
ヘッジ手法とは|4つの手法と費用の出どころ

ヘッジの意味と両建て
FXのヘッジは、持っているポジションの損失の幅を、別の取引で抑えることを指します。損失を防ぐ方法ではなく、損益の動きを小さくする方法です。
両建ては、同じ通貨ペアで同じ量の買いと売りを同時に持つ方法です。持っている間は、買いと売りの為替差損益が打ち消し合い、値動きによる損益は動きにくくなります。一方で、反対の建玉を持つときと決済するときに、スプレッドの分の費用が出ます。スワップは買いと売りで別々に付くので、持つ期間が長いほど、その差が加わります。仕組みはスワップポイントの記事にまとめています。
相関ヘッジ・オプション・為替予約
相関ヘッジは、値動きが逆になりやすい別の通貨ペアを使う方法です。たとえば、USD/JPYの買いを持ちながらEUR/USDの買いを足します。ドルが上がるとUSD/JPYの買いは増え、EUR/USDの買いは減る関係を使います。組み合わせの相関は一定ではないので、測定は後の節で示します。
オプションは、決めた価格で売買する権利を買う方法です。権利の代金(プレミアム)が費用になります。為替予約は、将来の為替レートを今の時点で約束する方法で、輸出入をする企業が使います。どちらも、契約の条件は取引する会社ごとに決まっています。
外貨建て資産と企業の為替ヘッジ
外貨建ての資産にも、ヘッジの考え方は使われます。たとえば、ドル建ての米国株を持つと、円で見た評価額が為替で動きます。同じ額のUSD/JPYを売ると、円で見た評価額の為替による変動を抑えられます。その代わり、円安になったときの為替差益も受け取れません。
企業では、輸出企業がドルを売る為替予約、輸入企業がドルを買う為替予約を使い、将来の円での受取額や支払額を先に決めます。ヘッジにかかる費用と、為替が有利に動いたときの利益を手放すことが、引き換えです。
アドバイスヘッジは、損失の幅を別の取引で抑える方法だよ。手法ごとに、費用の出どころが違うね。
ヘッジ手法の両建てを測定|何もしない・損切りと比べた結果

図は、2024年2月6日にUSD/JPYを買った1件です。含み損は、基準に達した足で−53.1pipsでした。そのまま何もしなかった場合は、24時間後に−31.4pipsです。損切りは、基準に達した足で決済して−53.1pipsで終えます。両建ては、その足で反対の売りを同じ量だけ持ち、24時間後に両方を決済します。
測定の条件

通貨ペアは、USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD・EUR/JPY・AUD/JPYの5つです。Dukascopy のティックから作った1時間足(2016年1月〜2026年10月)を使い、平日の毎日、日本時間16時に買いと売りを1つずつ建てました。建てた日から続く72本の1時間足がそろう日だけを使い、週末をまたぐ日と足の欠けた日は除いています。建値は、買いが始値にスプレッドを足した価格、売りが始値のビッドです。
基準は、含み損が一定の幅に達したときです。幅は、建てる直前24本の足の(高値−安値)の平均の3倍で、平均は50.0pips(通貨ペアごとに38.4〜58.6pips)でした。建ててから24本以内に、足の終値で含み損がこの幅に達した最初の足を「基準に達した足」とし、基準に達した(通貨ペア・日・売買の向き)の組み合わせ1つを1件と数えます。建てた11,036のうち、3,235件(29.3%)が基準に達しました。基準に達した足は、建ててから平均9.5時間後でした。
そのあとの扱いを3通りで比べました。何もしない場合は、基準に達した足の24本後の損益です。損切りは、基準に達した足の損益です。両建ては、基準に達した足で反対の建玉を同じ量だけ持ち、24本後に両方を決済したときの損益です。スワップは含めていません。
平均とばらつき

3,235件の平均損益は、何もしないが−60.9pips、損切りが−60.4pips、両建てが−61.0pipsでした。平均はほぼ同じです。ばらつきの大きさを表す標準偏差は、何もしないが70.7pips、損切りが28.0pips、両建てが28.2pipsでした。損切りと両建ては、基準に達した足の損益で損失の幅が決まるので、ばらつきが小さくなります。

通貨ペア別では、EUR/JPYだけ、何もしないが損切りより4.0pips悪い結果でした(−74.2pipsと−70.1pips)。ほかの4通貨は、何もしないと損切りの差が3.0pips以内でした。件数は633〜663件で、通貨ペアごとの差には偶然のぶれも含まれます。
両建ての追加費用

両建ては、損切りより平均で0.6pips悪くなりました(−61.0pipsと−60.4pips)。通貨ペア別では、0.33〜0.86pipsの悪化です。差は、両建てを決済するときのスプレッド1回分で、決済時のスプレッドの平均は0.66pipsでした。同じ口座で買いと売りを持つと、決済でスプレッドを払う分だけ、損切りより不利になります。
スワップは測っていません。24時間より長く持つと、買いと売りのスワップの差も費用に加わります。両建てを認めるかどうかや、手数料・スワップの扱いは、会社の規約で決まっています。
24時間後の位置

何もしなかった場合に、基準に達した足の24時間後の位置を、3つに分けました。建値まで戻った(損益が0以上)のは14.6%、含み損が縮んだ(基準に達した足より良く、0未満)のは35.6%、含み損が広がった(基準に達した足より悪い)のは49.8%でした。範囲は、件数から正規近似で出した95%の範囲で、建値まで戻ったが13.4〜15.8%、広がったが48.1〜51.5%です。広がったの範囲は50%を含みます。
両建てを外した後

両建ては、いつか外す必要があります。24時間後に反対の建玉を決済して元の建玉だけを残し、そこから24時間の損益を見ると、元の建玉が増えた割合は51.2%でした。範囲は49.5〜52.9%で、50%を含みます。年ごとの点は、2019年の44.2%から2024年の54.8%までばらつきました。外したあとに元の向きへ進むかどうかは、この測定では半々に近く、向きは当たりも外れもしました。
年ごとの結果

年ごとの件数は230〜311件で、平均損益は−40.2〜−82.7pipsと、年によって大きく動きました。11年のうち、損切りが何もしないを上回ったのは5年、何もしないが損切りを上回ったのは6年です。どちらが良いかは、年によって入れ替わりました。両建ては、11年とも損切りより0.5〜0.9pips低い結果でした。
アドバイス平均は−60.9・−60.4・−61.0pipsで、ほぼ同じだったよ。違いは、ばらつきと、両建ての決済時のスプレッド分だったね。
ヘッジ手法の相関ヘッジを測定|別ペアで値動きは減るか

相関ヘッジは、別の通貨ペアの値動きを使うので、相関が変わると効き方も変わります。図は、2025年(相関−0.66)では、USD/JPYが下がる間にEUR/USDが上がった一方、2019年(相関−0.22)では、7月から10月にかけて両方が下がる場面もあったことを示しています。相関は、日足の終値の前日比(対数変化率)で測りました。金曜から月曜をまたぐ日は、連続した日ではないので除いています。
通貨ペア同士の相関

USD/JPYとEUR/USDの相関は、全期間(2,726日)で−0.46、年ごとでは−0.22(2019年)から−0.66(2025年)でした。EUR/USDとGBP/USDは、全期間(2,817日)で+0.65、年ごとで+0.49(2016年)から+0.86(2026年)です。USD/JPYとAUD/JPYは、全期間(2,724日)で+0.53、年ごとで+0.37(2021年)から+0.67(2016年)でした。プラスの組み合わせは同じ向きに動きやすく、マイナスの組み合わせは逆向きに動きやすい関係です。年によって相関の大きさが変わりました。
USD/JPY買いにEUR/USD買いを足すと

USD/JPYの買いに、同じ額のEUR/USDの買いを足すと、日足の変化率の標準偏差は、USD/JPYだけの場合の0.95倍でした。減りはわずかです。年ごとでは、2025年の0.77倍から2018年の1.22倍までで、1倍を超えた年は3年(2018年1.22倍、2019年1.18倍、2021年1.04倍)ありました。相関ヘッジで値動きが減るかどうかは、期間によって変わります。
アドバイスUSD/JPY買いにEUR/USD買いを足すと、全体では値動きが0.95倍だったよ。年ごとの差は0.77〜1.22倍と大きかったね。
ヘッジ手法とナンピン・損切りの違い|口座と会社の規約

ナンピン・損切り・両建ての違い
ナンピンは、逆行したときに同じ向きの建玉を増やす方法です。平均の取得価格は下がりますが、逆行が続くと、建玉が増えた分だけ含み損が広がります。損切りは、決済して損失を確定する方法で、損失の幅は決済した時点で決まります。両建ては、反対向きの建玉を持つ方法で、持っている間は含み損の幅が動きにくくなります。ただし建玉が残るので、いつ外すかを決める必要があります。測定では、外したあとに元の建玉が増えた割合は51.2%で、50%を含む範囲でした。
ナンピンはナンピンの記事、損切りの決め方は損切りルールの記事にまとめています。
口座の仕組みと会社の規約
MT5には、同じ通貨ペアで買いと売りを別々の建玉として持てるヘッジ口座と、売買を1つの建玉にまとめるネッティング口座があります(MetaQuotesのリリースノート)。ネッティング口座では、反対の売買をすると、建玉が相殺されて減ります。両建てを使うには、口座の種類を先に確認します。
両建てを認めるか、同じ会社の別の口座どうしや、別の会社の口座どうしでの両建てを認めるかは、会社ごとに違います。規約に両建ての制限や禁止が書かれている場合があるので、取引する会社の口座規約を確認してください。日本で営業する会社が登録を受けているかは、金融庁の免許・許可・登録等を受けている事業者一覧で確認できます。
ヘッジ型EAを見るときの確認点
ヘッジ型のEAは、損失の幅を抑える設計を自動で行います。確認するのは、同じ通貨ペアの買いと売りを持つ設計か、別の通貨ペアを使う設計か、使う口座がヘッジ口座かどうかです。最大ドローダウンはドローダウンの記事、EAの選び方はヘッジ型EAの記事にまとめています。当サイトに掲載しているヘッジ型EAは、ヘッジのカテゴリで見られます。
アドバイスナンピンは建玉を増やし、損切りは決済、両建ては反対を持つ操作だよ。口座の種類と会社の規約も、先に見ておこうね。
要点
・ヘッジ手法は、損失の幅を別の取引で抑える方法。両建て・相関ヘッジ・オプション・為替予約があり、費用の出どころが違う
・5通貨の1時間足で含み損が基準に達した3,235件の24時間後の平均損益は、何もしないが−60.9pips、損切りが−60.4pips、両建てが−61.0pips
・標準偏差は、何もしないが70.7pips、損切りと両建てが約28pips
・両建ては、決済時のスプレッド1回分(平均0.66pips)だけ損切りより悪い。スワップは測っていません
・両建てを外したあとに元の建玉が増えた割合は51.2%(範囲49.5〜52.9%で、50%を含む)
・USD/JPY買いにEUR/USD買いを足すと、値動きはUSD/JPYだけの0.95倍。年ごとでは0.77〜1.22倍
・測っていないのは、スワップ、会社ごとの両建ての規約、オプションと為替予約の費用
ヘッジ手法のよくある質問
ヘッジ手法とは何ですか?
損失の幅を別の取引で抑える方法の総称です。FXでは両建てと相関ヘッジが中心で、企業は為替予約も使います。
両建てで損失は減りますか?
平均は変わりませんでした。測定では、損切りが−60.4pips、両建てが−61.0pipsでした。変わったのはばらつきで、何もしない場合より小さくなりました。
両建てにはどんな費用がかかりますか?
決済時のスプレッドと、スワップの差です。測定できたのはスプレッドで、平均0.66pipsでした。スワップは測っていません。
両建ては会社に認められていますか?
会社と口座によって違います。制限や禁止が規約にある場合があるので、取引する会社の規約で確認してください。
ナンピンや損切りとの違いは何ですか?
建玉の扱いが違います。ナンピンは同じ向きに増やし、損切りは決済し、両建ては反対向きに持ちます。
EAでもヘッジは使われますか?
使われます。同じ通貨ペアで買いと売りを持つ設計や、別の通貨ペアを使う設計があります。使える口座の種類は、EAごとに確認が必要です。
ヘッジ手法のまとめ
ヘッジ手法は、損失の幅を別の取引で抑える方法です。Dukascopy のティックから作った5通貨の1時間足(2016年1月〜2026年10月)で、含み損が基準に達した3,235件を測ると、24時間後の平均損益は、何もしないが−60.9pips、損切りが−60.4pips、両建てが−61.0pipsでした。標準偏差は、何もしないが70.7pips、損切りと両建てが約28pipsです。両建ては、決済時のスプレッド1回分(平均0.66pips)だけ、損切りより悪くなりました。
両建てを外したあとに元の建玉が増えた割合は51.2%で、範囲(49.5〜52.9%)に50%を含みます。USD/JPY買いにEUR/USD買いを足す相関ヘッジは、値動きがUSD/JPYだけの0.95倍で、年ごとに0.77〜1.22倍と動きました。測っていないスワップや、会社ごとの両建ての規約は、自分の口座で確かめてから使ってください。持つ期間のスワップはスワップポイントの記事、ドローダウンはドローダウンの記事で説明しています。
この記事はFXの手法の情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。
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