
クライマックスボトムとは|売りが出尽くす安値の形をティック数で数える

クライマックスボトムの定義
近い考え方は、リチャード・ワイコフの方法にある「セリングクライマックス」です。StockChartsのChartSchoolの解説(The Wyckoff Method: A Tutorial)は、セリングクライマックスを、値幅の広がりと売りの圧力がたいてい頂点に達する点と説明しています。大衆のあわてた売りが、底の近くで、大きな資金を持つプロに吸収されている、という見方です(英文の要旨を訳しました)。同じ解説では、このあとに、売りの圧力が大きく弱まったことで起きる反発(オートマチック・ラリー)が続くとされています。
この記事では、この考え方にならった形を、数えられる条件に直して「クライマックスボトム」と呼びます。ワイコフ法そのものの検証ではなく、下の4つの条件を機械で決めて、当てはまった足の、そのあとの値動きを測りました。
FXでは出来高の代わりにティック数を使う
FXには、株式のように取引所に集まる出来高がありません。そこで、足の中で価格が更新された回数(ティック数)を、取引の多さの代わりに使いました。ティック数は、Dukascopyの価格の更新回数で、FX市場全体の取引量ではありません。
クライマックスボトムの4つの条件
- 20本安値の更新: その足の安値が、直前20本の安値のうち最も低い値より低い。
- 値幅2倍: 高値と安値の差が、直前20本の平均の2倍以上。
- ティック2倍: ティック数が、直前20本の平均の2倍以上。
- 上半分: 終値が、高値と安値の中間以上。
4つ全部を満たした足を、この記事では「形の足」と書きます。図は、USD/JPYの2024年8月5日(日本時間9時始まり)の日足です。この足は、直前20本の最安値146.42円より低い141.68円まで下がり、値幅は直前20本の平均の2.4倍、ティック数は397,314で平均の2.2倍でした。終値は145.79円で、値幅の下から84%の位置です。この足の5本後の終値は、形の足の終値より0.84%高く、10本後は0.63%高くなりました。
アドバイスクライマックスボトムは、値幅・ティック数・終値の位置の3つで決めた形だよ。ティック数は出来高の代わりだね。
クライマックスボトムの件数|条件を足すと件数はどれだけ減るか

足の作り方と対象
Dukascopyのティックから作った1時間足を、日足(日本時間の9時区切り)と4時間足(日本時間の9時・13時・17時・21時・1時・5時の区切り)にまとめました。日曜の足は、直後の月曜の足に入れています。数える対象は、前に20本・後に20本の足がある足で、5通貨ペアの合計が、日足13,905本、4時間足84,169本、1時間足336,713本です。
条件を足したときの件数
20本安値を更新した足は、日足が1,447本、4時間足が8,772本、1時間足が34,601本でした。ここに値幅2倍を足すと、203本・1,944本・8,578本になり、ティック2倍を足すと、49本・738本・4,518本になります。終値が上半分の条件まで足した形の足は、日足23件、4時間足198件、1時間足1,219件で、1,000本あたりでは、1.7件・2.4件・3.6件です。
形の足が出た年と通貨ペア
日足の23件は、2019年が3件、2020年が6件、2022年が2件、2024年が4件、2025年が5件、2026年が3件で、2016〜2018年・2021年・2023年は0件でした。通貨ペアでは、AUD/JPYが9件、USD/JPYが7件、EUR/JPYが5件、EUR/USDとGBP/USDが1件ずつです。23件は16日に分かれていて、同じ日に複数の通貨ペアで出た日が5日あり、その5日で12件を占めます。4時間足の198件は、USD/JPYが41件、EUR/USDが51件、GBP/USDが36件、EUR/JPYが29件、AUD/JPYが41件でした。
アドバイス条件を足すと、日足は1,447本から23件まで減ったよ。1,000本あたりでは1.7件だね。
クライマックスボトムのあと|上がった割合と変化率を測った結果

上がっていた割合
形の足の終値と、5本後・10本後・20本後の終値を比べ、後の終値のほうが高かった件の割合を数えました。日足は、5本後が56.5%、10本後が73.9%、20本後が73.9%です(23件のうち13件・17件・17件)。4時間足は、57.1%・56.6%・56.1%(198件のうち113件・112件・111件)、1時間足は、49.6%・51.1%・50.8%(1,219件のうち605件・623件・619件)でした。
比べる相手は、同じ通貨ペアの同じ曜日(日足)か同じ時刻(4時間足・1時間足)の足から、同じ件数を選ぶ操作を4000回行い、5通貨ペアを合わせた割合の5〜95%をとった範囲です。範囲は、日足の5本後が34.8〜69.6%、10本後と20本後が39.1〜73.9%、4時間足が46.0〜58.1%、1時間足が48.5〜54.0%で、どれも50%を含みます。9つの実測値は、全て範囲の中でした。対象の全ての足で上がっていた割合も、日足が52.2〜53.2%、4時間足が51.7〜52.0%、1時間足が51.3〜51.7%と、50%を上回っています。
日足は、同じ日に複数の通貨ペアで出た足を別々に数えているので、実際の偶然のぶれは、この範囲より大きくなりえます。測った範囲では、形の足のあとに上がっていた割合が、無作為に選んだ足と違うとは言えませんでした。
変化率の中央値

形の足の終値から、5本後・10本後・20本後の終値までの変化率の中央値は、日足が0.64%・0.78%・0.79%、4時間足が0.08%・0.10%・0.07%でした。対象の全ての足の中央値は、日足が0.06%・0.11%・0.18%、4時間足が0.02%・0.03%・0.04%で、6つとも形の足のほうが大きくなりました。
無作為に選んだ場合の範囲は、日足の5本後が−0.37〜0.57%、10本後が−0.48〜0.82%、20本後が−0.60〜1.17%、4時間足の5本後が−0.03〜0.06%、10本後が−0.05〜0.11%、20本後が−0.08〜0.16%です。6つのうち、範囲の上にあったのは2つ(日足と4時間足の5本後)で、残る4つは範囲の中でした。日足の平均は、5本後が0.07%、10本後が0.62%、20本後が1.27%です。1時間足の中央値は、−0.002%・0.011%・0.007%で、範囲(−0.006〜0.014%、−0.005〜0.023%、−0.006〜0.034%)の中でした。
同じ形でも下がった例

図は、USD/JPYの2025年4月9日(日本時間9時始まり)の日足です。値幅は直前20本の平均の2.6倍、ティック数は459,093で平均の2.3倍、終値は値幅の下から80%の位置で、4つの条件を満たしました。この足の安値は143.99円で、直前20本の最安値144.55円を下回っています。5本後の終値は形の足より3.71%低く、10本後は2.85%低くなり、次の10本の安値は139.885円まで下がって、この足の安値を割りました。日足の23件のうち、10本後に上がっていなかったのは6件です。
下ヒゲが長い足だけに絞ると
形の足のうち、下ヒゲが実体の2倍以上の足だけに絞ると、日足は11件、4時間足は63件、1時間足は547件になります。上がっていた割合は、日足が63.6%・72.7%・81.8%、4時間足が55.6%・63.5%・68.3%、1時間足が49.2%・50.8%・49.2%です。範囲は、日足が27.3〜72.7%(5本後)と27.3〜81.8%(10・20本後)、4時間足が41.3〜61.9%、1時間足が47.5〜55.2%で、4時間足の10本後と20本後の2つだけが範囲の上でした。下ヒゲの条件は、結果を見たあとに足した5つ目の条件です。比べる回数が増えた分、偶然で範囲の外に出ることもあります。
アドバイス10本後に上がっていたのは、日足で17件(73.9%)、4時間足で112件(56.6%)だったよ。範囲はどちらも50%を含んでいるね。
クライマックスボトムの安値|10本以内に割られた割合と測っていないこと

安値を割られなかった割合
次に、その足の安値を、次の10本の足がどれも下回らなかった割合を数えました。対象の全ての足では、日足が21.9%、4時間足が20.3%、1時間足が20.3%です。20本安値を更新しただけの足では、21.6%・20.8%・22.3%で、値幅2倍を足すと31.0%・27.2%・28.0%、ティック2倍を足すと32.7%・32.2%・31.3%でした。
上半分の条件を足したとき
終値が上半分の条件を足した形の足では、日足が60.9%(23件のうち14件)、4時間足が66.7%(198件のうち132件)、1時間足が62.1%(1,219件のうち757件)に上がりました。ティック2倍の条件を外し、20本安値の更新・値幅2倍・上半分だけにしても、日足が62.5%(64件)、4時間足が62.4%(436件)、1時間足が59.6%(2,052件)で、ほぼ同じです。割合が大きく上がったのは、終値が上半分の条件を足したときでした。
測っていないことと関連する記事
この記事で測ったのは、形の足の件数と、そのあとの終値の向き・変化率・安値を割られた割合です。売買の損益、損切りや利確の幅、勝率、ほかの指標との組み合わせは測っていません。測った範囲では、形の足のあとに上がっていた割合は、無作為に選んだ足の範囲に入り、一方で、その足の安値は、次の10本で割られにくくなっていました。
ティック数が急に増える足は、ボリュームスパイクの記事で、値幅とそのあとの向きを測っています。安値や高値を一度抜けてから戻る形は、フォールスブレイクアウトの記事とキーリバーサルの記事にまとめています。
アドバイス次の10本で安値を割られなかったのは、日足で14件、4時間足で132件だったよ。安値を更新しただけの足より多いね。
要点
・クライマックスボトムは、ワイコフ法のセリングクライマックスにならい、この記事で数えられる形に直したもの。20本安値の更新・値幅2倍・ティック2倍・終値が上半分の4つ
・5通貨ペアで、対象の足13,905本(日足)のうち23件、84,169本(4時間足)のうち198件、336,713本(1時間足)のうち1,219件が当てはまった
・10本後に上がっていた割合は、日足73.9%・4時間足56.6%・1時間足51.1%。範囲は39.1〜73.9%・46.0〜58.1%・49.1〜53.9%で、どれも50%を含み、実測値は範囲の中
・変化率の中央値は、全ての足より6つとも大きい。ただし無作為な範囲の上は2つ(日足と4時間足の5本後)で、4つは範囲の中
・次の10本で安値を割られなかった割合は、日足60.9%・4時間足66.7%・1時間足62.1%で、20本安値を更新しただけの足(21.6%・20.8%・22.3%)より高い
・測っていないのは、売買の損益、勝率、損切りの幅、ほかの指標との組み合わせ
クライマックスボトムのよくある質問
クライマックスボトムとは何ですか?
下落のあとの安値で、値幅が大きく取引も多い足が付いた形の呼び名です。この記事では、ワイコフ法のセリングクライマックスにならい、20本安値の更新・値幅2倍・ティック2倍・終値が上半分の4つで数えました。
出来高が見えないFXでは、どう判断しますか?
足の中の価格の更新回数(ティック数)で代わりにしました。Dukascopyのティックから作った足の値で、FX市場全体の取引量ではありません。
クライマックスボトムのあとは上がりますか?
上がるとは言えませんでした。10本後に上がっていたのは、日足が73.9%、4時間足が56.6%、1時間足が51.1%で、無作為に選んだ足の範囲に入りました。
クライマックスボトムは、どの時間足で測りましたか?
日足・4時間足・1時間足で測りました。形の足の数は、日足が23件、4時間足が198件、1時間足が1,219件です。どの時間足が向くかは、測っていません。
クライマックスボトムの安値は、その後に割られませんか?
割られる場合もあります。次の10本で安値を割られなかったのは、日足で60.9%、4時間足で66.7%、1時間足で62.1%で、残りの足は、10本のうちに安値を割りました。
クライマックスボトムのまとめ
クライマックスボトムは、ワイコフ法のセリングクライマックスにならい、20本安値の更新・値幅2倍・ティック2倍・終値が上半分の4つの条件で数えた形です。Dukascopy のティックから作った5通貨ペア(2016年1月〜2026年10月)では、日足で23件、4時間足で198件、1時間足で1,219件が当てはまりました。
10本後に上がっていたのは、日足の73.9%、4時間足の56.6%、1時間足の51.1%で、いずれも無作為に選んだ場合の範囲に入りました。次の10本で安値を割られなかった割合は、60.9%・66.7%・62.1%で、安値を更新しただけの足より高くなりました。測っていない売買の損益や、ほかの指標との組み合わせは、自分のデータで確かめてから使ってください。
この記事はFXの手法の情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。
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