
裁量トレードとは|自分で判断して注文する取引

裁量トレードの意味
裁量トレードは、いつ買うか、いつ売るか、いつ決済するかを、トレーダー自身が判断して注文する取引です。決める基準は人によって違い、チャートの形を見る人もいれば、経済指標の結果を見る人もいます。注文は、取引画面のボタンを押して出します。
これに対して、EA(Expert Advisor)は、MT4・MT5のチャートに付けて動かすプログラムです。MetaQuotes(MT4・MT5を作っている会社)の公式ヘルプは、EAを、取引を全て自動にできる機械的な取引システムとして説明しています。決めた条件をプログラムに書いておくと、条件を満たしたときに、人の手を介さずに注文が出ます。
裁量トレードで使う主な分析
裁量トレードでは、次のような材料を組み合わせて判断する人が多くいます。どれを使うかも人が決めます。
- テクニカル分析:移動平均線、RSI、ストキャスティクスなど、チャートと指標から判断します。
- ファンダメンタル分析:雇用統計などの経済指標、政策金利、ニュースから判断します。
- プライスアクション:ローソク足の動きや、サポート・レジスタンスの位置から判断します。
この記事では、分析の良し悪しは扱いません。どの分析で決めたとしても、決めてから注文が約定するまでには時間がかかります。その時間のあいだに値がどれだけ動くかを、次の節から測っています。
アドバイス裁量トレードは、自分で判断して注文する取引だよ。判断してから注文が通るまでの時間を、あとで測っているよ。
裁量トレードとEA(自動売買)の違い|注文を出す側と動く条件

EAが動くための条件
EAは、チャートに付けただけでは注文を出しません。MetaQuotesの公式ヘルプ(MQL5のOnTick)には、EAの中のOnTickという処理が、EAを付けたチャートの通貨ペアで新しい気配値が届いたときに呼ばれると書かれています。つまり、EAが判断を始める合図は、新しい気配値が届くことです。
同じ公式ヘルプには、自動売買のボタンを無効にしても、EAは止まらないとも書かれています。止まるのは、EAからの注文の送信だけです。MT4・MT5を終了すると、EAも止まります。表の4つのうち、どれか1つでも外れると、注文は出ません。
EAの種類
EAは、注文を出す条件の作りで、おおまかに分けられます。
- トレンドフォロー型:値が一方向に動いたあとに、同じ向きで注文を出す条件のEAです。
- 逆張り型:値が上がったあとに売る、下がったあとに買うなど、動きと逆向きに注文を出す条件のEAです。
- スキャルピング型:数pipsの値幅を狙い、短い時間で何度も売買する条件のEAです。
- マーチンゲール型:負けたあとにロットを増やして次の注文を出す条件のEAです。損失が続くと、ロットが大きくなります。
どの型でも、EAを選ぶときは、過去のデータで条件を試した結果を見ます。試し方はMT4のバックテストの記事に、見る指標は最大ドローダウンやプロフィットファクターの記事にまとめています。
アドバイスEAが判断を始める合図は、新しい気配値が届くことだよ。ボタンを無効にすると、注文だけが止まるよ。
裁量トレードの発注の遅れ|1〜30秒で約定値がずれる幅を測った結果

測り方
人が判断してから注文を出すまでには、数秒かかります。その遅れで約定値がどれだけ変わるかを、Dukascopy のティックから作った値で測りました。通貨は、USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD・EUR/JPY・AUD/JPYの5つで、期間は2016年1月3日から2026年10月28日までです。
合図は、平日の毎時0分0秒(UTCでも日本時間でも毎時0分)に出たと置きました。合図の直前の60秒以内に気配値がない時刻は除いています。合図の数は、USD/JPYが66,271回、EUR/USDが66,425回、GBP/USDが66,417回、EUR/JPYが66,425回、AUD/JPYが66,453回で、合計は331,991回です。
注文は、合図の0秒後(遅れなし)を基準に、1秒・3秒・5秒・10秒・30秒後の約定値と比べました。買いはask(買うときの値)、売りはbid(売るときの値)で、その時刻までの最後の気配値を使っています。「ずれ」は、基準との差の大きさ(pips)で、有利か不利かは区別していません。1件は、1回の合図に買いと売りを1注文ずつ出したものとして数え、合計は663,982件です。pipsは、円が入る通貨で0.01、それ以外で0.0001としました。
遅れとずれの大きさ
表の「中央値」は、全件のずれを小さい順に並べたときの真ん中の値です。「10回に1回の幅」は、10件に1件がそれ以上ずれた値です。1秒遅れると、中央値は0.2pipsで、10回に1回は0.8pips以上でした。3秒では0.3pipsと1.3pips、10秒では0.5pipsと2.0pips、30秒では0.8pipsと2.9pipsです。遅れが長いほど、ずれは大きくなりました。
ずれの向きは、ほぼ半々でした。3秒では、基準より不利な向きが43.8%、有利な向きが42.0%で、残りは同じ値です。30秒でも、不利が47.2%、有利が47.0%でした。この測定は、遅れるとずれが大きくなることを示していて、遅れると不利になるとは言っていません。ただし、不利な向きにずれた分は、そのまま注文のコストになります。
大きなずれが起きる割合

ずれが一定のpips以上になった割合を、3秒遅れと30秒遅れで比べました。3秒遅れでは、1pips以上が17.4%、2pips以上が4.9%、5pips以上が0.66%、10pips以上が0.21%です。30秒遅れでは、1pips以上が44.7%、2pips以上が19.5%、5pips以上が2.8%、10pips以上が0.52%になりました。100件に1件のずれは、3秒で4.0pips、30秒で7.5pipsです。
通貨ペアごとの違い

10回に1回のずれは、3秒遅れでは、EUR/USDが1.0pips、AUD/JPYが1.2pips、USD/JPYが1.3pips、GBP/USDが1.5pips、EUR/JPYが1.6pipsでした。30秒遅れでは、EUR/USDが2.2pips、AUD/JPYが2.7pips、USD/JPYが2.9pips、GBP/USDが3.1pips、EUR/JPYが3.3pipsで、並び順は同じです。合図の時刻のスプレッド(買値と売値の差)の中央値は、EUR/USDが0.3pips、USD/JPYが0.4pips、AUD/JPYが0.7pips、EUR/JPYが0.8pips、GBP/USDが0.9pipsでした。
時間帯ごとの違い

合図の時刻を日本時間の0時から23時に分けると、3秒遅れの10回に1回のずれが最も大きいのは、7時の2.4pips、次が16時と23時の2.2pipsでした。最も小さいのは13時の0.7pipsです。スプレッドの中央値も、時刻で違いました。6時が2.0pips、7時が2.8pips、8時が1.1pipsで、それ以外の時刻は0.5〜0.7pips前後です。市場が開く直後や、1日の切り替わりの時間は、ずれもスプレッドも大きくなりました。
この測定は、毎時0分に、買いと売りを1件ずつ出したものです。実際の裁量トレードは、判断した場面で注文を出すので、遅れの長さも時刻も人によって違います。
アドバイス3秒の遅れで、ずれの中央値は0.3pipsだったよ。10回に1回は1.3pips以上で、遅れが長いほどずれは大きかったね。
裁量トレードと雇用統計|発表直後の1〜30秒を測った結果

雇用統計の直後のずれ
米国の雇用統計は、為替が大きく動く指標として知られています。発表の時刻を合図として、同じ測り方で遅れによるずれを測りました。対象は2016年1月から2025年12月までの119回で、時刻は、米国が夏時間の期間は日本時間の21時30分、それ以外は22時30分(UTCの12時30分と13時30分)です。5通貨で1,190件(119回×5通貨×買いと売り)です。
比べる相手には、同じ週の火曜・水曜・木曜の同じ時刻を使いました。これは3,570件(119回×3日×5通貨×買いと売り)で、「平常時」と呼びます。1秒遅れでは、発表直後の中央値が0.7pips、10回に1回の幅が4.3pipsで、平常時は0.2pipsと1.1pipsです。3秒遅れでは、発表直後が9.7pipsと30.9pips、平常時は0.5pipsと2.9pipsでした。
10秒遅れでは12.0pipsと38.4pips、30秒遅れでは12.6pipsと41.8pipsです。平常時の10秒は0.8pipsと4.1pips、30秒は1.3pipsと5.6pipsでした。5pips以上ずれた割合は、3秒遅れで発表直後が67.9%、平常時が5.3%、30秒遅れで発表直後が76.7%、平常時が12.2%です。
通貨ペアで差がありました。3秒遅れの中央値を大きい順に並べると、USD/JPYの18.5pips、GBP/USDの16.0pips、EUR/USDの14.3pips、EUR/JPYの4.8pips、AUD/JPYの4.3pipsです。ドルが入る通貨で大きく、円とドル以外の組み合わせで小さくなりました。
発表直後のスプレッド

スプレッドの中央値は、発表の時刻ちょうど(0秒)で3.8pipsでした。平常時の0.8pipsの約5倍です。時間がたつと狭まり、3秒後が2.7pips、10秒後が2.1pips、30秒後が1.3pipsになりました。平常時は0.6〜0.8pipsのままです。発表直後は、値が動く幅も、買値と売値の差も、同時に大きくなっています。
発表時刻の気配値の数が少ないと、値が飛んだように見えるおそれがあるため、確認しました。気配値の数が平常時の2倍以上あった495組(119回×5通貨=595組のうち。990件)に絞ると、3秒遅れの中央値は9.4pips、10回に1回の幅は29.7pipsで、30秒遅れでは12.0pipsと36.8pipsでした。全595組で、気配値の数は平常時の1.16倍以上です。絞っても、ずれの大きさは変わりませんでした。
アドバイス雇用統計の直後は、3秒遅れで中央値が9.7pipsだったよ。平常時の0.5pipsと比べると、ずれが大きいね。
裁量トレードで注文できる時間|気配値のある時間は週119時間

気配値が届かない時間
為替は24時間動くと言われますが、土日は気配値が届きません。USD/JPYで、1時間ごとに気配値が1つでもあった時間を数えると、1週間で約119時間でした。日本時間で、月曜の朝6〜7時ごろに始まり、土曜の朝6時ごろに終わります。
この時間の外では、裁量でもEAでも注文は通りません。EAは、新しい気配値が届くたびに判断するため、気配値がない時間は動きません。EAが24時間動くと言われるのは、気配値が届いている時間に、MT4・MT5が起動していて、自動売買が有効であるときの話です。
見られる時間と動く時間
裁量トレードは、トレーダーが画面を見ている時間にしか判断できません。気配値のある週119時間のうち、何時間を見られるかは、生活によって違います。EAは、端末が動いている限り、その時間の判断を続けます。ただし、前の節のとおり、発表直後など値が大きく動く場面では、どちらの注文もずれます。EAも、気配値が届いてから約定するまでに、わずかな時間はかかります。
アドバイス気配値が届くのは、1週間で約119時間だよ。この時間の外では、裁量もEAも注文できないよ。
裁量トレードとEAの選び方|比べ方・向く人・組み合わせ

違いの整理
表の「発注までの遅れ」は、この記事の測定の置き方です。裁量は信号の1〜30秒後、EAは0秒後に注文を出したと置きました。実際のEAにも、気配値を受けてから約定するまでの時間はあるため、0秒は理想値です。どちらが利益を出しやすいかは、この記事では測っていません。測ったのは、遅れの長さによるずれの大きさです。
判断の基準については、EAは条件をプログラムに書くので、同じ場面では同じ判断になります。裁量は基準が人の中にあるため、同じ場面でも、毎回同じ判断になるとは限りません。損切りの幅や、1回の取引で負ける金額の上限は、裁量の場合、取引の前に文章にしておくと、あとで見直せます。考え方はリスクリワード比率の記事にまとめています。
裁量トレードのメリットとデメリット
- メリット:ニュースや予定外の出来事を見て、注文を見送ったり、逆向きに注文したりできます。
- メリット:スイングトレードやブレイクアウトなど、自分で選んだ方法を、プログラムを書かずに試せます。
- デメリット:相場を見る時間が要ります。短い時間足で取引するほど、画面を見ている時間が長くなります。
- デメリット:判断してから注文するまでの遅れがあり、この記事の測定のとおり、遅れるほどずれは大きくなります。注文を増やしすぎる癖はポジポジ病の記事で扱っています。
EAのメリットとデメリット
- メリット:決めた条件どおりに注文が出ます。気配値が届いている時間は、端末が動いている限り、判断が続きます。
- メリット:過去のデータで条件を試した結果を、取引の前に見られます。
- デメリット:条件に書いていない出来事には、対応しません。雇用統計のような場面でも、条件どおりに注文が出ます。
- デメリット:端末を動かし続ける場所と、EAの選び方・設定を知る手間が要ります。過去の結果が、これからも続くとは限りません。
向いている人の考え方
どちらが向くかは、時間とやりたいことで決まります。相場を見る時間が取れ、自分の判断で売買を決めたい人は、裁量トレードから始められます。相場を見る時間が限られ、売買の条件を文章にできる人は、EAを選択肢に入れられます。どちらも、損失が出る可能性があります。
EAと裁量の組み合わせ
両方を組み合わせる使い方もあります。たとえば、エントリーはEAに任せ、決済は自分で決める方法です。EAがどんな条件で注文を出すかを理解していないと、いつ手を出すべきかが分からないため、EAの仕組みを先に調べる必要があります。この組み合わせの結果は、この記事では測っていません。
EAを選ぶときに見るページ
シストレ.COMでは、EAランキングで、フォワードテスト(実際の相場で動かして記録する検証)の結果を公開しています。無料版を使うときは、無料EAの口座縛りの記事で条件を確認してください。EAを使うときの注意はダマシの記事にもまとめています。
アドバイスどちらが利益を出しやすいかは、測っていないよ。測ったのは、遅れの長さによるずれの大きさだけだよ。
要点
・裁量トレードは、自分で判断して注文する取引。EAは、MT4・MT5に付けたプログラムが、新しい気配値が届くたびに条件を確かめて注文を出す
・5通貨の毎時の合図331,991回(2016年1月〜2026年10月)で、3秒遅れると、ずれの中央値は0.3pips、10回に1回は1.3pips以上。30秒遅れでは0.8pipsと2.9pips
・雇用統計の直後は、3秒遅れの中央値が9.7pips、10回に1回の幅が30.9pips。平常時は0.5pipsと2.9pips
・ずれの向きはほぼ半々。有利にも不利にもなる
・気配値が届くのは、USD/JPYで1週間に約119時間
・測っていないのは、裁量とEAの損益の比較、勝率、組み合わせの結果
裁量トレードのよくある質問
裁量トレードとEAの一番の違いは何ですか?
注文を出す判断を、人がするかプログラムがするかです。EAは、チャートに付けたプログラムが条件を確かめて注文を出します。
裁量とEAでは、どちらが利益を出しやすいですか?
測っていないので、言えません。この記事で測ったのは、注文が遅れたときの約定値のずれです。損益の比較は、別の検証が要ります。
注文が3秒遅れると、約定値はどれくらい変わりますか?
中央値で0.3pipsです。5通貨の毎時の合図で測った結果で、10件に1件は1.3pips以上ずれました。有利な向きにずれることもあります。
EAは、パソコンを閉じても動きますか?
端末が止まると、EAも止まります。MetaQuotesの公式ヘルプに、取引プラットフォームを終了するとEAが止まる方法の1つとして挙がっています。自動売買を有効にし、EAを付けたまま、端末を動かし続ける必要があります。
雇用統計の発表直後に、成行で注文しても大丈夫ですか?
可否は、この記事では判断していません。測ったのは、成行注文の約定値のずれだけです。発表直後は、3秒遅れの10回に1回の幅が30.9pipsと、平常時の2.9pipsより大きくなりました。
初心者は、どちらから始めればよいですか?
相場を見られる時間で決められます。見る時間が取れるなら裁量、限られるなら、条件を文章にできるかを確かめてからEAを検討する、という分け方があります。
裁量トレードのまとめ
裁量トレードは、自分で判断して注文する取引で、EAは、決めた条件どおりにプログラムが注文を出す取引です。Dukascopy のティックから作った5通貨の値(2016年1月〜2026年10月、合図331,991回)では、注文が3秒遅れると、約定値のずれの中央値は0.3pips、10回に1回は1.3pips以上でした。30秒遅れでは0.8pipsと2.9pipsになり、遅れが長いほどずれは大きくなりました。
雇用統計の直後は、3秒遅れの中央値が9.7pipsで、平常時の0.5pipsを大きく上回りました。スプレッドも、発表の時刻ちょうどで3.8pipsに広がっています。測っていない、裁量とEAの損益の比較や組み合わせの結果は、自分のデータで確かめてから使ってください。
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