR単体ではなく、他の指標と組み合わせることで、より精度の高いトレード判断が可能になります。
【パラボリックSARの使い方と設定方法】
パラボリックSARを効果的に活用するには、正しい使い方と適切な設定を理解することが重要です。ここでは、具体的なチャートへの表示方法や設定のコツについて解説します。
1. パラボリックSARをチャートに表示する方法
① MT4/MT5での設定手順
MetaTrader(MT4/MT5)では、パラボリックSARを簡単に設定できます。
- チャートを開き、ナビゲーターウィンドウの「インディケータ」から「トレンド」を選択
- 「Parabolic SAR」をクリック
- パラメーター設定(加速因数と最大値)を入力
- 「OK」を押すと、チャート上にSARのドットが表示される
② TradingViewでの活用方法
TradingViewでは、以下の手順で設定できます。
- 「インジケーター」メニューを開く
- 検索窓で「Parabolic SAR」と入力し選択
- 設定画面で加速因数や最大値を調整し、適用
2. トレンド転換の判断基準
パラボリックSARの基本的な売買シグナルは、価格とSARのドットの位置関係で判断します。
- 買いシグナル → SARのドットが価格の下に移動したとき
- 売りシグナル → SARのドットが価格の上に移動したとき
上昇トレンド中に価格がSARのドットを下回ると、トレンド転換のサインとなります。逆に、下降トレンド中に価格がSARのドットを上抜けると、買いのチャンスが到来します。
3. 加速因数(AF)の適切な設定方法
パラボリックSARには「加速因数(AF)」と「最大値」の2つのパラメーターがあり、トレードスタイルに応じて調整できます。
- デフォルト設定(AF=0.02、最大値=0.2)
→ 初心者向け。トレンドの転換を適度に捉えられる標準的な設定 - AFを小さく(例: 0.01)
→ 反応が遅くなり、ダマシを減らせるが、転換のシグナルが遅れる - AFを大きく(例: 0.05)
→ 価格に敏感に反応し、早めに転換シグナルを出すが、レンジ相場ではダマシが増える
おすすめの設定調整方法
- トレンドが強いとき → AFを大きく(例: 0.03~0.05)
- レンジ相場や荒れた相場 → AFを小さく(例: 0.01~0.02)
このように、相場環境に応じてAFを調整することで、より精度の高いトレードが可能になります。
パラボリックSARを活用したトレード手法
パラボリックSARは、単体で使うだけでなく、他のテクニカル指標と組み合わせることで、より精度の高いトレード判断が可能になります。ここでは、実際のトレードでの活用方法を解説します。
パラボリックSAR単体での売買シグナルの見方
パラボリックSARは、価格の上下でトレンド転換を示すシンプルな指標です。
基本的な売買ルール
- 買いエントリー(ロング) → SARのドットが価格の下に移動したとき
- 売りエントリー(ショート) → SARのドットが価格の上に移動したとき
- 決済タイミング → 価格がSARと交差したら利確や損切りを検討
ダマシを回避するポイント
- レンジ相場ではSARのシグナルを鵜呑みにしない(だましが多発する)
- 高値・安値の更新を確認しながらトレードする
- 短期・長期の時間軸を組み合わせる(長期トレンドの方向とSARを合わせると精度向上)
他のテクニカル指標と組み合わせる方法
パラボリックSAR単体ではレンジ相場でのダマシが発生しやすいため、他の指標と組み合わせることで、より正確なトレード判断ができます。

パラボリックSARだけでは、すべての市場環境に対応することは難しいため、他のインジケーターとの併用が推奨されます。以下のインジケーターとの組み合わせが有効です。
移動平均(MA)
移動平均線(特に短期と長期のクロスオーバー)と組み合わせることで、トレンドの方向を確認し、SARの反転サインを補完できます。
例えば、短期移動平均線が長期移動平均線を上抜けたときに買いシグナルを、下抜けたときに売りシグナルを出すといった方法です。
RSI(相対力指数)
RSIを併用することで、過買い・過売り状態を確認でき、SARの反転サインの信頼性を高めることができます。
例えば、RSIが70以上であれば売り、30以下であれば買いといった判断ができます。
MACD(移動平均収束拡散法)
MACDとパラボリックSARを組み合わせることで、トレンドの強さと方向を確認し、売買シグナルの精度を向上させます。MACDのヒストグラムやシグナルラインを活用して、SARの反転時に強いトレンドを捉えることが可能です。
ADX(平均方向性指数)
ADXを使って、トレンドの強さを測定します。ADXが20未満であればレンジ相場、20以上であればトレンド市場と判断し、パラボリックSARのシグナルを有効にするための基準として活用できます。
パラボリックSARのメリットとデメリット
パラボリックSARのメリット
① 視覚的にわかりやすい
パラボリックSARは、チャート上に点(ドット)で表示されるため、トレンドの方向を直感的に判断できます。特に初心者にとって、シグナルが明確で理解しやすいのが魅力です。
② トレンド転換のシグナルが明確
SARのドットが価格の上下で切り替わるため、エントリーとエグジットのタイミングが分かりやすいのが特徴です。特にトレンドが明確な相場では、SARのシグナルに従うことで効率的にトレードできます。
③ 自動売買(EA)にも組み込みやすい
SARの計算式はシンプルなため、**MT4/MT5のエキスパートアドバイザー(EA)**などの自動売買システムに組み込みやすく、機械的なトレード戦略を構築しやすいのもメリットの一つです。
④ トレーリングストップとしても活用可能
SARのドットを損切りラインとして設定することで、トレンドに追随するトレーリングストップとしても機能します。特に長く続くトレンドでは、利益を伸ばしつつ、適切なタイミングで手仕舞いするのに役立ちます。
パラボリックSARのデメリット
① レンジ相場ではダマシが多い
SARはトレンド相場に強い反面、レンジ相場では頻繁に売買シグナルが発生し、ダマシが多発します。そのため、SAR単体ではなく、移動平均線やMACDと組み合わせて使用するのが望ましいです。
② パラメータ設定によってシグナルの精度が変わる
加速因数(AF)と最大値の設定によって、シグナルの感度が大きく変わります。AFを大きくすると転換シグナルが早まりますが、ダマシも増加します。逆にAFを小さくすると精度は上がるものの、シグナルが遅れる可能性があります。相場状況に応じて適切な設定を行うことが重要です。
③ 短期トレードには向かない場合がある
SARは比較的長いトレンドを捉えるのに適しているため、スキャルピングなどの超短期トレードには向かないことがあります。特に1分足や5分足などの短い時間軸では、ノイズが多くなり、ダマシが頻発する可能性が高くなります。
まとめ
パラボリックSARは、トレンドの方向性や転換点を直感的に把握できる便利な指標ですが、レンジ相場でのダマシが多いという欠点もあります。単体で使用するのではなく、移動平均線・MACD・RSIなどの他のテクニカル指標と組み合わせることで、より精度の高いトレードが可能になります。