
Chandelier Exitとは?ATRで引くトレーリングストップ

考案者と出どころ
StockChartsのChartSchoolによると、Chandelier ExitはCharles Le Beauが作り、Alexander Elderの著書で紹介された手法です。TradingViewで公開されているeverget版の説明も、Le Beauの考案で、Elderの『Come Into My Trading Room』(2002年)で広まったとしています。名前については、StockChartsが「線が直近の高値からぶら下がる」と説明していますが、シャンデリアという呼び名の由来そのものは確認できませんでした。
何を決める線か
Chandelier Exitは、買いや売りの合図ではなく、出口の目安を引く線です。ロング(買い)用の線は、直近の最高値からATRの何倍か下に引きます。高値を更新すれば線も切り上がるので、含み益が伸びるのに合わせて、ストップの位置も上へ動きます。ショート(売り)用の線は、その逆で、直近の最安値からATRの何倍か上に引きます。エントリーのタイミングは、別の指標で測る使い方が基本です。
固定幅のストップとの違い
「高値から50pips下」のような固定幅のストップは、値動きが大きい時期も小さい時期も、同じ幅です。Chandelier ExitはATRで幅を決めるので、値動きが大きくなれば線は遠く、小さくなれば近くなります。この違いが、実際に触れやすさへどう出るかは、後ろの「実測」の節で数えました。
アドバイスChandelier Exitは、入る合図じゃなくて、出る場所の目安を引く線だよ。高値から離す幅は、ATRで決まるんだ。
Chandelier Exitの計算式とパラメーター設定

上の図は、USDJPY 4時間足の1本について、式の中身を数字で追ったものです。22本の最高値が161.949、最安値が160.261、ATR(22)が0.296なので、ATR×3は0.887です。ロング用の線は161.949から0.887を引いた161.062、ショート用の線は160.261に0.887を足した161.148になります。
ロング用とショート用の式
StockChartsの式は、次の2つです。期間の初期値は22本で、最高値・最安値を取る期間と、ATRの期間は同じ22本です。乗数の初期値は3です。


ATRの出し方
ATRは、Welles Wilderが1978年に示した指標です。まず、1本ごとの真の値幅(TR)を、「高値 − 安値」「高値 − 前の終値の差の絶対値」「安値 − 前の終値の差の絶対値」のうち最も大きいものとして出します。StockChartsの説明では、最初のATRは最初のn本のTRの平均で、そのあとは「(前のATR × (n − 1) + 今のTR)÷ n」で更新します。この記事の計算は、この更新式(Wilder平滑)です。
MT4・MT5のヘルプでは、ATRは真の値幅の移動平均とされていて、平滑の種類までは書かれていません。MT4のATRとWilder平滑の数字が一致するかは、確認できていません。ATRそのものの使い方は、ATRとは?計算方法・使い方・トレード戦略で解説しています。

期間と乗数の目安

StockChartsの初期値は、期間22(1か月の取引日数にあたる)と乗数3.0です。値動きの荒い個別株では、だましを減らすために乗数を大きくしてよいとされ、例として乗数5が挙げられています。値動きの鈍い銘柄では、小さくします。ただし、これは株の例です。FXの通貨ペアで、どの値が向いているかを決められる材料は、この記事にはありません。後ろの実測では、乗数を2・3・4に変えたとき、線に触れるまでの本数がどう変わるかを数えました。
乗数を変えると線の位置はどう変わるか

乗数を大きくすると、線は高値から離れます。同じ高値でも、乗数4の線は乗数2の線より、ATRの2本分だけ下にあります。そのぶん価格が線に触れにくくなり、触れるまでに価格が高値から戻る幅は大きくなります。
版による違い

同じ名前でも、StockChartsの式と、TradingViewのeverget版では、細かい作りが違います。上の表のとおり、everget版は最高値・最安値ではなく終値を基準にでき(初期設定は終値)、価格が線の上にある間は線を下げません。向きは、終値が反対側の線を抜けたときに切り替えます。この記事の実測と、図のチャートは、StockChartsの式(高値・安値基準で、毎足計算し直す)で描いています。シストレ.COMで配布しているex4は、ソースを確認できていないため、どちらの版と同じとは書けません。チャートに重ねて、線の位置を確かめてから使ってください。
アドバイス式は「最高値 − ATR×乗数」だけだよ。乗数を大きくすると、線が遠くなって、触れにくくなるんだ。
Chandelier Exitの実測|線に触れるまでの本数と、触れたあとの動き

Chandelier Exitの線は、高値からATRの何倍か離れた位置にあります。では、上昇の途中で、その線に何本目で触れるのでしょうか。また、触れたあとに、価格は戻るのでしょうか。Dukascopyのティックから作った足で数えました。売買の損益は測っていません。
測り方と、1件の数え方
- データ: Dukascopyのティック(bid)から作った1時間足(UTC)。4時間足は、1時間足をUTCの0・4・8時…で4本ずつまとめました。
- 期間と通貨ペア: 2016年1月〜2025年12月の、USDJPY・EURUSD・GBPUSD。足は、1時間足で約18.6万本、4時間足で約4.8万本です。
- 1件の数え方: 終値が、直前22本の最高値を上回った足です。直前22本の間に同じ更新がなかった最初の足だけを数えます。ショートは、価格を反転させて同じ数え方です。件数は、1時間足が5,037件、4時間足が1,322件です。
- 線に触れる: その足より後で、安値が、1本前の足の「22本の最高値 − 乗数 × ATR(22)」以下になった最初の足です。これをATR型と呼びます。比べる固定幅は、同じ乗数の「乗数 × ATR」を全期間で平均した幅(pips)を、毎回の最高値から引いた線です。
- 触れたあと: 触れた足の次から22本のうちに、案件の始まりから触れる前までの最高値を超えたら「戻った」、安値が、止め値よりATR1本分下がったら「さらに下がった」です。どちらにも届かなかった例と、同じ足で両方に届いた例は、「どちらでもない」にまとめました。
- 除いたもの: 最初の300本、スプレッドと手数料、期間22以外の設定です。
線に触れるまでの本数

1時間足では、線に触れるまでの本数の中央値が、乗数2で7本、乗数3で16本、乗数4で25本でした。始まりから5本以内に触れた割合は、42%、17%、7%です。4時間足でも、中央値は7本、14本、24本と、ほぼ同じ形でした。平均は、1時間足の乗数3で19.2本と、中央値より長めです。長く触れない例が、平均を押し上げています。
触れたあとの動き

1時間足で線に触れたあと22本以内に、直前の高値を超えて戻ったのは、乗数2で35%、乗数3で23%、乗数4で16%でした。止め値からATR1本分以上さらに下がったのは、63%、70%、73%です。乗数が大きいほど、戻る例は少なく、さらに下がる例が多くなりました。4時間足でも、戻った割合は34%、23%、14%と同じ傾向でした。通貨ペアごとに分けても、1時間足・乗数3・ATR型の中央値は15〜18本、戻った割合は21〜24%で、1つの通貨ペアに偏ってはいませんでした。
ATR型と固定幅の比べ

1時間足・乗数3で、ATR型と同じ平均の幅(USDJPYは55.6pips、EURUSDは42.6pips、GBPUSDは59.7pips)の固定幅を比べました。触れるまでの中央値は、ATR型が16本、固定幅が19本と近く、22本以内に触れた割合は、68%と59%でした。ただし、平均は固定幅が29.7本、ATR型が19.2本で、固定幅のほうが、長く触れない例が多くなりました。
差がはっきり出たのは、始まりの値動きの大きさです。5本以内に触れた割合は、値動きが小さい・中くらい・大きいの順に、ATR型が19%・17%・14%、固定幅が17%・17%・24%でした。固定幅は、値動きが大きい時期に、すぐ触れやすくなっています。ATR型は、値動きが大きい時期ほど線が遠くなるので、逆に触れにくくなりました。
この実測で言えること、言えないこと
言えるのは、次の3点です。乗数が大きいほど、線に触れるまでの本数は長くなります。触れたあとは、戻るよりさらに下がる例のほうが多い結果でした。固定幅は、値動きが大きい時期に早く触れやすくなります。言えないのは、どの乗数が儲かるか、ということです。損益は、スプレッドも含めて測っていません。bid価格だけの足で、期間も22だけです。この結果は、過去10年の3通貨ペアの話で、将来を約束するものではありません。
アドバイス乗数が大きいと、触れるまで長くもつけど、触れたあとに戻る例は少なかったよ。損益は測ってないから、そこは分からないんだ。
Chandelier ExitのMT4導入方法とTradingViewでの使い方

ダウンロード
以下のボタンから、「ChandelierExit_systre.ex4」をダウンロードできます。
MT4への入れ方
ChandelierExit_systre.ex4を MT4 の Indicators フォルダに移動します
(場所: MT4 → ファイル → データフォルダを開く → MQL4 → Indicators)- MT4を再起動するか、ナビゲーターで「更新」をクリックします
- ナビゲーターのインディケータから、チャートへドラッグ&ドロップします
⚠ 注意事項
- 無料配布のサンプルです。
- 商用利用・再配布は禁止とさせていただきます。
- シストレ.COMの登録口座でご利用いただけます。認証が行われていない口座では使えません。
- 期間と乗数の初期値、線の計算の版は、この記事では確認できていません。チャートに表示して、線の位置を確かめてから使ってください。
TradingViewで使う場合
TradingViewには、everget氏のChandelier Exit(2019年3月公開)があります。MQL5コードベースにある、このスクリプトのMT4移植版では、ATRの期間22、乗数3.0、基準は終値が初期設定でした。ATRはWilder平滑です。アラートの設定や表示の細かい点は、スクリプトごとに違うため、各スクリプトの説明で確認してください。
アドバイスex4はIndicatorsフォルダに入れて、MT4を再起動するだけだよ。使える口座の条件も、確かめてね。
Chandelier Exitの使い方|出口の目安と向きの切り替え

出口として使う
ロングを持っているときは、ロング用の線をストップの目安にします。上の図では、7月11日12:00(UTC)の足の終値が、ロング用の線を下回りました。この足が、線を割った足です。足の途中で触れただけで決済するのか、終値で判断するのかは、先にルールとして決めておく必要があります。everget版は終値で向きを切り替えます。この記事の実測は、足の途中を含め、安値が線以下になった時点を「触れた」としました。
向きの切り替え
everget版の向きの決め方は、次のとおりです。終値が1本前のショート用の線を上抜けたら「上向き」、1本前のロング用の線を下抜けたら「下向き」にし、どちらでもなければ前の向きを保ちます。上向きの間はロング用の線、下向きの間はショート用の線だけを使います。この記事のチャートも、この決め方で、向きに合う線だけを描いています。
入る合図は別の指標で
StockChartsは、Chandelier Exitを出口の道具として説明し、エントリーのタイミングはStochRSIやCCIで測る例を挙げています。この線自体が出すのは、出口の目安と、向きの切り替えだけです。
時間足の選び方
この記事の実測では、1時間足と4時間足で、線に触れるまでの本数の中央値は近い形でした(乗数2・3・4で、7・16・25本と、7・14・24本)。ただし、これは本数であって、時間では1時間足の16本は16時間、4時間足の14本は56時間です。どちらの時間足が向いているかは、損益を測っていないため、決められません。自分の売買の長さに合わせて選んでください。
アドバイス線を割ったあとに決済するか、終値で決めるかは、先にルールにしておこうね。
Chandelier Exitと組み合わせる指標

Chandelier Exitは出口の線なので、向きの確認や、エントリーのタイミングは、別の指標に任せるのが基本です。上の表は、それぞれの役割の整理で、組み合わせた成績は測っていません。
移動平均線で向きを確かめる

移動平均線の向きと、Chandelier Exitの向きを見比べる使い方です。上の図は、EMA50を重ねた例です。2本の向きが同じかどうかを、目で確かめられます。移動平均線の使い方は、移動平均線の使い方・おすすめパラメーター設定で解説しています。

StochRSI・CCIでエントリーを測る
StockChartsの解説では、エントリーのタイミングはStochRSIやCCIで測り、Chandelier Exitは出口に使う、という分担が示されています。
SuperTrend・ADXとの関係
SuperTrendも、ATRを使ってトレンドの向きの線を引く指標で、作りがChandelier Exitに近い仲間です。ADXは、トレンドの強さを測る指標です。レンジ相場では向きが何度も切り替わるので、ADXで強さを確かめてから使う、という使い方が考えられます。ただし、これも組み合わせた成績は測っていません。


アドバイス入る合図は別の指標、出る場所はChandelier Exit、という分担が基本だよ。組み合わせの成績は測ってないんだ。
Chandelier Exitのメリット・デメリットと注意点

メリット
- 値動きの大きさに合わせて、線までの幅が変わります。
- 高値を更新すれば線も切り上がるので、ストップの位置を、ルールで機械的に決められます。
- 乗数という1つの数字で、線の遠さを調整できます。
デメリット
- レンジ相場では、上の図のように、向きが何度も切り替わります。
- 線に触れたあとに戻る例があります。1時間足の実測では、16〜35%でした。
- 乗数が大きいほど、線に触れるまでに、価格が高値から戻る幅も大きくなります。
使うときの注意
- 版によって、基準にする値と線の更新の仕方が違います。使うインジケーターの版を確かめてください。
- ATRの平滑の種類で、数字が少し変わる可能性があります。
- 足の途中で触れたら決済するか、終値で決めるかを、先にルールにします。
- この記事の実測は、スプレッドを含めていません。自分の通貨ペアと時間足で、確かめてから使ってください。
アドバイスレンジだと向きが何度も変わるのが弱点だよ。使う前に、自分のチャートで線の動きを見てね。
要点
・Chandelier Exitは、直近の最高値からATR×乗数だけ離して引く、出口の目安の線。StockChartsの初期値は期間22・乗数3
・ロング用の線=22本の最高値−3×ATR、ショート用の線=22本の最安値+3×ATR。版によって、基準にする値と線の更新の仕方が違う
・実測(3通貨ペア・2016〜2025年・1時間足)で、線に触れるまでの本数の中央値は、乗数2・3・4で7・16・25本
・触れたあとに高値を超えて戻ったのは16〜35%、止め値からATR1本分以上さらに下がったのは63〜73%
・ATR型と固定幅の中央値は近い(16本と19本)が、固定幅は値動きが大きい時期に5本以内で触れやすい(24%と14%)
・損益、スプレッド、期間22以外は測っていない。レンジ相場では向きが何度も切り替わる
Chandelier Exitのよくある質問
Chandelier Exitのおすすめ設定値は?
StockChartsの初期値は、期間22・乗数3.0です。この記事の実測では、乗数が大きいほど線に触れるまでの本数は長くなり(1時間足で7・16・25本)、どの乗数が良いかは、損益を測っていないため決められません。
Chandelier Exitはどの時間足で使うのが効果的?
この記事の範囲では、どの時間足が良いかは決められません。1時間足と4時間足で、線に触れるまでの本数の中央値は近い形でした(乗数2・3・4で7・16・25本と、7・14・24本)。自分の売買の長さに合わせて選んでください。
Chandelier Exitのレンジ相場での誤反応を減らすには?
乗数を大きくすると、線に触れにくくなります。1時間足で、始まりから5本以内に触れた割合は、乗数2・3・4で42%・17%・7%でした。ただし、触れるまでに価格が高値から戻る幅も大きくなります。ADXなどでトレンドの強さを確かめる方法もありますが、成績は測っていません。
Chandelier Exitと相性の良いインジケーターは?
移動平均線で向きを確かめ、StochRSIやCCIでエントリーを測る例があります。StockChartsは、StochRSIやCCIの併用を挙げています。ADXはトレンドの強さの確認に使えますが、組み合わせた成績は測っていません。
Chandelier Exitのラインを超えたらすぐ決済すべき?
すぐ決済すべきとも、待つべきとも、この記事では言えません。足の途中で触れたら決済するか、終値で決めるかは、先にルールにします。実測では、触れたあと22本以内に高値を超えて戻ったのは16〜35%、さらに下がったのは63〜73%でした(1時間足)。
Chandelier Exitと他のトレーリングストップの違いは?
固定幅のストップは幅が一定で、Chandelier ExitはATRで幅が変わります。1時間足・乗数3の実測で、触れるまでの中央値は近く(ATR型16本、固定幅19本)、固定幅は値動きが大きい時期に5本以内で触れやすくなりました(24%と14%)。
Chandelier Exitのまとめ
Chandelier Exitは、直近の最高値(ショートは最安値)からATR×乗数だけ離して引く、出口の目安の線です。StockChartsの初期値は期間22・乗数3で、版によって、基準にする値と線の更新の仕方が違います。3通貨ペア・2016〜2025年の実測では、乗数が大きいほど線に触れるまでの本数は長くなり、触れたあとに戻る例は少なくなりました。損益、スプレッド、期間22以外の設定は測っていません。この記事の数字は、売買の成績や将来を約束するものではありません。
⚠ リスクに関する注意事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。













