
専業トレーダーとは|兼業との違いと、メリット・デメリット

専業トレーダーとは|意味と呼び方
専業トレーダーとは、勤め先を持たず、FXや株式などの売買による損益を主な収入にして暮らす人の呼び方です。資格や届け出は必要なく、「専業」と名乗る基準も決まっていません。収入の中心が売買損益かどうかで分ける、という程度の言葉と考えてください。
専業と兼業の違い|収入の入口と手続きが変わる
兼業は、会社の給与がある状態でFXを行う形です。給与という毎月ほぼ決まった収入が土台にあるので、FXの損益がマイナスの月があっても、生活費は崩れにくくなります。専業は、その土台がなくなります。さらに、勤め先の厚生年金・健康保険から外れる場合は、国民年金・国民健康保険に自分で入って納めることになります(詳しくは後の章)。
メリットとデメリット|自由度と、収入のぶれ
メリットは、時間の自由度が高いこと、勤務先の人間関係や通勤から離れられること、損益が給与のような枠に縛られないことです。デメリットは、収入が月ごとに大きくぶれること、年金・医療保険の手続きと負担を自分で持つこと、収入の証明が給与明細ではなく確定申告書や取引報告書になることです。「自由」の裏側にあるのは、収入のぶれを自分の貯えで受け止める責任です。次の章から、このぶれの大きさを数字で見ていきます。
アドバイス専業は「会社が毎月払ってくれる部分」がなくなる働き方だよ。その分を自分の貯えで支えられるかが出発点だね。
専業トレーダーに必要な資金と生活費|月の引き出し額から逆算する

必要資金の逆算|月の引き出し額×12÷年利
「いくらあれば専業になれるか」は、決まった金額がありません。目安を出すなら、毎月引き出したい額を12倍して年間の必要額を出し、それを「資金に対する年間の利益率(年利)」で割ります。たとえば月30万円なら年間360万円で、年利10%の想定なら3,600万円、年利5%なら7,200万円、年利20%なら1,800万円です。月20万円・40万円の場合は上の表のとおりです。
この計算には注意が2つあります。1つは、税金や社会保険料を引く前の数字であることです。もう1つは、年利は毎年同じにならないことです。年利を高く置くほど必要資金は小さく見えますが、その年利が続く保証はありません。次の章の自社計測のとおり、プラスの年とマイナスの年が入れ替わります。
生活防衛資金|取引資金とは別に置く

取引に使う資金とは別に、生活費を数か月から1年分以上、売買から切り離して置いておく考え方です。取引資金から生活費を出すと、損失の月に資金が減り、さらにロットを下げざるをえなくなります。月30万円の生活費なら、12か月分は360万円です。何か月分を備えるかは、次の章で見る「マイナスが続く長さ」を参考に決めます。
生活費には、家賃や食費のほかに、国民年金(月17,920円・令和8年度)、国民健康保険、住民税などが入ります。国民年金以外の金額は、お住まいの市区町村や前年の所得で変わるため、窓口で確かめてください。ロットの考え方は1ロットとはで説明しています。
アドバイス年利が高い想定ほど必要資金は小さく見えるよ。でも、その年利が続く保証はないんだ。
専業トレーダーの収入は月ごとにどれだけぶれるか|自社計測

計測の条件
シストレ.COM編集部が、自社運用のMT4/MT5環境で蓄積したtickデータ(Dukascopy)から1時間足を作り、USD/JPYとAUD/JPYの2通貨ペア、2016年1月〜2025年12月の120か月で計測しました。手法は、計測の前に1つだけ決めたもので、20本EMAが50本EMAを上抜けたら買い・下抜けたら売りに入れ替える(ドテン)単純なルールです。売買は次の足の始値で行い、スプレッドは1時間ごとの実測平均値を、入りと出の平均で1取引ごとに差し引いています。ロットは0.1(1万通貨)で、円建ての損益は1pips=100円で換算しました。スワップ、約定のずれ、手数料は含みません。起動直後の500本は除いたため、最初の1か月は取引がありません。以下の数字は、この条件の中での結果です。
120か月の結果|プラス68か月・マイナス51か月
| 項目 | 結果(0.1ロット) |
|---|---|
| 取引数(10年・2通貨ペア) | 2,252回 |
| 累計損益(スプレッド差引前) | 1,033,700円 |
| 累計損益(スプレッド差引後) | 856,948円 |
| 月の平均損益 | 7,141円 |
| 月の損益の中央値 | 4,679円 |
| 月の損益のぶれ(標準偏差) | 44,314円 |
| 最大の月・最小の月 | +129,866円・−114,948円 |
| プラスの月・マイナスの月 | 68か月・51か月(損益ゼロ1か月) |
計測条件:USD/JPY・AUD/JPYの2通貨ペア合計、2016年1月〜2025年12月、1時間足、20・50EMAクロスのドテン売買、0.1ロット、スプレッド差引後(特記のない限り)。シストレ.COM自社計測です。累計では約85.7万円のプラスですが、月の平均は7,141円に対し、標準偏差は44,314円と約6倍です。つまり、平均より、ぶれのほうがずっと大きい収入でした。120か月のうち51か月、およそ4割強の月がマイナスでした。
マイナスの月は最長5か月続いた

マイナスの月は、1か月で終わることが22回と最も多く、2か月続いたのが7回、3か月が2回でした。最長は5か月連続で、4か月連続も1回ありました。生活費を毎月引き出す前提だと、この5か月は収入がないまま生活費だけが出ていく期間です。生活防衛資金を何か月分にするかは、この長さを下回らないことが最低ラインになります。ただし、この長さは計測した10年の最長で、将来それより短いとは限りません。
年ごとの損益|プラスの年もマイナスの年もあった

10年のうち、マイナスの年は2016年(−6.7万円)と2019年(−7.7万円)の2回でした。最大の年は2020年の+22.3万円、それ以外の7年は+6.0万円から+15.2万円です。0.1ロットでは、年間の最大でも約22万円で、生活費をまかなう額ではありません。専業で生活費を出すには、ロットを大きくする必要があります。その影響は、次の章で見ます。
どの12か月を切り取るかで結果が変わる

同じ手法でも、どの12か月を切り取るかで結果が変わります。120か月から作れる109通りの12か月で見ると、最大は+35.5万円、最小は−16.7万円で、28.4%の12か月は合計がマイナスでした。専業になった最初の1年が、たまたまマイナスの12か月に当たる可能性は、小さくありません。
累積損益と最大の落ち込み

上段の累積損益は、10年で約85.7万円まで伸びました。しかし下段のとおり、途中で高値から最大22.5万円(224,911円)落ち込む局面がありました。高値を更新できないまま過ぎた期間は、最長で16か月です。累計がプラスでも、その途中の1年以上は、資金がへこんだまま待つ期間だったことになります。
アドバイス平均が7,141円の月でも、ぶれは44,314円もあったよ。「月いくら」より「どれだけぶれるか」を見てね。
専業トレーダーの必要資金は最大の落ち込みで決まる|月30万円に合わせた場合

月30万円を引き出し続けた残高の動き
先の計測の手法で、月の平均損益が30万円になるようロットを後から決めると、0.1ロットの42.0倍、つまり4.2ロットです。毎月30万円を引き出し続けたとき、初期資金からの増減を描いたのが上の図です。最も下がったのは2020年ごろで、初期資金より約1,356万円少なくなりました。つまり、この10年を同じ条件でたどるには、最低でも約1,356万円の資金がないと、途中で残高がゼロを割ります。
この金額は、後から平均で倍率を決めた事後の計算で、実際に専業を始める時点では「どの倍率なら月30万円になるか」はわかりません。また、ここでは複利や税金・保険料は考えておらず、資金に余裕を持たせるほど、実際の必要資金は大きくなります。
ロットを上げると、ぶれも同じ倍率で増える

収入を42.0倍にするには、損失も同じ倍率で増えます。最悪の月は−114,948円から約−482.9万円に、最悪の12か月は−167,226円から約−702.5万円に、最大の落ち込みは224,911円から約944.8万円になります。月30万円の引き出しを目標にすると、数百万円単位のマイナスの月が起こりうる、ということです。ロスカットやポジションの管理も、この規模で考える必要があります。
この計測でいえないこと
この計測は、単純な1つの手法・2つの通貨ペア・10年だけの結果です。ほかの手法や通貨ペア、裁量の売買が同じぶれになるとは限りませんし、将来の成績を示すものでもありません。この記事が示したいのは、「どの手法でも収入は一定ではなく、ぶれの大きさを知らずに専業になるのは危うい」という点です。実際の取引では、スワップ、約定のずれ、スプレッドの拡大も加わります。
アドバイス収入を増やそうとロットを上げると、落ち込みも同じ倍率で大きくなるよ。先に「どこまで耐えられるか」を決めようね。
専業トレーダーの税金と社会保険|国税庁と日本年金機構で確認できた範囲

FXの税金|国内の登録業者は申告分離課税
国税庁のタックスアンサー No.1521によると、金融商品取引法上の「市場デリバティブ取引」または「店頭デリバティブ取引」にあたる取引で、第一種金融商品取引業者や登録金融機関を相手方とするものは、差金等決済による損益が「先物取引に係る雑所得等」になり、申告分離課税の対象です。税率は、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税(令和29年まで・2.1%)と案内されています。令和9年1月1日以後は、復興特別所得税が1.1%に下がり、あわせて防衛特別所得税(1%相当)がかかるとされています。
損失が出た年は、No.1522のとおり、一定の要件のもとで、引ききれない損失を翌年以後3年間にわたり繰り越せます。繰り越した損失は、その年の「先物取引に係る雑所得等」の金額を限度に控除でき、ほかの所得との通算はできません。国内の登録業者以外との取引の扱いは、本記事では確認していません。国税庁の案内か税務署で確かめてください。
年金と医療保険|勤め先がなくなると入り先が変わる

日本年金機構の国民年金保険料のページによると、令和8年度の国民年金保険料は月17,920円です。12か月分は215,040円です。国民健康保険の保険料は市区町村が決めるもので、所得などに応じて変わり、自治体ごとに金額が違います。そのため、本記事では金額を示しません。お住まいの市区町村の案内で確認してください。
確定申告が必要かどうか
FXの損益を申告する必要があるかどうかは、給与の有無、利益の額、ほかの所得によって変わります。本記事では、申告が不要になる金額の線などは公的資料で確認できていないため、記載しません。損失の繰越控除には「一定の要件」があり、その詳細は国税庁のNo.1522が参照する案内(No.1523)に書かれています。本記事では内容を確認していないため、申告の要否や手続きは、国税庁の案内か税務署で確かめてください。
アドバイス税金と保険料は、損益と関係なく出ていくものがあるよ。国保は自治体で違うから、窓口で先に聞いておこうね。
専業トレーダーのやめどき|撤退の条件を先に決める

やめどきは、数字と日付で書いておく
損失が続くと、「次で取り戻せる」と考えてロットを上げやすくなります。そうならないよう、やめる条件は、取引を始める前に書いておきます。上の表のように、資金の減り方、連続マイナス月の長さ、生活防衛資金の残り、12か月の通算、税・保険を引いた手取りを、それぞれ数字で決めます。何か月・いくらにするかは、生活費やこれまでの成績によって変わります。
専業になる前に確かめる5つ

専業になる前には、生活防衛資金、収入の記録、最悪の月への備え、税と保険の手続き、そしてやめる条件と戻る期限を確かめます。特に「収入の記録」は、数年分の月次損益を付けておくと、自分の成績のぶれの幅がわかります。計測のように平均より標準偏差のほうが大きい場合、平均だけを見て決めるのは危険です。
兼業で続けるという選択と、収入源を増やす考え方
給与があるうちは、損失の月があっても生活が崩れません。専業を考える前に、兼業のまま数年分の記録を取り、ぶれの幅と最長のマイナスの長さを知っておくことが、現実的な準備になります。収入源を増やす手段としては、EAによる自動売買もありますが、EAの成績にも月ごとのぶれと連続マイナスがあります。EAの種類や選び方はFX自動売買(EA)の解説で説明しています。
アドバイスやめる条件は、負けている最中には決められないよ。元気なうちに紙に書いておこうね。
要点
・専業トレーダーは、売買損益を生活費のもとにする人の呼び方で、法令上の定義は確認できていません。給与という土台がなくなり、年金・医療保険も自分で納めます。
・自社計測(20・50EMAクロス・0.1ロット・2016〜2025年)では、120か月のうち51か月がマイナスで、最長5か月続きました。月の平均7,141円に対し、ぶれは44,314円です。
・月30万円に合わせた42.0倍(4.2ロット)では、最大の落ち込みが約944.8万円、事後計算の最低資金は約1,356万円でした。
・国内の登録業者のFXは申告分離課税で、損失は翌年以後3年繰り越せます。国民年金は令和8年度で月17,920円です。
・やめる条件と戻る期限は、取引を始める前に数字と日付で決めておきます。
専業トレーダーのよくある質問
専業トレーダーに必要な資金はいくらですか?
決まった金額はなく、引き出したい額と年利から逆算します。月30万円を引き出す場合、年利10%の想定で3,600万円、年利5%で7,200万円が目安です(税・保険の前)。自社計測では、月30万円に合わせた42.0倍で、事後計算の最低資金は約1,356万円でした。
専業トレーダーの収入は安定しますか?
月ごとの収入は安定しませんでした。自社計測(20・50EMAクロス・0.1ロット・2016〜2025年)では、120か月のうち51か月がマイナスで、最長5か月続きました。12か月の合計でも、28.4%がマイナスでした。
兼業から専業に移るタイミングは?
日付ではなく、事前に決めた条件を満たしたときです。生活防衛資金を決めた月数分用意できているか、数年分の月次記録で最悪の月と連続マイナス月に耐えられるか、やめる条件と戻る期限を書いてあるかを確かめます。
専業トレーダーの税金はどうなりますか?
国内の登録業者でのFXは、申告分離課税の対象です。国税庁によると、所得税15%、住民税5%、復興特別所得税(2.1%)で、損失は一定の要件のもとで翌年以後3年繰り越せます。令和9年1月1日以後は、復興特別所得税が1.1%に下がり、防衛特別所得税(1%相当)が併せてかかるとされています。
専業トレーダーの年金と健康保険はどうなりますか?
勤め先がなくなる場合は、国民年金と国民健康保険に自分で入るのが一般的です。国民年金は令和8年度で月17,920円(年215,040円)です。国民健康保険は市区町村が決め、金額は自治体ごとに違うため、窓口で確認してください。
専業トレーダーの成功事例は載せていないのですか?
個人の経歴や収入の事例は載せていません。第三者が確かめにくい話は、読み手の判断を誤らせるおそれがあるためです。代わりに、自社のティックデータで、20・50EMAクロスの120か月分の月次損益を公開しました。
専業トレーダーのまとめ
専業トレーダーは、売買損益を生活費のもとにする人の呼び方で、給与という土台がなくなり、年金や医療保険も自分で納めることになります。自社計測では、単純な20・50EMAクロスの0.1ロットで、120か月のうち51か月がマイナス、最長5か月連続、最大の落ち込みは224,911円でした。月の平均7,141円に対し、ぶれは44,314円と、平均よりぶれのほうが大きい収入です。月30万円に合わせた42.0倍では、最大の落ち込みは約944.8万円、事後計算の最低資金は約1,356万円でした。税金は、国内の登録業者のFXなら申告分離課税で、損失は3年繰り越せます。国民年金は令和8年度で月17,920円です。専業になるかどうかは、生活防衛資金、記録、最悪の月への備え、税と保険の確認、やめる条件と戻る期限をそろえてから判断してください。FXは元本を失うリスクがあり、過去の計測結果は将来の成績を保証しません。
⚠ リスクに関する注意事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。












