
空売りとは|FXで売りから入る仕組み

空売りの意味
空売りは、持っていないものを先に売る取引です。FXでは、手元に通貨がなくても、売り注文から取引を始められます。この記事では、FXで売りから入る取引を「空売り」と呼びます。株では証券会社から株を借りて売るため、同じ空売りでも仕組みが違います。違いは次の節で扱います。
売ってから買い戻す流れ
USD/JPYを150円で売ると、米ドルを売って円を買う建玉になります。1万通貨なら、取引金額は150万円です。のちに145円で買い戻して決済すれば、150円と145円の差の5円が1通貨あたりの利益で、1万通貨なら5万円です。155円で買い戻すと、同じ5円の差が損失になります。売りから入った場合は、価格が下がると利益、上がると損失です。
損益の式とコスト
売りの損益は、(売った価格−買い戻した価格)×通貨数です。ここにスプレッドとスワップが加わります。業者は評価損益を出すとき、買い建玉にはビッド、売り建玉にはオファーのレートを使うのが通常です(FFAJのロスカットの解説)。
アドバイス空売りは、売ってから買い戻す取引だよ。150円で売って145円で買い戻せば、1万通貨で5万円の差だね。
空売りの違い|FXの売りと株の信用売り

借りて売るか、差額で決済するか
株の信用売りは、証券会社から株を借りて売り、あとで買い戻して返す取引です。信用取引には、制度信用取引と一般信用取引があります。制度信用は、対象銘柄を取引所が選び、返済期限は最長6か月です。一般信用は、期限などを顧客と証券会社が決めます(日本取引所グループ(JPX)の信用取引制度の概要)。
FXの店頭取引は、通貨そのものを借りるわけではなく、売った価格と買い戻した価格の差額を精算します。個人が店頭FXで取引するときは、取引額の4%以上の証拠金を預けることが、業者に義務づけられています。上限は25倍です(金融先物取引業協会(FFAJ)のFX取引の規制)。

期限とコスト|貸株料と品貸料(逆日歩)
株の信用売りでは、売った顧客が証券会社に貸株料を支払います。株の需給によっては、品貸料(逆日歩)がつくこともあります。品貸料がついた銘柄では、制度信用の売り顧客はその金額を支払い、買い顧客は受け取ります(日本取引所グループ(JPX)の信用取引制度の概要)。
委託保証金は売付代金の30%以上で、評価損を引いた額が売買代金の20%を下回ると、追加の保証金(追い証)が必要です。FXの売りでは、貸株料や品貸料のかわりに、スプレッドと、持ち越したときのスワップがかかります。
株の空売りにかかる規制

株の空売りには、明示・確認義務、価格規制、残高報告の3つがかかります。価格規制は、株価が基準値段から10%以上下落した場合にだけ発動します。残高報告は、発行済株式の0.2%以上の残高で必要になり、0.5%以上は取引所が公表します。個人などの信用売り(50単位以内)は、価格規制と残高報告の対象外です(JPXの空売り規制)。
これらは株の取引所取引にかかる規制です。FXの個人取引では、証拠金4%以上とロスカットが義務づけられています。
アドバイス株の空売りは、借りて売るから期限と逆日歩があるよ。FXは差額の精算で、スワップがかかるよ。
空売りの損益|メリットとデメリット

空売りのメリット
売りから入れば、価格が下がる局面でも利益の機会があります。買いと同じ口座・同じ証拠金の仕組みで、注文画面で売りを選ぶだけで始められます。株の制度信用にある返済期限(最長6か月)や品貸料は、FXの売りにはありません。
空売りのデメリット
図のとおり、売りの損失は、価格が上がるほど増えます。式の上では、上昇に上限がありません。買いの損失は、価格がゼロまでです。実際には、損失が一定の水準に達するとロスカットが働きますが、急な変動やスプレッドの拡大があると、証拠金以上の損失が出ることがあります(FFAJのロスカットの解説)。
ほかに、スプレッドと、スワップの支払いが生じる場合があります。スワップは次の節で扱います。
アドバイス売りは、上がるほど損が増える形だよ。損失の幅は、あとの節で実測しているよ。
空売りとスワップ|売りから入ると支払いになる場合

スワップの向きは金利差で決まる
FXは、2つの通貨を売買します。買った通貨の金利を受け取り、売った通貨の金利を支払うため、その差がスワップポイントです。FFAJの例では、米ドルの金利が5%、円が1%のとき、米ドルを買って円を売ると、差の4%分を受け取ります。逆に米ドルを売って円を買うと、同じ差を支払います(FFAJのスワップポイントの解説)。
USD/JPYの売りは、米ドルを売る側です。米ドルの金利が円より高い間は、売りでスワップを支払うことになります。
向きは入れ替わる
スワップは、各国の短期金利に応じて日々変わります。受け取りから支払いに転じることもあります(FFAJのスワップポイントの解説)。実際の金額は業者ごとに違い、この記事では測っていません。取引する前に、取引画面や業者の案内で確かめてください。仕組みはスワップポイントの記事でも説明しています。
アドバイス売りは、売る通貨の金利が高いとスワップを払う側になるよ。向きは金利差で入れ替わるよ。
空売りの値幅の実測|下げた日と上げた日の動きの大きさ

1日の値幅
売りから入ると、価格が下がる日に利益が出ます。では、下げる日は上げる日より動きが大きいのでしょうか。USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD・EUR/JPY・AUD/JPYの5通貨で、Dukascopyのティックから足を作り、1日をニューヨーク17時で区切りました。2016年1月4日から2026年10月27日までの3,383カレンダー日のうち、土日と1時間足が12本未満の日の570日を除き、各通貨2,813日を使いました。終値が始値より低い日を「下げた日」、高い日を「上げた日」とし、高値−安値(pips)の中央値を比べています。1日を1件と数えます。

日数は図のとおりで、5通貨とも、下げた日より上げた日のほうが多くなりました。
USD/JPYは、下げた日1,300日の中央値が85.6pips、上げた日1,512日が79.7pipsで、比は1.07でした。下げ・上げの印を日の間で入れ替える作業を2,000回繰り返すと、比の中央95%は0.94〜1.06で、実測はその外です。AUD/JPYも、82.5pips対76.5pips、比1.08(範囲0.96〜1.04)で外でした。EUR/JPYは、96.5pips対93.2pips、比1.04で、範囲(0.96〜1.05)に入りました。EUR/USDは比0.99、GBP/USDは比1.01で、どちらも範囲に入りました。

年ごとに分けると、USD/JPYは11年のうち10年で、下げた日の値幅のほうが大きく(比は0.99〜1.30)、EUR/USDは5年でした(0.88〜1.11)。1年は下げた日・上げた日が各約120日と少なく、年によるぶれが大きいことに注意してください。
1時間の動き

1時間足でも、始値から終値までの動きの大きさ(pips)を、下げた足と上げた足で比べました。1本を1件と数え、各通貨約6.7万本(67,093〜67,458本、始値と終値が同じ足は除く)です。大きいほうから1%の位置の値で比べると、USD/JPYは下げた足54.6pips、上げた足48.4pipsで比1.13(範囲0.94〜1.06)、EUR/JPYは56.8pips対50.5pipsで比1.12(範囲0.95〜1.05)、AUD/JPYは46.9pips対41.7pipsで比1.12(範囲0.95〜1.05)でした。3通貨とも範囲の外です。EUR/USDは37.7pips対37.9pipsで比0.99、GBP/USDは52.5pips対51.7pipsで比1.02で、範囲に入りました。

上位10%の位置で比べると、比はEUR/USDが1.00、GBP/USDが1.01、USD/JPYとEUR/JPYが1.05、AUD/JPYが1.07で、円が絡む3通貨は範囲の外、EUR/USDとGBP/USDは範囲の中でした。1%の位置より差は小さくなります。
この結果の読み方
円が絡む3通貨では、下げた日・下げた1時間のほうが、上げたときより大きく動いていました。EUR/USDとGBP/USDでは、差が出ませんでした。この3通貨は円を共通して含むため、3回の独立した結果ではありません。期間は2016年から2026年の1本の値動きで、理由は測っていません。下げる日に動きが大きいことと、売りの損益がどうなるかは別の話で、売買の損益は測っていません。
アドバイス円が絡む3通貨は、下げたときのほうが大きく動いていたよ。ドルとユーロ・ポンドは差がなかったよ。
空売りの逆行幅の実測|20営業日で4%に届く割合

測り方と結果
毎営業日のニューヨーク17時の始値で売りを建てたと仮定し、20営業日以内の最高値までを逆行の幅としました(買いは最安値まで)。損切りも決済もしない場合の、最も悪い点です。1日ずつずらした窓を1件と数え、各通貨2,794件を測りました。窓は1日ずつずれて重なっているため、重ならない窓にすると約140件分の情報です。
逆行が建てた価格の4%に届いた窓の割合は、売りで、USD/JPY 11.1%、EUR/USD 6.3%、GBP/USD 7.7%、EUR/JPY 8.3%、AUD/JPY 16.1%でした。買いは、12.7%、3.9%、7.7%、9.1%、17.8%です。売りのほうが大きい通貨は、EUR/USDだけで、GBP/USDはほぼ同じ、残りの3通貨は買いのほうが大きくなりました。
4%は、証拠金率4%(25倍)の取引で、預けた最低の証拠金と同じ額の逆行です。業者のロスカットの水準はこれとは別で、手前で決済されることがあります。USD/JPYの売りで、逆行が2%以上だった窓は37.3%、8%以上だった窓は0.8%です。最大は11.4%で、2016年11月4日に建てた窓でした。

窓を建てた年で分けて5通貨をまとめると、売りは2.8〜23.5%、買いは3.1〜25.8%で、年によって大きく違います。売り・買いとも最大は2022年(売り23.5%、買い25.8%)です。売りのほうが大きい年は11年のうち6年、買いのほうが大きい年は5年でした。

幅ごとの割合は、図のとおりです。逆行が大きくなるほど窓は急に減りますが、AUD/JPYとUSD/JPYは、8%を超えた窓が残っています。5通貨で、売りの逆行の最大は、USD/JPYが11.4%、EUR/USDが8.1%、GBP/USDが10.2%、EUR/JPYが9.7%、AUD/JPYが13.3%です。

逆行の幅の中央値は、売りで1.3〜2.1%、買いで1.3〜1.8%です。大きいほうから1%の位置では、買いのGBP/USD(10.7%)とAUD/JPY(13.3%)が目立ちます。

逆行の最大は、買いがUSD/JPY 12.4%、EUR/USD 7.3%、GBP/USD 13.6%、EUR/JPY 11.8%、AUD/JPY 19.1%です。AUD/JPYの買いの19.1%が、10年分の中で最も大きい逆行でした。
実際の値動きの例
最も動いた窓を、USD/JPYの日足で見てみます。売りに不利だったのは、2016年11月4日の始値103.06円で売った窓です。20営業日以内の最高値は114.82円(2016年12月1日)で、含み損は最大1,176pips(11.4%)、1万通貨で約11.8万円でした。建値の4%上は、この窓の中で2016年11月14日に超えています。

反対に、売りに有利だったのは、2024年7月11日の始値161.69円で売った窓です。最安値は141.68円(2024年8月5日)で、含み益は最大2,001pips(12.4%)、1万通貨で約20.0万円でした。どちらも、10年分の窓の中で最も大きいものを選んだ例で、ふつうの値動きではありません。

5通貨ともスプレッドとスワップは含めていません。窓の重なり、通貨の共通性、2016年から2026年の1本の値動きという前提があるため、この割合は将来の目安にはなりません。買いのデータとの比較では、どちらかの向きのほうが有利だとは言えません。USD/JPYを詳しく見たい方はUSD/JPYの記事、EUR/USDはEUR/USDの記事を参照してください。
アドバイス20営業日で4%を超えて逆に動いた窓は、通貨によって4〜18%ほどあったよ。売りも買いも同じくらいあるよ。
空売りの注文と証拠金|逆行に備える

注文の置き方
売りの注文は、買いと向きが逆です。売りの損切りは、建値より上に置く逆指値の買いで、利益確定は、建値より下に置く指値の買いです。いまの価格ですぐ売るのが成行売りで、今より高い価格まで待つのが指値売り、安値を割ったら売るのが逆指値売りです。
証拠金とロスカット

150円で1万通貨を売ると、取引金額は150万円で、最低証拠金は4%の6万円です。価格が150円から6円上がると、評価損が6万円になり、最低証拠金と同じ額になります。ここまで逆行すると、ロスカットの水準に届く前に決済されることもあります。ロスカットは法令で義務づけられ、水準は業者ごとに違います(FFAJのロスカットの解説)。

逆行の幅を円にすると、1万通貨では1pipsが100円なので、600pipsで6万円、最低証拠金と同じ額です。
前の節の実測では、20営業日で4%以上逆行した窓が、USD/JPYの売りで11.1%ありました。証拠金に余裕をもたせ、決済のルールを先に決めておくことが、逆行への備えになります。ロスカットの仕組みはロスカットの記事にまとめています。
アドバイス最低証拠金の4%は、150円なら6円の逆行だよ。ロスカットの水準は業者ごとに違うから、取引の前に確かめてね。
要点
・FXの空売りは、先に売って買い戻す取引。株の信用売りと違い、株を借りず、スワップがかかる
・株の制度信用は返済期限が最長6か月で、貸株料と品貸料(逆日歩)がある。FXの個人取引は証拠金が取引額の4%以上
・5通貨の日足2,813日・1時間足で、下げた日・下げた1時間の動きが大きかったのは円が絡む3通貨。EUR/USDとGBP/USDは差なし
・売りから20営業日以内に逆行が4%に届いた窓の割合は6.3〜16.1%(2,794窓)。買いは3.9〜17.8%
・測っていないのは、売買の損益、スワップの金額、時間帯別の違い
空売りのよくある質問
FXの空売りに貸株料はかかりますか?
かかりません。貸株料は株の信用売りの費用です。FXの売りでは、スプレッドと、持ち越したときのスワップがかかります。
売りから入ると、いつまで持てますか?
業者の取引ルールで決まります。株の制度信用は6か月以内です。FXは、契約前に交付される書面で、期限があるかを確かめてください。
売りのほうが、買いより危険ですか?
測った範囲では、どちらとも言えませんでした。20営業日で4%以上逆行した割合は、EUR/USDは売りが多く、USD/JPYは買いが多くなりました。
下げるときは、上げるときより動きが大きいですか?
通貨によって違いました。円が絡む3通貨は下げたときのほうが大きく、EUR/USDとGBP/USDは差がありませんでした。
株の空売り規制は、FXにもありますか?
株の取引所取引の規則です。FXの個人取引では、取引額の4%以上の証拠金とロスカットが義務づけられています。
空売りのまとめ
FXの空売りは、先に売って買い戻す取引で、株の信用売りのように株を借りず、返済期限や品貸料もありません。かわりに、スプレッドとスワップがかかります。Dukascopyのティックから作った5通貨(2016年1月〜2026年10月)では、下げた日・下げた1時間の動きが大きいのは円が絡む3通貨で、EUR/USDとGBP/USDは差がありませんでした。売りから20営業日以内に逆行が4%に届いた割合は、6.3〜16.1%で、買いと比べても、どちらが大きいかは通貨で分かれました。売買の損益やスワップの金額は測っていないので、取引する前に自分のデータと業者の案内で確かめてください。
FXの損益の基本はロスカットの記事、売りと買いの見方はテクニカル分析の記事にまとめています。
この記事はFXの仕組みの情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。取引する業者が登録を受けているかは、金融庁の違法な金融業者に関する情報も参考にしてください。
⚠ リスクに関する注意事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。













