シャープレシオとは|式の計算手順と、5通貨10年の実測でわかる値のぶれ

シャープレシオとは?計算方法と投資での活用法を解説の画像

シャープレシオは、平均リターンから無リスク金利を引いた値を、リターンの標準偏差で割った値です。この記事では、Dukascopy のティックから作った足で、USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD・EUR/JPY・AUD/JPYを、買って持つだけの日次リターンで測りました(2016年1月5日〜2025年12月31日の2,594日)。10年全体の年率のシャープレシオは−0.04〜0.44で、1年ごとに分けると−1.24〜1.95まで動きました。10年分の日次リターンを並べ替えた範囲には、50個中48個が入りました。

目次

シャープレシオとは|超過リターンを標準偏差で割った値

USD/JPYの10年の日次リターンから、平均・標準偏差・日次の値・年率の値を順に出す手順を並べた表
出典: Dukascopy のティックから作った足(bid)。USD/JPYの買って持つだけの日次リターン2,594日(2016年1月5日〜2025年12月31日)から、年率のシャープレシオを出す手順。

シャープレシオの式と3つの材料

シャープレシオは、リスク1単位あたりに、無リスク金利を上回るリターンをどれだけ得たかを表します。式は、(平均リターン − 無リスク金利)÷ リターンの標準偏差です。材料は、平均リターン、無リスク金利、標準偏差の3つです。標準偏差は、リターンのばらつきの大きさです。

無リスク金利には、国債の利回りなどを使います。この記事の測定では、無リスク金利を0にして、価格の変化だけを見ています。無リスク金利を0にすると、式は「平均リターン ÷ 標準偏差」になります。

USD/JPYの10年で計算する

図の手順で、USD/JPYの10年を計算しました。日次リターンは、ニューヨーク17時区切りの日足の終値の前日比です。平均は0.0121%、標準偏差は0.579%で、割ると日次の値は0.0210になります。これに、1年の営業日数の平方根にあたる15.87(252の平方根)をかけると、年率で0.333です。

確かめとして、平均を年率(日次の平均×252で3.06%)に、標準偏差を年率(日次の標準偏差×15.87で9.19%)にして割っても、0.333になりました。日次の値に15.87をかけることと、年率にした平均を年率にした標準偏差で割ることは、同じ計算です。

仮のファンド3本で計算する

下の表は、説明用の仮のファンドです。無リスク金利は、どれも1.0%としています。

スクロールできます
ファンド平均リターン標準偏差シャープレシオ
A6.5%5.0%1.10
B8.0%9.0%0.78
C5.0%3.0%1.33
仮のファンド3本の計算例(無リスク金利1.0%)。Aは(6.5−1.0)÷5.0、Bは(8.0−1.0)÷9.0、Cは(5.0−1.0)÷3.0。

平均リターンが最も高いのはBの8.0%ですが、シャープレシオが最も高いのはCの1.33です。標準偏差が小さいほど、同じ超過リターンでも値は大きくなります。値の大小は、リスクの大きさとの比で決まります。

アドバイス

シャープレシオは、平均を標準偏差で割った値だよ。USD/JPYの10年は、日次の0.0210に15.87をかけて0.333になったね。

シャープレシオの年率換算|日次と月次の求め方で比べる

5通貨について、日次リターンから出した年率のシャープレシオと、月次リターンから出した値と、日次リターンの前日との相関を並べた表
出典: Dukascopy のティックから作った足(bid)。5通貨の買って持つだけの日次リターン(2016年1月5日〜2025年12月31日)を、日次と月次の2通りで年率にした値。

日次の値に√252、月次の値に√12をかける

シャープレシオは、リターンを測る間隔で、値の大きさが変わります。日次のリターンで出した値は、1年を252営業日として、252の平方根(15.87)をかけて年率にします。月次のリターンで出した値は、12の平方根(3.46)をかけます。この換算は、リターンが前の期間と無関係に出ている(相関がない)ことを前提にしたやり方です。

5通貨で、日次から出した値と、月末終値の前月比119個から出した値を比べました。差は最大でも0.02です。日次リターンと前日の日次リターンの相関も、−0.03〜0.03で、ほぼ0でした。この10年の5通貨では、前日のリターンが、翌日のリターンに残る様子はありませんでした。

年率換算で変わる点

この測定のデータは、1年に259〜260日あります。252のかわりに、実際の1年あたりの日数259.4を使うと、値は約1.5%大きくなり、USD/JPYは0.333から0.338です。年率の値は、何日で1年とみなすかでも、少し変わります。

年率の値を比べるときは、日次か月次か、何日で1年としたかを、先に確かめます。この測定の5通貨では、前日との相関がほぼ0だったので、日次と月次の差は小さくなりました。ほかの商品や期間で同じになるかは、測っていません。

アドバイス

5通貨では、日次から出した値と月次から出した値の差は、最大でも0.02だったよ。前日との相関も、ほぼ0だったね。

シャープレシオの目安|1年・3年の値はどれくらいぶれるか

5通貨ごとに、1年ごとのシャープレシオ10個の点と、10年全体の値の線と、並べ替えの90%の範囲を重ねた図
出典: Dukascopy のティックから作った足(bid)。5通貨の買って持つだけの日次リターン(2016年1月5日〜2025年12月31日)で、暦年ごとのシャープレシオ。

1年ごとの値と並べ替えの範囲

同じ10年の中でも、1年ごとの値は大きく動きました。USD/JPYは、2020年が−0.49、2021年が1.95です。通貨ごとの1年の値の範囲は、USD/JPYが−0.49〜1.95、EUR/USDが−1.21〜1.81、GBP/USDが−1.17〜1.03、EUR/JPYが−0.87〜1.63、AUD/JPYが−1.24〜0.72でした。50個のうち、マイナスは22個、1を超えたのは11個です。

この動きが、偶然のぶれでどれくらい出るかを、並べ替えで調べました。通貨ごとに、10年分の日次リターンを無作為に並べ替えて、252日ずつ区切り、区切りごとにシャープレシオを出します。これを3,000回くり返し、5〜95%の範囲をまとめました。灰色の帯が、その範囲です。範囲は通貨ごとに3.1〜3.2の幅があり、USD/JPYでは−1.23〜1.95でした。

1年ごとの50個のうち、48個が範囲に入りました。外れた2個は、どちらも上側です。USD/JPYの2021年(1.95)は上限を0.01未満だけ上回り、EUR/USDの2017年(1.81)は上限の1.70を上回りました。範囲が90%なので、50個なら5個ほど外れても不思議でなく、外れた数は、それより少ないです。

3年ごとの値と並べ替えの範囲

5通貨ごとに、3年ごとのシャープレシオ3個の点と、10年全体の値の線と、並べ替えの90%の範囲を重ねた図
出典: Dukascopy のティックから作った足(bid)。5通貨の買って持つだけの日次リターン(2016年1月5日〜2025年12月31日)で、3年ごとのシャープレシオ。

3年ごとに分けると、値のぶれは小さくなりました。点は、2016〜2018年・2019〜2021年・2022〜2024年の3個で、5通貨で15個です。15個の範囲は−0.39〜1.00で、並べ替えの範囲の幅も、1年の3.1〜3.2から、1.6に縮みました。15個すべてが範囲に入りました。

それでも、3年の値が、10年の値と同じ向きとは限りません。USD/JPYは、2016〜2018年が−0.25、2022〜2024年が1.00で、10年全体の0.33を挟んで動きました。3年の15個のうち、プラスは8個、マイナスは7個です。並べ替えの値の標準偏差は、1年が0.95〜0.96、3年が0.48〜0.49でした。

「1以上が良い」という目安

シャープレシオの目安として、「1以上が良い」と書かれることがあります。シャープレシオを提案したSharpe(1994)の論文には、そうした基準の数字は書かれていません。この測定でも、1を超えた1年の値は11個ありましたが、同じ通貨の10年全体の値は、最大でも0.44です。1年の値が1を超えても、その通貨が長く続けて1を超えるとは限りませんでした。

アドバイス

1年ごとの値は、50個のうち48個が並べ替えの範囲に入ったよ。3年ごとは、15個すべてが入ったね。

シャープレシオの限界|ソルティノレシオ・最大ドローダウンと並べる

5通貨と5通貨の等分について、シャープレシオ・ソルティノレシオ・最大ドローダウンをシャープの高い順に並べた表
出典: Dukascopy のティックから作った足(bid)。5通貨と5通貨の等分の買って持つだけの日次リターン(2016年1月5日〜2025年12月31日)で、3つの値をシャープレシオの高い順に並べた表。

ソルティノレシオと最大ドローダウンの出し方

シャープレシオは、上がるぶれも下がるぶれも、同じリスクとして標準偏差に入れます。ソルティノレシオは、平均を、0より下の日だけで出した標準偏差で割って、年率にした値です。最大ドローダウンは、日次リターンを複利でつないだ資産が、高値からどれだけ下がったかの最大です。ドローダウンの見方は、ドローダウンの記事にまとめています。

同じデータで並べた結果

シャープレシオの高い順は、EUR/JPYが0.44、USD/JPYが0.33、AUD/JPYが0.23、EUR/USDが0.14、GBP/USDが−0.04です。ソルティノレシオも同じ順で、それぞれ0.61・0.46・0.31・0.21・−0.06でした。ソルティノレシオは、シャープレシオの1.4倍ほどの値になり、5通貨とも並びは変わりませんでした。

最大ドローダウンは、並びが違います。浅い順では、EUR/JPYが−16.5%、USD/JPYが−17.5%、EUR/USDが−23.3%、GBP/USDが−28.1%、AUD/JPYが−30.8%です。AUD/JPYは、シャープレシオが3番目に高い0.23なのに、最大ドローダウンは5通貨で最も深い−30.8%でした。シャープレシオが高い順に、下がり方が浅いとは限りません。

シャープレシオは、平均と標準偏差の2つだけから出る値です。下がりが続いた長さや、深さは入っていません。比べるときは、最大ドローダウンも並べます。

アドバイス

ソルティノレシオで並べても、順位はシャープレシオと同じだったよ。でも最大ドローダウンは、AUD/JPYが−30.8%で最も深かったね。

シャープレシオの使い方|組み合わせたときの変化を測る

横を年率の標準偏差、縦を年率の平均リターンにして、5通貨と5通貨の等分の位置と、シャープレシオ0.2と0.4の線を重ねた図
出典: Dukascopy のティックから作った足(bid)。5通貨と5通貨の等分の買って持つだけの日次リターン(2016年1月5日〜2025年12月31日)で、年率の標準偏差と平均リターンの位置。

5通貨を等分にした場合

図は、横が年率の標準偏差、縦が年率の平均リターンです。原点を通る線の傾きが、シャープレシオにあたります。毎日5通貨を同じ比率に戻した等分では、年率の標準偏差が6.13%で、5通貨ごとの7.30〜11.34%より小さくなりました。通貨どうしの相関は−0.45〜0.70で、5通貨の平均は0.29です。

等分のシャープレシオは0.33で、USD/JPYと同じ値でした。最も高いEUR/JPYの0.44は、上回りませんでした。最大ドローダウンは、等分が−15.2%で、5通貨のどれよりも浅い結果でした。標準偏差が下がった分、ドローダウンも浅くなりましたが、シャープレシオは、5通貨の中で最も高い値にはなりませんでした。

仮のポートフォリオで比べる

下の表は、説明用の仮のポートフォリオです。無リスク金利は1.0%としています。

スクロールできます
配分平均リターン標準偏差シャープレシオ
株80%・債券20%7.5%10.0%0.65
株50%・債券50%6.0%6.0%0.83
株30%・債券70%5.0%4.0%1.00
仮のポートフォリオ3本の計算例(無リスク金利1.0%)。(7.5−1.0)÷10.0、(6.0−1.0)÷6.0、(5.0−1.0)÷4.0。

この例では、シャープレシオが最も高いのは、株30%・債券70%の1.00です。平均リターンは、株が多いほど高くなります。シャープレシオが高い配分は、平均リターンが最も低い配分でもあります。値が高いことと、平均リターンが大きいことは、別のことです。

シャープレシオで比べるときの確認点

  1. 期間をそろえます。この測定では、1年ごとの値が−1.24〜1.95まで動きました。
  2. リターンの間隔と、年率にした日数をそろえます。日次か月次か、何日で1年としたかで、値が少し変わります。
  3. 無リスク金利の扱いをそろえます。0とするか、国債の利回りなどを引くかで、値が変わります。
  4. 最大ドローダウンを並べます。シャープレシオの順位と、下がり方の順位が、違う場合があります。

この測定は、買って持つだけの5通貨の日次リターンです。EAや手法の売買、スワップ、スプレッド、将来の値動きは含みません。シャープレシオは、過去の値動きから出した値で、これからの損益を示すものではありません。

アドバイス

5通貨を等分にすると、標準偏差は6.13%まで下がったよ。でもシャープレシオは0.33で、EUR/JPYの0.44より低かったね。

要点
・シャープレシオは、(平均リターン − 無リスク金利)÷ 標準偏差。USD/JPYの10年(日次2,594日)は、日次の0.0210に15.87をかけて、年率0.333
・日次から出した年率と月次から出した年率の差は、5通貨で最大0.02。日次リターンの前日との相関は−0.03〜0.03
・1年ごとの値は、5通貨で−1.24〜1.95。並べ替えの範囲に、50個中48個が入った。3年ごとは、15個すべてが入った
・10年全体の値は、5通貨で−0.04〜0.44。1を超えた1年の値は、50個中11個
・ソルティノレシオの順位は、シャープレシオと同じ。最大ドローダウンは、AUD/JPYが−30.8%で最も深い
・測っていないのは、EAや手法の売買、スワップ、スプレッド、将来の損益

シャープレシオのよくある質問

シャープレシオの目安はいくつですか?

決まった基準は確かめられませんでした。提案した論文に、基準の数字は書かれていません。買って持つだけの5通貨では、10年全体が−0.04〜0.44、1年ごとが−1.24〜1.95でした。

シャープレシオが高いEAは、良いEAですか?

高いだけでは言えません。この測定では、シャープレシオが3番目に高かったAUD/JPYが、最大ドローダウンは最も深くなりました。取引回数や期間も、あわせて確かめます。

無リスク金利を変えると、値は変わりますか?

変わります。引く金利が大きいほど、分子が小さくなり、値は下がります。0としているか、国債の利回りを使っているかを、先に確かめます。

ソルティノレシオとは、何が違いますか?

割る標準偏差の出し方が違います。シャープレシオは全ての日で、ソルティノレシオは0より下の日だけで出します。5通貨では、ソルティノレシオが1.4倍ほどの値で、順位は同じでした。

何年分のデータで測ればよいですか?

長いほど、ぶれは小さくなります。並べ替えの値の標準偏差は、1年で0.95〜0.96、3年で0.48〜0.49でした。比べる相手と、期間をそろえます。

シャープレシオのまとめ

シャープレシオは、(平均リターン − 無リスク金利)÷ 標準偏差で出す、リスク1単位あたりの超過リターンです。Dukascopy のティックから作った足で、5通貨を買って持つだけの日次リターン(2016年1月5日〜2025年12月31日の2,594日)を測ると、10年全体の年率の値は−0.04〜0.44でした。日次から出した年率と月次から出した年率の差は、最大0.02です。

1年ごとの値は−1.24〜1.95まで動き、50個中48個が、並べ替えの範囲に入りました。3年ごとの15個は、すべて範囲に入っています。ソルティノレシオの順位はシャープレシオと同じで、最大ドローダウンの順位は違いました。測っていないEAの売買や将来の損益は、自分のデータで確かめてから使ってください。

この記事は指標の情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。

⚠ リスクに関する注意事項

本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。

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この記事を書いた人

シストレ.COM編集部は、FX自動売買(EA)とテクニカル分析を専門とするインターネットメディア「シストレ.COM」の編集チームです。200本以上のEAのフォワードテスト結果を公開し、実際の運用データに基づいた客観的な情報を発信しています。記事の執筆・監修はMetaTrader(MT4/MT5)での実運用経験を持つスタッフが担当。

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