
トレーリングストップとは|損切りを有利な方向にだけ動かす注文

固定の損切りとの違い
固定の損切りは、入ったときに決めた位置から動きません。トレーリングストップは、含み益が指定の幅に届いたあと、その時点の最高値(売りは最安値)から幅だけ離れた位置へ損切りを動かし、その後は有利な方向にだけ動かします。不利な方向には戻りません。
この記事では2つを次のように置いて比べます。固定は、損切りが幅、利確が幅の2倍です。トレーリングは、最初の損切りが幅で、利確はありません。幅は、20pips・50pips・100pipsと、ATRの1倍・2倍・3倍の6通りです。ATRは、直前14本の1時間足の値幅(前の終値からの動きも含む)の平均です。
動きの例|USD/JPYの買い1件
図は、USD/JPYで日本時間2023年9月5日8時の1時間足の始値で買った1件です。買った価格(ask)は146.521で、幅は50pipsです。固定は、15.0時間後に利確の位置に届いて、+100.0pipsで決済されました。トレーリングは、含み益が50pipsに届いたあとに損切りが上がり続け、30.5時間後に最後の損切り147.316で決済されて、+79.5pipsでした。
この1件は、固定のほうが利益が大きかった例です。トレーリングのほうが大きくなる1件もあります。どちらが多いかは、「トレーリングストップの実測」で37,053件を使って測っています。
アドバイストレーリングは、損切りが上がるだけで下がらない仕組みだよ。この例では、固定の+100.0pipsのほうが大きかったね。
トレーリングストップの設定|MT4とMT5の動き方の違い

MT4のトレーリングストップ
MT4のトレーリングストップは、サーバーではなく、端末(クライアントターミナル)の中で動きます。新しい気配値が来るたびに確認され、含み益が指定の水準に届くと、現在値から指定の距離に損切りが置かれ、その後は有利な方向にだけ動きます。1つのポジションに設定できるのは1つで、同じ通貨ペアの注文が複数あるときは、最後の注文だけが処理されます。
設定は、「取引」タブのポジションか、チャート上のポジションを右クリックして行います。端末を閉じると、トレーリングは動かず、すでに設定された損切りの位置だけが残ります。
MT5のトレーリングストップ
MT5のトレーリングストップも、サーバーではなく、プラットフォームの中で動きます。1つのポジションについて10秒に1回までで、最後に開いたポジションだけが処理されます。設定は、「取引」タブでポジションを右クリックして、距離を選ぶか、任意の水準を指定して行います。プラットフォームを閉じると、すでに設定された損切りの位置だけが残ります。
この記事の測定との関係
この記事の測定は、MT4のトレーリングストップを参考に、15分足でたどって再現したものです。損切りは、含み益が幅に届いたあと、最高値から幅の位置へ上げ、有利な方向にだけ動かしています。実際の端末の気配値を使った結果ではありません。
アドバイスどちらも、端末やプラットフォームが動いている間だけ追従するよ。閉じると、設定済みの損切りだけが残るんだ。
トレーリングストップの実測|5通貨37,053件で固定と比べた結果

測り方
入り方は、1時間足の終値が直前20本の高値を上回った(安値を下回った)ら、次の1時間足の始値で買い(売り)です。この合図1回を1件と数え、ポジションの重なりは考えず、1件ずつ単独で追いました。合計は37,053件で、USD/JPYが7,514件、EUR/USDが7,204件、GBP/USDが7,354件、EUR/JPYが7,413件、AUD/JPYが7,568件です。買いが20,127件、売りが16,926件でした。
決済までの動きは、15分足でたどりました。買いは売値(bid)にスプレッドを足した買値(ask)で入って bid で決済し、売りは bid で入って ask で決済します。スプレッドは、その年のティックの売値と買値の差の中央値で、損益に含めています。同じ15分足の中で損切りと利確の両方に届いた場合は、損切りとしました。
比べる相手には、無作為に入った場合を使いました。同じ通貨で、合図と同じ頻度の足に、向きを無作為に選んで入ります。これを20回作り直し、平均損益の最小〜最大を、無作為に入った場合の範囲としました。実際の範囲は、月ごとにデータを取り直す計算を2,000回行い、5〜95%を取っています。
1件あたりの平均損益
12条件の平均損益は、すべてマイナスでした。固定は−1.26〜−0.10pips、トレーリングは−1.37〜−0.58pipsです。固定の50pipsは−0.13pips(実際の範囲は−1.38〜1.16)、トレーリングの50pipsは−0.65pips(−1.86〜0.57)でした。実際の範囲が0を下回りきったのは、固定の20pips・ATR1倍と、トレーリングの20pips・ATR1倍・ATR2倍の5条件で、0を上回りきった条件はありません。
無作為に入った場合の範囲と比べると、12条件のうち5条件は範囲より下で、7条件は範囲に入りました。範囲を上回った条件はありません。合図で入った場合が、無作為に入った場合より1件あたりで大きいとは言えませんでした。
勝率・保有時間・最大の落ち込み

勝率は、損益が0を超えた件の割合です。固定は31.7〜33.9%、トレーリングは46.7〜50.1%で、同じ幅で比べると、トレーリングが14.9〜16.7ポイント高くなりました。無作為に入った場合の勝率も、固定が31.9〜33.3%、トレーリングが47.4〜49.5%(20回の平均)で、ほぼ同じです。
勝率が上がった中身は、利益の大きさです。50pipsでは、勝った件の平均が、固定は99.9pips、トレーリングは48.8pipsでした。負けた件の平均は、固定が−50.3pips、トレーリングが−50.1pipsで、ほぼ同じです。トレーリングでは、損切りが動いた件が50.1%、最初の損切りで終わった件が49.8%、データの最後で決済した件が0.1%でした(合計37,053件)。
平均の保有時間は、6条件すべてで、トレーリングが固定より短くなりました。50pipsでは、固定が45.6時間、トレーリングが34.3時間です。最大の落ち込みは、6条件すべてでトレーリングが固定より大きくなりました。50pipsでは、固定が10,968pips、トレーリングが14,035pipsです。落ち込みは、通貨ごとに1件ずつ足し上げた損益の、最高点からの最大の下がり幅で、5通貨の中央値です。
トレーリングと固定の差

同じ合図で、トレーリングの損益から固定の損益を引いて、平均を出しました。通常の置き方では、20pipsが−0.25pips、50pipsが−0.52pips、100pipsが+0.64pips、ATR1倍が−0.11pips、ATR2倍が−0.51pips、ATR3倍が−0.94pipsです。実際の範囲が0を下回りきったのは、ATR2倍(−0.94〜−0.08)とATR3倍(−1.79〜−0.12)の2条件でした。20pipsは−0.50〜0.00、50pipsは−1.25〜0.24、100pipsは−1.66〜3.02です。
0を上回る差は、100pipsの+0.64pipsだけで、実際の範囲が広く、0を含みます。トレーリングが固定より1件あたりで大きいと言える条件は、ありませんでした。
足の中の順番を変えた場合|高値が先
15分足の中で、高値と安値のどちらが先に付いたかは、足だけでは分かりません。通常の置き方は、足の中で先に損切りに届いたかを調べてから、損切りを動かします。高値が先は、同じ15分足の中で、損切りが上がってから安値に届いたと置く、トレーリングに厳しい置き方です(売りは安値が先)。
高値が先では、トレーリングの平均損益が−3.56〜−1.01pipsに下がり、固定との差は−2.33〜+0.22pipsでした。20pips・50pips・ATRの1倍・2倍・3倍の5条件は、実際の範囲が0を下回りきりました。通常の置き方と比べて、トレーリングの平均損益は、6条件とも0.43〜2.19pips下がりました。最も下がったのはATR1倍で、−1.37pipsから−3.56pipsです。
アドバイストレーリングで勝率は14.9〜16.7ポイント上がったよ。でも、勝った件の平均が小さくなって、1件あたりの平均損益は固定を上回らなかったんだ。
トレーリングストップの幅|通貨ごとのATRとスプレッド

ATRの通貨ごとの違い
ATRの中央値は、USD/JPYが16.2pips、EUR/USDが12.9pips、GBP/USDが17.8pips、EUR/JPYが19.0pips、AUD/JPYが15.8pipsでした。最も大きいのはEUR/JPYで、最も小さいのはEUR/USDです。同じ20pipsでも、通貨ごとに、1時間足の値幅に対する大きさが違います。
ATRの倍数で幅を決めた条件(ATR1倍・2倍・3倍)は、そのときの値幅に合わせて、幅が毎回変わります。ATR1倍は、固定もトレーリングも、保有時間が短く、平均損益が−1.26pipsと−1.37pipsでした。
スプレッドの通貨ごとの違い
スプレッドの中央値は、USD/JPYが0.4pips、EUR/USDが0.3pips、GBP/USDが0.8pips、EUR/JPYが0.7pips、AUD/JPYが0.8pipsでした。スプレッドは、ティックの売値と買値の差から求めた値で、この測定では、すべての件の損益に含めています。口座のスプレッドは、FX会社と時間帯で違います。
アドバイスATRが一番大きいのはEUR/JPYの19.0pipsで、一番小さいのはEUR/USDの12.9pipsだったよ。同じ幅でも、通貨で大きさが違うんだ。
要点
・トレーリングストップは、含み益が出たあと、損切りを有利な方向にだけ動かす注文。MT4は端末の中、MT5はプラットフォームの中で動き、閉じると設定済みの損切りだけが残る
・5通貨の1時間足336,913本から、20本の高値・安値を終値で抜けた次の足の始値で入った37,053件を、15分足でたどった
・トレーリングは、同じ幅の固定より勝率が14.9〜16.7ポイント高く、保有時間は短い。最大の落ち込みは大きい
・1件あたりの平均損益は、12条件ともマイナス(−1.37〜−0.10pips)。トレーリングが固定を上回ると言える条件は、ありませんでした
・トレーリングの結果は、足の中の順番を高値が先にすると、6条件とも0.43〜2.19pips下がる
トレーリングストップのよくある質問
トレーリングストップとは何ですか?
損切りを有利な方向にだけ動かす注文です。含み益が出たあと、損切りが最高値(売りは最安値)に付いていきます。
固定の損切りより、利益は増えますか?
測った範囲では、増えませんでした。勝率は上がりましたが、1件あたりの平均損益は、固定を上回る条件がありませんでした。
MT4とMT5で、動き方は違いますか?
基本は同じで、細かい点が違います。どちらもサーバーではなく、手元の端末で動きます。MT5は、1つのポジションについて10秒に1回までです。
端末を閉じると、トレーリングはどうなりますか?
動かなくなります。すでに設定された損切りの位置だけが残ります。
幅は、何pipsがよいですか?
測った12条件では、どの幅でも平均損益はマイナスでした。幅を変えても、トレーリングが固定を上回る結果にはなりませんでした。
トレーリングストップのまとめ
トレーリングストップは、損切りを有利な方向にだけ動かす注文です。Dukascopy のティックから作った5通貨の1時間足(2016年1月〜2026年10月)の37,053件では、トレーリングにすると、同じ幅の固定より勝率が14.9〜16.7ポイント高くなり、保有時間は短くなりました。一方で、1件あたりの平均損益は12条件ともマイナスで、トレーリングが固定を上回ると言える条件はありませんでした。
結果は、足の中の順番の置き方でも動きます。この測定は、スプレッドを含めた1つの入り方での結果です。自分の使う入り方と通貨で、確かめてから使ってください。ATRの基本はATRの記事にまとめています。
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