
EAポートフォリオとは|複数のEAに資金を分ける運用

EAポートフォリオの定義と、測ったEA
EAポートフォリオは、複数のEAに資金を分けて持つ運用です。1本のEAの成績は、1つの通貨ペアと1つの売買ルールの結果です。複数を組むと、全体の損益は、各EAの損益に資金の割合をかけて足したものになります。
この記事で測ったEAは、通貨ペア・売買ルール・時間足の組み合わせで、5通貨ペア×2ルール×2時間足の20本です。売買ルールの「高安」は、終値が直近20本の高値を上抜けたら買い、安値を下抜けたら売りに切り替え、常にどちらかを持つルールです。「平均線」は、単純移動平均20本が100本より上なら買い、下なら売りにするルールです。時間足は日足と1時間足で、日足は世界標準時21時(ニューヨーク17時ごろ)で区切りました。以下、売買ルールと時間足の組み合わせ(5本ずつ)を「EA群」と呼び、「高安・日足」のように書きます。
損益は資金に対する%で、複利にせず足し算で積み上げました。スプレッドは1pipで、持ち方が1単位変わるごとに0.5pipを引いています。スワップと手数料は入れていません。評価は2016年6月から2026年9月までの124か月で、移動平均などの助走に2016年1〜5月を使い、途中の2026年10月は除きました。n本を組むときは、資金の1/nずつを各EAに割り当てます。
売買ルールは単純なもので、利益が出るように選んだものではありません。資金全額で運用した場合の通算損益は、EAごとに−43.9%〜+39.0%で、20本を同じ額ずつ組むと−3.6%でした。この記事で測るのは損益の大きさではなく、組み合わせたときに何が変わり、何が変わらないかです。
1本運用と5本運用の違い
図は、高安・日足の5本を1本ずつ運用した場合(灰色)と、5本を資金の5分の1ずつで組んだ場合(オレンジ)の累積損益です。1本ずつの通算損益は、−43.9%から+16.9%まで広がりました。5本を組んだ通算は−11.5%で、1本ずつの平均と同じです。同じ額ずつ組むと、通算損益は1本ずつの平均になります。
変わるのは、通算ではなく、上下の振れ幅です。図のオレンジの線は、灰色の線より上下が小さくなっています。どれだけ小さくなったかは、後の節で測っています。
アドバイス5本を同じ額で組むと、通算損益は1本ずつの平均になるよ。高安・日足では、5本の平均は−11.5%だったね。
EAポートフォリオの効果|月ごとの損益の相関

通貨ペアごとの相関
相関は、2つのEAの月ごとの損益が、同じ月に同じ向きで動いたかを−1〜1で表した値です。高安・日足の5本で、10組の相関は−0.15〜0.24で、平均は0.10でした。最も高いのはEUR/JPYとAUD/JPYの0.24、最も低いのはGBP/USDとAUD/JPYの−0.15です。
124か月から出した相関には、約0.09の標準誤差があります。1組ごとの差は小さく、表の値だけで、どの組が高いかは決められません。そこで、組をグループに分けて平均を比べました。
通貨を共有する組は相関が高い

5通貨ペアの10組のうち、同じ通貨が入る組は7組です。たとえばUSD/JPYとEUR/USDは、どちらもUSDが入ります。同じ通貨が入らない組は、EUR/USDとAUD/JPY、GBP/USDとEUR/JPY、GBP/USDとAUD/JPYの3組です。
相関の平均は、通貨を共有する組と共有しない組で、高安・日足が0.18と−0.07、平均線・日足が0.26と0.00、高安・1時間足が0.16と−0.09、平均線・1時間足が0.27と0.09でした。4群とも、共有する組のほうが高くなりました。ただし、共有しない組は3組だけで、個々の組の値は偶然によるぶれを含みます。平均線・1時間足では、共有しない組の最大値0.16が、共有する組の最小値0.17に近い値でした。
期間を分けても同じかを確かめました。124か月を、43・42・39か月の3つに分け、4群の平均を出しています。共有する7組は0.16・0.23・0.27、共有しない3組は−0.03・0.07・−0.13で、3つの期間とも、共有する組のほうが高くなりました。

同じペアのEAは売買ルールを変えても似る

20本のEAの全組み合わせを、種類ごとに分けて、相関の平均を出しました。同じ通貨ペアで売買ルールだけが違う組(同じ時間足、10組)は、平均0.41で、範囲は0.32〜0.46でした。ペアを変えると下がり、通貨を共有する組(売買ルールも違う、各時間足14通り)が0.13、共有しない組(各時間足6通り)が0.01です。
同じ通貨ペアで時間足だけが違う組(同じ売買ルール、10組)は、平均0.00で、範囲は−0.22〜0.18でした。EAの数を増やしても、同じ通貨ペアのEAを足すだけでは、月ごとの損益はほとんど分かれません。
アドバイス通貨を共有する組の相関は、平均で0.16〜0.27だったよ。共有しない組は−0.09〜0.09だね。
EAポートフォリオの本数|最大の下落と高値に戻れない期間

5本で最大の下落は小さくなる
最大の下落は、累積損益の最高値からの下落幅の最大です。ドローダウンと同じ考え方で、ここでは資金に対する%で出しました。5通貨ペアのEAを同じ額ずつ5本組むと、最大の下落は、4つのEA群の単体の平均より小さくなりました。高安・日足は35.9%から15.8%、平均線・日足は32.1%から15.2%、高安・1時間足は30.9%から17.6%、平均線・1時間足は30.2%から19.2%です。
月ごとの損益で最も悪い月(最悪の月)も、単体の平均より小さくなりました。高安・日足は−9.3%から−2.8%、平均線・日足は−8.1%から−4.5%、高安・1時間足は−6.6%から−4.1%、平均線・1時間足は−7.7%から−4.7%です。
ただし、5本を組んだ最大の下落は、あとから見て最も小さかった単体のEAとは比べられません。高安・日足では、単体で最も小さい22.2%(USD/JPY)より小さくなりましたが、ほかの3群では、単体の最小値(平均線・日足13.3%、高安・1時間足16.7%、平均線・1時間足18.1%)より大きくなりました。
本数を増やしたときの最大の下落

20本のEAから、1・2・3・5・10本を4,000回ずつ無作為に選び、同じ額ずつ組みました。20本は全部を使った1通りです。選ぶ中には、同じ通貨ペアで売買ルールや時間足が違うEAが入ることもあります。
最大の下落の平均は、1本が32.2%、2本が23.2%、3本が19.6%、5本が15.4%、10本が11.5%、20本が9.0%でした。10%点から90%点の範囲は、1本が18.1〜45.9%、5本が10.2〜21.5%、10本が8.5〜14.9%で、本数が増えると狭くなります。1本から5本では16.8ポイント、5本から10本では3.9ポイント、10本から20本では2.5ポイント下がり、増やしたときの下がり方は小さくなります。
高値に戻れない最長期間は縮まない

高値に戻れない最長期間は、累積損益が、それまでの最高値を下回り続けた最長の期間です。5本合成の4つのEA群を単体の平均と比べると、高安・日足は7.6年から8.1年、平均線・日足は6.0年から9.8年、高安・1時間足は7.6年から10.3年と長くなりました。平均線・1時間足だけが5.5年から4.0年に短くなりました。
無作為に選んだ組でも、平均は1本が6.6年、2本が6.6年、3本が6.7年、5本が6.5年、10本が6.4年、20本が6.0年で、ほとんど変わりません。1〜10本の90%点は10.3年で、評価した期間(124か月=約10.3年)のほぼ全部です。本数を増やしても、最高値に戻れない期間が短くなるとは言えませんでした。
アドバイス本数を増やすと、最大の下落は小さくなったよ。でも、高値に戻れない期間は、本数を増やしてもほとんど変わらなかったね。
EAポートフォリオの組み合わせ方|同じ月に負けるEAと資金配分

同じ月に負けるEAの数
高安・日足の5本について、月ごとの損益がマイナスだったEAの本数を、124か月で数えました。0本が6か月、1本が18か月、2本が37か月、3本が32か月、4本が24か月、5本が7か月です。5本とも負けた月が7か月ある一方で、5本とも負けなかった月も6か月ありました。
比べる相手には、各EAの月の並びを独立に入れ替えて2,000回数え直した平均を使いました。入れ替えた平均は、0本が3.4か月、1本が17.6か月、2本が37.6か月、3本が39.9か月、4本が21.2か月、5本が4.4か月です。4本以上が同時に負けた月は、実際が31か月で、入れ替えた平均の25.6か月(5%点〜95%点は21〜31か月)の範囲の上端でした。
ほかの3群も同じ方法で数えました。4本以上が負けた月は、平均線・日足が27か月(入れ替えた平均21.7か月、範囲17〜27か月)、高安・1時間足が30か月(27.4か月、22〜32か月)、平均線・1時間足が31か月(20.0か月、15〜25か月)です。範囲の上を超えたのは平均線・1時間足だけでした。4群とも、入れ替えた平均でも20.0〜27.4か月は、5本のうち4本以上が同じ月に負けます。通貨ペアを分けても、同じ月に複数のEAが負ける月は起きます。
資金配分を変えたときの差

高安・日足の5本で、同じ額(各20%)と、値動きの逆数の配分を比べました。値動きの逆数は、月ごとの損益の標準偏差が大きいEAほど配分を少なくする方法で、配分は17.4〜24.2%になりました。この配分は124か月全体のデータで決めたもので、あとから知った値です。
通算は、同じ額が−11.5%、値動きの逆数が−12.2%でした。最大の下落は15.8%と17.0%、最悪の月は−2.8%と−2.9%です。あとから知った値で配分しても、同じ額より最大の下落は小さくなりませんでした。この5本では、配分の違いより、どの通貨ペアを入れるかのほうが、結果の差を左右します。
アドバイス5本のうち4本以上が同じ月に負けた月は、高安・日足で31か月あったよ。入れ替えた平均は25.6か月だったね。
EAポートフォリオに入れるEAの選び方|過去の成績で選んだ結果

前半の上位5本を後半で測る
EAを選ぶときは、過去の成績が良いものから選びたくなります。そこで、20本を前半(2016年6月〜2020年12月、55か月)の通算損益で並べ、上位5本を選びました。この5本を同じ額ずつ組み、後半(2021年1月〜2026年9月、69か月)に何が起きたかを測りました。
前半の上位5本を組んだ結果は、前半で通算+22.9%・最大の下落5.0%でしたが、後半は通算−4.5%・最大の下落15.2%でした。後半に通算がプラスだったのは、5本のうち2本です。図の横軸は前半、縦軸は後半の通算損益で、20本の順位相関は−0.03でした。前半と後半の両方で通算がプラスだったEAは、20本のうち3本です。
比べる相手には、20本から5本を選ぶ全ての組み合わせ15,504通りの、後半の結果を使いました。通算の平均は−3.5%、10%点〜90%点は−11.6〜+4.7%です。前半の上位5本の−4.5%は、15,504通りのうち44%より低い位置で、平均的な組み合わせと区別できません。最大の下落は、15,504通りの平均が13.3%で、前半の上位5本の15.2%は、71%の組み合わせより大きくなりました。
この結果は、1つの売買ルールの組と1回の期間の分け方だけで出したものです。前半の成績で選んでも、後半の成績が良くなるとは言えませんでした。
この記事で測った、組む前に確かめられること
測った範囲で、EAを組む前に確かめられる項目は3つです。1つ目は、通貨が重なっているかです。重なる組の相関の平均は0.16〜0.27で、重ならない組より高くなりました。2つ目は、同じ通貨ペアで売買ルールだけが違うEAを入れていないかです。この組の相関の平均は0.41でした。3つ目は、最大の下落の大きさです。5本で単体の平均より小さくなり、10本、20本と増やすとさらに小さくなりました。
資金の割り当てやロットの決め方は、EAの資金管理の記事にまとめています。
アドバイス前半の上位5本を選んでも、後半は−4.5%だったよ。無作為に選んだ5本の平均は−3.5%で、区別できなかったね。
EAポートフォリオを作るツール|シストレ.COMのポートフォリオ

ポートフォリオ作成ページでできること
シストレ.COMのポートフォリオ作成ページは、複数のEAを選んで、組み合わせを比べるためのページです。EAの名前で検索でき、戦略タイプ・通貨ペア・時間足・フォワード期間で絞り込み、並べ替えもできます。EAを「追加する」で、組み合わせに入れます。
一覧の数字の見方
一覧の数字は、0.01Lot換算のフォワード実績です。直近損益は直近3か月、最大DDとPFは直近12か月で、最大DDは日ごとの確定損益から計算し、保有中の含み損は含みません。この記事の最大の下落は、累積損益の最高値からの下落幅で、計算の元が違います。数字を見比べるときは、同じ計算の値どうしで比べてください。
アドバイスツールの最大DDは、日ごとの確定損益で出した値だよ。この記事の最大の下落とは計算が違うんだね。
要点
・測ったのは、5通貨ペア×高安/平均線×日足/1時間足の20本のEA(Dukascopy のティックから作った足、2016年6月〜2026年9月の124か月)
・同じ額ずつ5本を組むと、最大の下落は単体の平均30.2〜35.9%から15.2〜19.2%に小さくなった。20本から無作為に選んだ組では、1本32.2%、5本15.4%、10本11.5%、20本9.0%(平均)
・高値に戻れない最長期間は、5本合成で4群のうち3群が単体の平均より長く、無作為に選んだ組の平均は1〜20本で6.0〜6.7年と、ほとんど変わらなかった
・月ごとの損益の相関の平均は、通貨を共有する組が0.16〜0.27、共有しない組が−0.09〜0.09。同じ通貨ペアで売買ルールだけ違う組は0.41
・高安・日足の5本のうち4本以上が同じ月に負けた月は31か月(入れ替えた平均25.6か月、範囲21〜31か月)
・前半(2016年6月〜2020年12月)の上位5本を選んでも、後半(2021年1月〜2026年9月)は−4.5%で、15,504通りの平均−3.5%と区別できなかった
EAポートフォリオのよくある質問
EAポートフォリオとは何ですか?
複数のEAに資金を分けて運用することです。EAごとの売買ルール・通貨ペア・時間足の違いを使って、1本の振れ幅を分け合います。
何本のEAを組めばよいですか?
適した本数は測っていません。20本から無作為に選ぶと、最大の下落の平均は、1本が32.2%、5本が15.4%、10本が11.5%でした。
通貨ペアを分ければ、値動きは分かれますか?
通貨が重なると、似やすくなりました。相関の平均は、共有する組が0.16〜0.27、共有しない組が−0.09〜0.09です。
組むと、損失はなくなりますか?
なくなりません。最大の下落は小さくなりましたが、高値に戻れない最長期間は、4群のうち3群で長くなりました。
過去の成績が良いEAを選べば、組んだあとも良いですか?
この測定では、そうなりませんでした。前半の上位5本を組んだ後半は−4.5%で、無作為に選んだ5本の平均(−3.5%)と区別できませんでした。
シストレ.COMで組み合わせを比べられますか?
ポートフォリオ作成ページで比べられます。EAを絞り込み、「追加する」で組み合わせに入れます。
EAポートフォリオのまとめ
Dukascopy のティックから作った足で、5通貨ペア×2つの売買ルール×日足と1時間足の20本のEA(2016年6月〜2026年9月)を測りました。同じ額ずつ5本を組むと、最大の下落は小さくなりましたが、通算損益は1本ずつの平均になり、高値に戻れない最長期間は4群のうち3群で長くなりました。月ごとの損益の相関は、通貨を共有する組が高く、同じ通貨ペアで売買ルールだけ変えた組は0.41でした。
4本以上が同じ月に負けた月は、4群とも入れ替えた平均で20.0〜27.4か月ありました。前半の成績で選んだ5本も、後半の結果は無作為に選んだ組と区別できませんでした。測っていない売買の損益の予測や、ほかの売買ルール、スワップ・手数料を入れた結果は、自分のデータで確かめてから使ってください。関連する話題は、EAの最適化、MAM・PAMM口座、EAの複利運用の記事にまとめています。
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