
Instantaneous Trendlineとは?同じ名前で2つの作りがある線

名前と出どころ
Instantaneous Trendlineは、相場の細かい上下をならして、トレンドの向きを見やすくする線です。作ったのはJohn Ehlersです。インジケーターとして広まった形は、確認できた範囲で2つあります。上の表の「2002年版」と「α版」です。同じ名前なので、ネットで探した式やパラメーターが、どちらの話なのかを分けて読む必要があります。
2002年の記事にある作り
Ehlers本人の記事「The Instantaneous Trendline」は、雑誌『Technical Analysis of Stocks & Commodities』の第20巻2号(2002年)に載りました。この記事では、相場の主な周期の長さを測り、その長さの単純移動平均(SMA)で、周期の成分を消します。ただしSMAには、期間の半分ほどの遅れ(周期が21本なら約10本)が出ます。記事はこの遅れを問題として挙げ、3極の楕円型のローパスフィルタとノッチフィルタを組み合わせて小さくする方法を説明しています。先の値動きを当てる線だとは書かれていません。
MQL5やEasyLanguageにあるα版
MetaTraderの掲示板や配布サイトで多いのは、αという1つの数字だけで決まる再帰式です。確認できたのは、NewbergのEasyLanguage(αは0.07、価格は高値と安値の平均)、MQL5コードベースのITrendMA(MQL5 ITrendMA。Periodの初期値20、終値)、Rのパッケージ DSTrading の iTrend です。3つは同じ式で動きます。この記事の実測は、このα版を使っています。Ehlers本人が、α版を書いた一次資料は、この記事を書いた時点で取得できなかったので、式は上の3つのソースで確かめたものです。
アドバイス同じ名前でも作りが2つあるんだ。この記事の数字は、αで決まる再帰式のほうだよ。
Instantaneous Trendlineの計算式|5つの係数で決まる再帰式

式の全体
α版の線は、次の式で1本ずつ決まります。Pは価格、線は求める値です。
- 線 = (α − α²÷4) × P + (α²÷2) × 1本前のP − (α − 0.75 × α²) × 2本前のP + 2 × (1 − α) × 1本前の線 − (1 − α)² × 2本前の線
- 最初の数本は、(P + 2 × 1本前のP + 2本前のP) ÷ 4 を線の代わりに使います
αが0.07のときの係数
αが0.07のとき、5つの係数は、今の価格が0.068775、1本前の価格が0.00245、2本前の価格が−0.066325、1本前の線が1.86、2本前の線が−0.8649です。価格にかける3つの係数を足すと0.0049(=α²)、線にかける2つを足すと0.9951で、合計は1になります。価格がずっと同じなら、線もその価格に落ち着きます。
トリガー線
多くのソースは、線と一緒にトリガー線も描きます。トリガー線は、2 × 線 − 2本前の線 です。引き算を整理すると、トリガー線 − 線 = 線 − 2本前の線 になります。つまり、トリガー線と線が交差するのは、線の2本分の傾きの符号が変わった足です。この記事では、その足を「反転」と呼びます。
入力する価格
入力する価格は、ソースによって違います。EasyLanguageとLuxAlgoの初期値は高値と安値の平均(hl2)、MQL5のITrendMAは終値です。この記事の実測は終値を使いました。
アドバイス式は5つの係数だけだよ。トリガー線との交差は、線の傾きの符号が変わった足のことなんだ。
Instantaneous Trendlineの設定|αとPeriodの読み替え

αの意味とPeriodへの換算
αが小さいほど、線はなめらかで、ゆっくり動きます。LuxAlgoの説明も、αの初期値は0.07で、小さいほどなめらかで遅いと書いています。MQL5のITrendMAは、αの代わりにPeriodを入力させ、α = 2 ÷ (Period + 1) で換算します。逆に、Period = 2 ÷ α − 1 です。αが0.07ならPeriodは27.6、MQL5の初期値のPeriod 20はαが約0.095にあたります。
αを変えた結果
αを0.04から0.20まで変えて、線の反転を数えました。比べる相手は、線と同じ滑らかさのEMAです。「同じ滑らかさ」とは、ノイズをどれだけ通すか(インパルス応答の2乗和)が等しいことです。αが0.07の線は、期間11.7のEMAと同じ滑らかさでした。
αが大きいほど、反転は増えます。足1,000本あたりの反転は、αが0.04で63回、0.07で85回、0.10で105回、0.15で131回、0.20で153回です。どのαでも、同じ滑らかさのEMA(90回、121回、144回、176回、199回)より少なくなりました。反転の次の3本以内に、また反転した割合も、線のほうが低くなっています(αが0.07で30%と40%)。
時間足について
この記事で測ったのは1時間足と4時間足だけです。αは本数に対する係数なので、時間足を変えても、式は同じです。ただし、同じ本数でも、足が長いほど実際の時間は長くなります。時間足ごとの最適なαは測っていないので、示せません。
アドバイスαを大きくすると線は速く動いて、反転も増えるよ。どのαでもEMAよりは反転が少なかったんだ。
Instantaneous Trendlineの使い方|トリガー線との交差で向きの反転を見る

トリガー線との交差が反転
基本の見方は、線とトリガー線の交差です。トリガー線が線を上へ抜ければ、線が上向きへ変わった足、下へ抜ければ下向きへ変わった足です。上の図は、60本の間に、上向きへの反転が2回、下向きへの反転が2回ありました。この見方は、式から出た定義で、売買のルールとして勝ちやすいかどうかは別の話です。
同じ滑らかさのEMAとの違い

上の図は、線(青)と、同じ滑らかさのEMA(橙)を重ねています。2本はよく似た形ですが、この96本の間に、向きが変わった回数は、線が5回、EMAが7回でした。これが、次の実測で全体を数える「反転の回数」の1例です。
ATRは大きさの物差しに使う
ATR(14本)は、値動きの大きさを測る物差しです。この記事の実測では、反転の足のATRを、その後の動きの大きさの単位に使いました。ATRそのものを、売買の合図に使ったわけではありません。
ほかの見方と組み合わせる
線を1本だけで使うと、次の節で見るように、反転のあとの動きはほぼ半々です。上位の時間足の向きを確認する、値動きの幅の変化をBollinger BandWidthの使い方と見方で見る、といった見方を足して、目安として使うのが現実的です。
アドバイストリガー線との交差が、線の向きの反転だよ。同じ滑らかさのEMAより、数は少なめなんだ。
Instantaneous Trendlineの実測|同じ滑らかさのEMAと反転を3通貨ペア10年で比べた

測り方と定義
- データ:Dukascopy のティックから作った足(bid・UTC)です。期間は2016年1月〜2025年12月、通貨ペアはUSDJPY・EURUSD・GBPUSDです。足の数は、1時間足が61,981本・62,346本・62,341本、4時間足が16,022本・16,115本・16,113本です。会社の実際の取引ではありません。
- 線:終値から、αが0.07の線を計算しました。比べるEMAは、線と同じ滑らかさ(期間11.7)です。最初の300本は集計から外しています。
- 反転:線 − 2本前の線 の符号が変わった足です。上向きへの反転と、下向きへの反転の両方を数えます。値が同じ(符号がゼロ)の足は、反転の判定に入れていません。
- 反転後の動き:反転した足の終値から、N本後の終値までの変化を、反転の向きにそろえ、反転した足のATR(14本)で割った値です。反転と逆に動いたものを「逆行」、同じ向きに動いたものを「順行」とし、値が変わらなかった足は、どちらにも数えていません。
- 再反転:反転の次の反転が、3本以内に起きたものです。
反転の回数|線はEMAより約3割少ない
足1,000本あたりの反転は、1時間足で線が85回、EMAが121回でした。4時間足では、線が83回、EMAが116回です。線の反転は、同じ滑らかさのEMAより、10回のうち約3回少なくなりました。
次の反転までの長さ

反転から次の反転までの本数は、平均が線で11.7本、EMAで8.3本でした。3本以内に次の反転が来た割合は、線が30%、EMAが40%です。一方、11本以上あいた割合は、線が39%、EMAが27%でした。線のほうが、反転が少なく、反転と反転の間が長くなっています。
反転のあとの動き|ほぼ半々

反転した足のあとに、反転と逆へ動いた割合は、1時間足の線で、1本後が51.3%、3本後が51.1%、5本後が50.6%、10本後が50.2%でした。順行は、48.1%、48.6%、49.3%、49.7%です。同じ滑らかさのEMAも、51.4%、51.0%、50.6%、50.1%で、ほぼ変わりません。反転の向きに動き続けるとも、すぐ戻るとも言えず、ほぼ半々でした。
4時間足の線では、10本後の逆行が48.0%(順行51.9%)で、半々から少し外れました。ただし、この件数は3,930件と少なく、表の16マスのうち1マスです。16マスを見れば、偶然で外れるマスが1つ出ても不思議ではありません。1時間足の線で、5本後の動きの中央値は、反転の向きで−0.019ATRでした。何もない足の5本後の値動きの大きさ(中央値0.82ATR)に比べて、ほぼ0です。
年ごとの違い

1時間足の線で、反転の5本後に逆行した割合を年ごとに出すと、2016年が51.4%、2017年が49.7%、2018年が49.5%、2019年が51.5%、2020年が49.6%、2021年が50.1%、2022年が52.1%、2023年が50.2%、2024年が50.0%、2025年が51.4%でした。1年あたり約1,600件なので、偶然のぶれの目安は±2.45ポイントで、10年とも帯の中に収まります。EMAは件数が多く(年約2,200件)、帯が±2.1ポイントと狭いため、2022年の52.1%が帯の端に当たりました。
通貨ごとの違い

通貨ペア別では、1時間足の反転が1,000本あたり、USDJPYが84回と120回、EURUSDが86回と123回、GBPUSDが86回と120回でした(線とEMAの順)。3本以内の再反転は、線が29〜30%、EMAが40%、5本後の逆行は、線が50.0〜50.9%、EMAが50.4〜50.9%です。3通貨ペアとも、同じ向きの結果でした。
動きによる違い

同じ線でも、相場の動き方で反転の数は変わります。上の図は、GBPUSDの72本のうち、一方向に動いた区間(2024年7月9日21時から)と、上下に揺れた区間(2025年4月28日11時から)です。反転は、一方向の区間で3回、揺れた区間で6回でした。揺れる相場では、線の向きが何度も変わります。
この実測で言えること・言えないこと
- 言えること:αが0.07の線は、同じ滑らかさのEMAより、反転が約3割少なく、反転と反転の間が長くなります。この傾向は、1時間足でも4時間足でも、3通貨ペアでも、年ごとでも同じでした。
- 言えないこと:反転のあとの動きは、ほぼ半々で、反転から先の向きは分かりませんでした。売買の損益や、この線を使うと有利になるかは測っていません。
- 条件の限界:測ったのは、終値を入れたα版のα 0.07を中心にした、USDJPY・EURUSD・GBPUSDの1時間足と4時間足のbidです。askやスプレッドは入っていません。2002年版や、hl2を入れた場合は測っていません。
アドバイス反転はEMAより約3割少なかったけど、そのあとの動きはほぼ半々だったよ。年ごとにも通貨ごとにも偏りは見えなかったんだ。
Instantaneous Trendlineの誤解|遅れゼロでも先読みでもない

遅れがゼロの線ではない
「遅れがない」「未来を予測する」といった説明をよく見ますが、式からは言えません。上の計算例で、価格が0から1へ動いたとき、線が目標の50%に届くのは4本後、90%に届くのは11本後です。同じ滑らかさのEMA(期間11.7)は、50%が4本後、90%が13本後でした。差は2本ほどで、遅れをなくす線ではありません。
行き過ぎが出る
この線は、価格の1を一度越えます。14本後に初めて1に届き、27本後に最大の約1.14まで行き、その後ゆっくり戻ります。1.10を下回るのが40本後、1.05を下回るのが56本後、1.01を下回るのが85本後で、1に落ち着くまでには、かなりかかります。EMAには、この行き過ぎはありません。価格が急に止まると、線が価格の先へ行ってしまう点は、使う前に知っておきたい性質です。
ヒルベルト変換や周波数の分析ではない
α版の式は、5つの係数だけの、価格と過去の線から決まる計算です。周期を測るヒルベルト変換や、周波数の分析は、式の中に出てきません。
アドバイス遅れがない線でも、先を当てる線でもないよ。価格が止まると行き過ぎも出るから、気をつけてね。
Instantaneous Trendlineのダウンロード|シストレ.COM配布版

以下のボタンから、MT4用の「InstantaneousTrendline_systre.ex4」をダウンロードできます。
MT4への導入手順
- ダウンロードしたZIPを解凍し、
InstantaneousTrendline_systre.ex4を取り出す - MT4のメニュー「ファイル」→「データフォルダを開く」から、「MQL4」→「Indicators」フォルダにコピーする
- MT4を再起動する、またはナビゲーターで「更新」を選ぶ
- ナビゲーターから
InstantaneousTrendline_systreをチャートにドラッグ&ドロップして使用開始
注意事項
- InstantaneousTrendline_systreはシストレ.COMの登録口座でご利用いただけます。認証が行われていない口座ではご使用いただけません。
- 無料配布のサンプルです。商用利用・再配布は禁止とさせていただきます。
- この配布版が、2002年版とα版のどちらの作りか、設定の初期値がいくつかは、この記事では確かめていません。上の数字は、α版の式をこの記事で計算し直したものです。
移動平均との違いはFXのEMAとは?おすすめ設定と使い方で解説しています。
アドバイス入れ方は、ex4をIndicatorsフォルダに置いて、MT4を再起動するだけだよ。使える口座の条件も確かめてね。
要点
・Instantaneous TrendlineはJohn Ehlersの線で、2002年の記事にある作りと、αだけで決まるα版(MQL5・EasyLanguage・R)の2つがある
・α版の式は5つの係数だけで、トリガー線は2×線−2本前の線。トリガー線との交差が、線の向きの反転
・αは小さいほどなめらか。Period=2÷α−1で、αが0.07ならPeriod 27.6、MQL5の初期値20はαが約0.095
・実測(3通貨ペア・10年)では、αが0.07の線の反転は、同じ滑らかさのEMAより約3割少ない(1時間足で1,000本あたり85回と121回)
・反転のあとの動きはほぼ半々(1時間足の1本後に逆行51.3%、10本後50.2%)。年ごとにも通貨ごとにも偏りは見えなかった
・遅れがない線でも先読みの線でもなく、価格が止まると約14%の行き過ぎが出る
Instantaneous Trendlineのよくある質問
Instantaneous Trendlineとは何ですか?
John Ehlersが作った、遅れを小さくした滑らかな線です。2002年の記事にある作りと、αだけで決まる再帰式(α版)の2つがあり、MQL5などのインジケーターで多いのはα版です。
Instantaneous Trendlineの計算式は?
α版は、5つの係数で、価格と過去の線から決まります。線 = (α − α²÷4)×P + (α²÷2)×1本前のP − (α − 0.75×α²)×2本前のP + 2×(1 − α)×1本前の線 − (1 − α)²×2本前の線 です。αが0.07のときの係数は、0.068775、0.00245、−0.066325、1.86、−0.8649です。
αはいくつにしますか?
決まった値はなく、EasyLanguageとLuxAlgoの初期値は0.07です。αが小さいほど、線はなめらかで遅くなります。MQL5のITrendMAは、Period(初期値20)を入れる形で、α = 2÷(Period+1)で換算します。この記事の実測では、αを0.04〜0.20に変えると、反転は増えました。
トリガー線とは何ですか?
2×線 − 2本前の線 で作る、もう1本の線です。トリガー線と線の差は、線の2本分の傾きに等しいので、交差した足は、線の向きが変わった足になります。
EMAと何が違いますか?遅れはありませんか?
遅れはなくなりません。同じ滑らかさのEMAより、向きの反転が約3割少ない線です。1時間足の実測で、1,000本あたりの反転は、線が85回、EMAが121回でした。式で計算した階段では、目標の90%に届くまで線が11本、EMAが13本で、差は2本ほどです。
反転のあとは、反転の向きに動きますか?
この記事の実測では、ほぼ半々でした。1時間足の線で、反転の1本後に逆へ動いた割合は51.3%、10本後は50.2%で、年ごとにも通貨ごとにも偏りは見えませんでした。売買の損益は測っていません。
MT4に入れるにはどうしますか?
ex4ファイルを、データフォルダの「MQL4」→「Indicators」に置き、MT4を再起動します。そのあと、ナビゲーターからチャートへドラッグ&ドロップします。シストレ.COM配布版は、登録口座で使えます。
Instantaneous Trendlineのまとめ
Instantaneous Trendlineは、John Ehlersの滑らかな線で、2002年の記事の作りと、αだけで決まるα版があります。α版は5つの係数の再帰式で、トリガー線との交差が線の向きの反転です。3通貨ペア・10年の実測では、αが0.07の線の反転は、同じ滑らかさのEMAより約3割少なく、反転のあとの動きはほぼ半々でした。遅れがない線でも、先を当てる線でもありません。この記事は損益を測っておらず、ここに載せた数字は、過去のデータを集計した結果です。
⚠ リスクに関する注意事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。













