
ゼロサムとは|買いと売りの合計は0、費用を引くとマイナス

ゼロサム・マイナスサム・プラスサムの違い
ゼロサムゲームは、参加者の利益と損失を全部足すと0になるゲームです。誰かが1万円を得るとき、ほかの誰かが合計1万円を失います。参加者の損益の合計が0より小さいものをマイナスサム、0より大きいものをプラスサムと呼びます。
| 呼び方 | 参加者の損益の合計 |
|---|---|
| ゼロサム | 0 |
| マイナスサム | 0より小さい |
| プラスサム | 0より大きい |
FXでは、通貨を買う人と売る人が同じ価格で取引すると考えると、買いの損益と売りの損益は、足すと0になります。ただし、実際の取引には、手数料やスプレッドなどの費用がかかります。費用は参加者の損益から引かれるので、費用を含めると合計は0より小さくなります。次の節から、取引の相手と費用を、順に見ていきます。
1組の例|スプレッドなしは0、スプレッドありは−0.8pips
「1組」は、ある1時間足の始値で、買い1件と売り1件を同時に入れ、4本後(4時間後)の足の始値で両方を決済したものです。買いは、bidにその足のスプレッドを足した価格(ask)で入り、決済はbidです。売りは、bidで入り、決済は4本後の足のbidにスプレッドを足した価格(ask)です。
図の例は、USD/JPYの2026年2月18日、日本時間14時の足から入れた1組です。始値は153.599で、4本後の18時の始値は153.719でした。差は12.0pipsの上昇です。スプレッドを考えないと、買いは+12.0pips、売りは−12.0pipsで、合計は0.0です。入った足のスプレッドは0.36pips、決済した足のスプレッドは0.44pipsでした。買いは入りのスプレッドを引いて+11.6pips、売りは決済のスプレッドを引いて−12.4pipsで、合計は−0.8pipsです。
スプレッドなしの合計が0になるのは、同じ価格差を逆向きに数えているためで、測って分かった結果ではありません。測ったのは、スプレッドを引いたあとの合計がどれだけ下がるかです。その測定は、「マイナスサム」の節に書きました。
アドバイスゼロサムは「全員の損益を足すと0」ということだよ。費用が引かれると、合計は0より小さくなるんだ。
ゼロサムの相手|店頭FXの取引相手はFX会社(相対取引・カバー取引・マリー取引)

店頭FXは、顧客とFX会社が1対1で取引する相対取引です。FFAJ(一般社団法人 金融先物取引業協会)の「取引所取引と店頭取引」では、店頭FXの取引条件は会社が決めると説明されています。取引所で行うFXは、東京金融取引所の「くりっく365」だけです。
| 種類 | 取引の場 |
|---|---|
| 店頭FX | 顧客とFX会社の相対取引 |
| くりっく365 | 東京金融取引所の取引所取引 |
表は、FFAJの説明にもとづく取引の場の分類です。
取引相手がFX会社になる仕組み
FFAJの「取引スキーム」では、店頭FXは差金決済の取引と説明されています。通貨そのものを受け渡さず、約定した価格と決済した価格の差額を、お金でやり取りします。顧客が利益を得れば、その差額はFX会社が支払います。顧客が損失を出せば、その差額をFX会社が受け取ります。
カバー取引とマリー取引
FFAJの「配信レート」では、顧客の利益はそのままだとFX会社の損失になると説明されています。そこでFX会社は、2つの方法で損失を避けます。1つはカバー取引で、顧客の注文によるFX会社の損失を避けるために、別の取引を行います。もう1つはマリー取引で、自社の中で顧客の売りと買いを相殺します。
カバーしていない部分の状況は、各社のホームページで毎月公表されると、FFAJは説明しています。FX会社を選ぶときは、この公表資料と、金融庁が公表している無登録で金融商品取引業を行う者の名称等の一覧を、あわせて見ておくと安心です。
アドバイス店頭FXの取引相手はFX会社だよ。会社は、カバー取引とマリー取引で損失を避けているんだ。
ゼロサムからマイナスサムへ|スプレッドの分だけ買いと売りの合計は下がる(自社実測)

図は、4時間保有の1組(前の節の例と同じ決め方)を、全ての足の始値で入れ続けたと仮定して、合計を足したものです。スプレッドなしの合計は、どの時点でも0です。スプレッドを引いた合計は、2016年から2026年10月までで、USD/JPYが−74,141pips、EUR/USDが−51,352pips、GBP/USDが−143,533pips、EUR/JPYが−136,549pips、AUD/JPYが−127,861pipsでした。保有が重なる組を毎時間数えた単純な足し算で、同時に持てる数や証拠金は考えていないので、実際の口座の損益ではありません。
FFAJの「スプレッド、手数料」では、店頭FXの取引コストは、スプレッドと取引手数料と説明されています。例として、スプレッドが5銭なら、1万通貨で500円です。スプレッドは、流動性が下がったときや相場が急に動いたときに広がることもあります。スプレッドの仕組みは、スプレッドの記事にまとめています。
では、スプレッドは、買いと売りの合計をどれくらい下げるのでしょうか。Dukascopy のティックから作った足で、実際に測りました。
測り方|買い1件と売り1件を同時に入れる
対象は、USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD・EUR/JPY・AUD/JPYの1時間足で、2016年1月から2026年10月までの合計336,913本です。足はbidで作り、各足の中のask−bid(スプレッド)の平均を、その足のスプレッドとしました。このスプレッドはDukascopyの配信価格のもので、FX会社の表示するスプレッドとは別です。単位はpipsで、USD/JPY・EUR/JPY・AUD/JPYは0.01円、EUR/USD・GBP/USDは0.0001ドルが1pipsです。
「1組」の決め方は、前の節の例と同じです。ある1時間足の始値で買い1件と売り1件を同時に入れ、4本後の足の始値で両方を決済します。週末をまたぐなどで、ちょうど4時間後にならない組は除きました。組の数は、5通貨の合計で325,205組です。保有する本数を1・12・24・48本に変えた図では、本数ごとに同じ決め方で組を作っています。
通貨ペアで違う1組のコスト

1組のコストは、入りの足のスプレッドと、決済の足のスプレッドの合計です。買いと売りの合計がスプレッドなしの0から下がる幅と、同じ値になります。4時間保有した1組の平均は、EUR/USDが0.79pips、USD/JPYが1.15pips、AUD/JPYが1.96pips、EUR/JPYが2.10pips、GBP/USDが2.20pipsでした。最も小さいEUR/USDと、最も大きいGBP/USDで、約2.8倍の差があります。
| 通貨ペア | スプレッド平均 | 中央値 | 1組のコスト |
|---|---|---|---|
| EUR/USD | 0.41 | 0.30 | 0.79 |
| USD/JPY | 0.59 | 0.40 | 1.15 |
| AUD/JPY | 1.02 | 0.74 | 1.96 |
| EUR/JPY | 1.09 | 0.76 | 2.10 |
| GBP/USD | 1.13 | 0.87 | 2.20 |
表の「スプレッド平均」と「中央値」は、各足のスプレッドの平均と中央値で、単位はpipsです。「1組のコスト」は、4時間保有した1組の入りと決済のスプレッドの合計の平均です。足の数は、USD/JPYが67,093本、EUR/USDが67,458本、GBP/USDが67,453本、EUR/JPYが67,456本、AUD/JPYが67,453本です。
買いも売りも負けた組の割合

スプレッドを引くと、価格があまり動かなかった組では、買いも売りもマイナスになります。買いがマイナスになるのは、価格の上昇がスプレッドより小さいとき、売りがマイナスになるのは、価格の下落がスプレッドより小さいときです。つまり、入りと決済のあいだの値動きが、スプレッドの範囲に収まった組が、買いも売りも負けた組になります。
| 通貨ペア | 1本 | 4本 | 48本 |
|---|---|---|---|
| USD/JPY | 6.0% | 2.7% | 0.5% |
| EUR/USD | 5.8% | 2.6% | 0.5% |
| GBP/USD | 11.4% | 5.4% | 1.0% |
| EUR/JPY | 8.9% | 4.3% | 0.9% |
| AUD/JPY | 9.7% | 4.7% | 1.0% |
表の「1本」「4本」「48本」は、保有する足の本数(1時間足)です。1本は1時間、4本は4時間、48本は2日間にあたります。割合は、その本数で保有した組のうち、買いも売りも損益がマイナスだった組の割合です。1本保有では5.8〜11.4%、4本では2.6〜5.4%、48本では0.5〜1.0%でした。5通貨とも、保有する本数が長いほど、割合は小さくなりました。
コストは値動きの何%か

値動きは、入りと決済の始値の差の大きさ(pips)です。4時間保有の値動きの中央値は、USD/JPYが12.1pips、EUR/USDが9.5pips、GBP/USDが13.0pips、EUR/JPYが14.4pips、AUD/JPYが12.3pipsでした。1組のコストの平均は、この中央値の8.3〜16.9%にあたります。
保有する本数別に見ると、1本保有では17.6〜36.3%、4本では8.3〜16.9%、48本では1.9〜3.9%です。1組のコストは入りと決済の2回分で、保有が長くなっても増えません。値動きの中央値は保有が長いほど大きいので、比率は小さくなりました。コストをどう減らすかや、どの保有時間が向くかは、この測定では分かりません。
スプレッドの年ごとの変化と時間帯

足ごとの平均スプレッドを年ごとに平均すると、5通貨とも、2022年に前年より大きくなりました。USD/JPYは2021年の0.41pipsから2022年の0.85pipsに、EUR/JPYは0.77pipsから1.37pipsに上がっています。2026年(10月まで)は、USD/JPYが0.69pips、EUR/JPYが1.33pipsでした。上がった理由は、この測定では分かりません。

日本時間の時刻別では、5通貨とも6時台の足のスプレッドが最も大きくなりました。6時台の平均は、EUR/JPYが4.54pips、AUD/JPYが4.40pips、GBP/USDが3.78pips、USD/JPYが2.59pips、EUR/USDが1.48pipsです。同じ通貨ペアの12時台は、EUR/JPYが0.91pips、AUD/JPYが0.81pips、GBP/USDが1.02pips、USD/JPYが0.48pips、EUR/USDが0.35pipsでした。夏時間と冬時間は区別せず、日本時間の時刻だけで平均しています。
FFAJの「スワップポイント」では、米国の夏時間のロールオーバーは日本時間の6時前後と説明されています。ただし、6時台にスプレッドが開く理由は、この測定では確かめていません。
測っていないこと
この節で測ったのは、Dukascopyの配信価格のスプレッドと、買い1件と売り1件を同時に入れた1組の合計です。FX会社が実際に出すスプレッド・取引手数料・スワップ・約定のずれは測っていません。買いと売りのどちらが多く利益を出したか、売買の損益や勝率も、この測定の対象ではありません。スプレッドなしの合計が0になることは、先に書いたとおり、数え方から決まる結果です。
アドバイス4時間保有の1組のコストは、0.79〜2.20pipsだったよ。買いも売りも負けた割合は、2.6〜5.4%だったんだ。
ゼロサムとスワップ|買いは金利を受け取り、売りは支払う

スワップの受け払い
FFAJの「スワップポイント」では、ポジションを翌日に持ち越すと、2つの通貨の金利差が、スワップポイントとして受け払いされると説明されています。買った通貨の金利を受け取り、売った通貨の金利を支払います。その差額がスワップです。
| USD/JPYの持ち方 | 受け取る金利 | 支払う金利 |
|---|---|---|
| 買い | 米ドル 5% | 円 1% |
| 売り | 円 1% | 米ドル 5% |
表と図は、FFAJの例の金利(米ドル5%、円1%)で作りました。この例では、買いは差額の年率4.0%を受け取り、売りは同じ4.0%を支払います。同じ通貨ペアの買いと売りを同じ数だけ持つと、金利の受け払いは向きが逆になるので、金利差そのものは打ち消し合い、図の合計は0.0%です。
会社ごとに違うスワップ
ただし、FFAJは、同じ通貨ペアでも会社によってスワップポイントが違うと説明しています。実際の受け取りと支払いの額は、口座を持つ会社の条件で決まります。この記事では、スワップの金額は測っていません。スワップの見方は、スワップポイントの記事にまとめています。
アドバイススワップは、買いが受け取り、売りが支払うよ。ただし、金額は会社ごとに違うんだ。
要点
・ゼロサムは、参加者の損益を全部足すと0になること。0より小さければマイナスサム
・店頭FXの取引相手はFX会社(相対取引)。会社はカバー取引やマリー取引で損失を避ける(FFAJの説明)
・Dukascopy のティックから作った足で、買い1件と売り1件を同時に入れて4時間後に決済した325,205組では、スプレッドなしの合計は必ず0
・スプレッドを引くと、1組の合計は0.79〜2.20pipsのマイナス。買いも売りも負けた組は2.6〜5.4%
・1組のコストは、4時間保有の値動きの中央値の8.3〜16.9%。48時間保有では1.9〜3.9%
・スワップは、買いが金利を受け取り、売りが支払う。会社によって金額が違う
・測っていないのは、FX会社の実際のスプレッドと手数料・スワップの金額・売買の損益
ゼロサムゲームに関するよくある質問
FXはゼロサムゲームですか?
費用を含めるとマイナスサムです。買いと売りの損益だけを足すと0ですが、スプレッドや手数料が引かれるので、合計は0より小さくなります。
店頭FXの取引相手は誰ですか?
FX会社です。顧客とFX会社が1対1で取引する相対取引で、取引条件は会社が決めます。取引所で行うFXは、東京金融取引所の「くりっく365」です。
カバー取引とマリー取引は何ですか?
会社が損失を避けるための取引です。カバー取引は別の取引を行うこと、マリー取引は自社内で顧客の売りと買いを相殺することです。
スプレッドで、買いと売りの合計はどれくらい下がりますか?
測った範囲では、1組あたり0.79〜2.20pipsです。5通貨の1時間足で、4時間保有した組の平均です。FX会社の実際のスプレッドは測っていません。
スワップはどう受け払いされますか?
買いは受け取り、売りは支払います。買った通貨の金利を受け取り、売った通貨の金利を支払い、その差額がスワップです。金額は会社ごとに違います。
ゼロサムゲームのまとめ
FXの売買は、買いの損益と売りの損益を足すと0になりますが、スプレッドなどの費用が引かれるので、合計はマイナスサムです。店頭FXの取引相手はFX会社で、会社はカバー取引やマリー取引で損失を避けます。Dukascopy のティックから作った足(2016年1月〜2026年10月、5通貨ペアの1時間足)で、4時間保有の1組を325,205組測ると、スプレッドを引いた合計は1組あたり0.79〜2.20pipsのマイナスで、買いも売りも負けた組は2.6〜5.4%でした。
費用の大きさは、通貨ペア・年・時間帯で変わります。実際に使うFX会社のスプレッドと手数料、スワップは、会社ごとに違うので、口座の条件で確かめてください。資金の考え方はFX退場の記事、損益比の見方はリスクリワードの記事、損益分岐の勝率やスプレッドの測定はFX 勝てない原因の記事にまとめています。
この記事はFXの仕組みの情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。
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