
経済指標でEAを止めるか|発表前後の値動きを実測

経済指標の発表の直後は、値動きが急に大きくなります。ただ、どれくらい大きくなるのか、いつまで続くのかは、EAの設定を決めるときに数字で見ておきたい点です。そこで、雇用統計・CPI・FOMCの発表前後を、同じ曜日・同じ時刻の平常時と比べて測りました。
発表日のドル円の1分足
図は、2026年9月4日の雇用統計の発表(日本時間の21時30分)前後のUSD/JPYです。発表の1分目(0〜1分)の値幅は70.0pips、発表後5分間の値幅は73.8pipsでした。1週前の8月28日の同じ時刻は、1分目が1.7pips、5分間が2.6pipsです。これは1回の例で、測った128回の中央値は5分間で42.0pipsでした。
CPIとFOMCの発表日の1分足

図の上は、2026年9月11日のCPI(日本時間21時30分)です。発表後5分間の値幅は61.0pips、1分目は58.0pipsでした。下は、FOMCの政策金利発表(米国の9月16日・日本時間は9月17日の3時)で、5分間の値幅が50.9pips、1分目が28.3pipsです。どちらも、測った回の中の1例です。
測った期間と条件
- 期間と通貨ペア: 2016年1月〜2026年9月の、USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD。
- 1回の数え方: 指標の発表1回。発表の時刻を起点に、前30分と後60分のティックを見ます。
- 発表日: 雇用統計128日・CPI128日・FOMC85日の計341日。ティックが足りない日や、平常時の日が4日に満たない日を除くと、USD/JPYは339回(128+126+85)、EUR/USDは339回(128+127+84)、GBP/USDは340回(128+127+85)です。
- 値幅: bid(売値)の高値と安値の差(pips)。
- 平常時: 発表日と同じ曜日・同じ時刻の、前後1〜4週の日(最大8日)。ほかの雇用統計・CPI・FOMCの日は入れません。USD/JPYでは、雇用統計825日・CPI858日・FOMC614日です。
- 倍率: 発表後の値幅の中央値 ÷ 平常時の値幅の中央値。
平常時の日には、木曜の失業保険申請件数など、同じ時刻に出るほかの指標が入ることがあります。急な値動きへの備えは、EAと急変動の記事にまとめています。
アドバイス図の9月4日は、発表後5分で73.8pips動いたよ。1週前の同じ時刻は2.6pipsだったね。
経済指標の発表時刻|雇用統計・CPI・FOMCの日本時間

日本時間と夏時間のずれ
雇用統計とCPIは、米労働省労働統計局(BLS)が午前8時30分(米東部時間)に発表します。日本時間は、米国の夏時間の時期が21時30分、冬時間の時期が22時30分です。FOMCの政策金利発表は、午後2時(米東部時間)で、日本時間は夏が翌日の3時、冬が翌日の4時です。記者会見は、午後2時30分(米東部時間)に始まります。
米国の夏時間は、3月の第2日曜から11月の第1日曜までです。日本には夏時間がないので、この2つの日の前後で、日本時間の発表時刻が1時間ずれます。EAの時間設定も、そのたびに見直す必要があります。
発表日の確かめ方
雇用統計とCPIの日付は、BLSの雇用統計の公表予定と、CPIの公表ページで確かめられます。FOMCの日程は、FRBのFOMCカレンダーに出ます。この記事のFOMCは、定例会合の85回だけを数えています。
指標そのものの見方は、米国雇用統計とCPI(消費者物価指数)の記事にまとめています。
アドバイス雇用統計とCPIは日本時間の夜、FOMCは翌日の未明だよ。夏と冬で1時間ずれるから気をつけてね。
経済指標の発表後の値幅|平常時の何倍になるか

1分ごとの値幅の倍率
図の横軸の0は、発表の0〜1分です。値幅が最も大きかったのはこの1分で、平常時に対して雇用統計が5.2倍、CPIが4.3倍、FOMCが9.0倍でした。0〜1分の値幅の中央値は、雇用統計が33.7pips(平常時6.5pips)、CPIが24.3pips(平常時5.7pips)、FOMCが26.7pips(平常時3.0pips)です。
発表の2分前までは、3つとも0.7〜1.5倍でした。発表の1分前(図の−1)は、雇用統計が2.2倍、CPIが1.5倍、FOMCが2.5倍に上がっています。発表の1〜10分の1分ごとの倍率は、雇用統計が2.3〜3.3倍、CPIが1.8〜2.4倍、FOMCが2.9〜5.2倍でした。
3つの通貨ペアで比べる

発表後5分の値幅の中央値は、3通貨ペア・3指標の9通りすべてで、27.7〜42.0pipsでした。倍率は、雇用統計が3.4〜4.1倍、CPIが3.1〜3.6倍、FOMCが5.2〜6.8倍です。倍率が大きい順は、どの通貨ペアでもFOMC、雇用統計、CPIでした。pipsで最も大きかったのは、USD/JPYの雇用統計の42.0pipsです。
回ごとの値幅のばらつき

中央値が同じでも、回ごとの値幅は大きくばらつきました。小さい方から10%目〜90%目の範囲は、雇用統計が19.1〜106.8pips(平常時は5.1〜24.9pips)、CPIが8.4〜91.3pips(平常時は4.8〜17.9pips)、FOMCが14.6〜75.8pips(平常時は3.2〜13.3pips)です。CPIの10%目の8.4pipsは、平常時の中央値9.2pipsより小さい値でした。平常時の値は、各回の前後の日の平均です。
5分間の値幅が大きかった割合

USD/JPYで、発表後5分の値幅が20pips以上になった回の割合は、雇用統計が88%(平常時は18%)、CPIが64%(平常時は14%)、FOMCが81%(平常時は8%)でした。50pips以上は、雇用統計が41%(平常時は4%)、CPIが34%(平常時は2%)、FOMCが26%(平常時は1%)です。
年ごとの推移

発表後5分の値幅の中央値は、年によって大きく違いました。3つの指標とも、最も小さかったのは2020年で、雇用統計が18.4pips、CPIが5.7pips、FOMCが14.6pipsです。最も大きかったのは、雇用統計が2024年の98.9pips、CPIも2024年の86.2pipsで、FOMCは2023年の54.3pipsと2024年の54.2pipsでした。2026年(9月まで)は、雇用統計が50.8pips、CPIが32.3pips、FOMCが27.0pipsです。
年ごとの回数は、雇用統計とCPIが9〜12回、FOMCが6〜8回と少ないので、1回の大きな動きで中央値が動くこともあります。年による違いの理由は測っていません。全期間の中央値(42.0pipsなど)と、直近の年の値は、分けて見てください。
アドバイスUSD/JPYの雇用統計は、発表後5分で20pips以上動いた回が88%だったよ。平常時の同じ5分は18%だね。
経済指標の発表前後のスプレッド|広がる時間

スプレッドは発表の1分前から広がる
スプレッドは、値幅より少し早く動きました。USD/JPYで平常時に対する倍率が最も大きかったのは、発表の1分前(図の−1)で、雇用統計が2.5倍、CPIが1.8倍、FOMCが2.8倍です。発表の0〜1分は、それぞれ2.2倍、1.8倍、2.5倍でした。
発表の10分後には、雇用統計が1.1倍、CPIが1.0倍まで戻っています。FOMCは、発表の前の5分間から1.3〜1.6倍で、10分後も1.3倍でした。EUR/USDとGBP/USDも、発表の1分前から発表後1分までの2分間が最も広がっていました。
スプレッドの値(pips)
| 指標 | 30〜5分前 | 0〜1分 | 1〜5分 |
|---|---|---|---|
| 雇用統計 | 0.30 | 0.90 | 0.50 |
| CPI | 0.40 | 0.80 | 0.40 |
| FOMC | 0.40 | 1.00 | 0.60 |
表は、USD/JPYのスプレッド(ask−bid)の、発表ごとの中央値をさらに中央値にした値です。平常時の同じ0〜1分は、0.44〜0.46pipsでした。これはDukascopyの気配値で、FX会社ごとのスプレッドや約定の値は別に確かめてください。
3通貨ペアの最大スプレッド

発表の0〜1分に付いた最大のスプレッドは、中央値で2.9〜6.2pipsでした。USD/JPYは、雇用統計が6.0pips(平常時1.2pips)、CPIが4.3pips(平常時1.2pips)、FOMCが4.6pips(平常時1.0pips)です。GBP/USDは平常時の値が1.5〜2.0pipsと大きく、発表時は5.2〜6.2pipsでした。
回ごとのスプレッドの上限

中央値のほかに、広がった回の値も見ておきます。USD/JPYで、大きい方から5%目(20回に1回ほど)の最大スプレッドは、雇用統計が27.5pips、CPIが21.7pips、FOMCが16.9pipsでした。平常時の同じ値は、6.0pips、5.3pips、3.1pipsです。大きい方から10%目は、発表時が17.1pips、16.5pips、12.2pipsでした。
スプレッドと約定のずれの基本は、スプレッドとスリッページの記事にまとめています。
アドバイスUSD/JPYの雇用統計は、発表の1分前のスプレッドが平常時の2.5倍だったよ。値幅より先に広がっているね。
経済指標でEAを止める時間の目安|設定と確認の手順

時間帯ごとの倍率
USD/JPYの値幅を時間帯で分けると、発表前30分は雇用統計0.9倍・CPI0.8倍・FOMC1.2倍、発表前5分は1.5倍・1.0倍・1.5倍でした。発表後0〜5分は3.9倍・3.2倍・5.2倍、0〜30分は2.6倍・2.2倍・3.5倍、30〜60分は1.6倍・1.1倍・3.6倍です。
この時間帯で値幅が2倍を超えていたのは、雇用統計とCPIが発表後30分まで、FOMCが発表後60分までです。FOMCの30〜60分は、記者会見(午後2時30分・米東部時間)が始まる時間にあたります。会見の内容と値幅の関係は、測っていません。
発表後の向きは60分後も同じか

発表の直前のbidを基準にして、5分後と60分後の価格が、基準から同じ向きに動いていた回の割合です。変化が0の回は除いています。発表時は、9通りすべてで、平常時の同じ時刻より高い割合でした。発表時は68〜80%(USD/JPYの雇用統計は73%)、平常時は60〜69%で、差は3〜20ポイントです。GBP/USDのCPIは、発表時が80%、平常時が60%でした。
平常時でも6割以上は同じ向きなので、向きが続くことだけでは、発表時の特徴とは言えません。この割合は、止めた場合の損益や、取引の有利さを示すものではありません。
止める時間を決める手順
- 自分のEAの損切り幅と、ポジションを持つ時間を確かめます。発表後5分の値幅の中央値は、USD/JPYで29.2〜42.0pipsです。
- 発表の時刻を、夏時間か冬時間かを見て、日本時間で出します。
- EAの時間フィルターで、止める区間を決めます。この記事で値幅が2倍を超えていた区間(発表後30分まで、FOMCは60分まで)が、決めるときの候補です。
- 止めた場合と止めない場合の損益を、自分のEAのバックテストとフォワードで比べます。
この記事は、止めたほうが損益が良くなるかどうかまでは測っていません。止める区間は、手順4で確かめてから決めてください。
MT4・MT5での確認と時間設定
MT5は、ターミナルの「カレンダー」タブで、雇用統計やCPIなどの発表予定を確認できます。MQL5には、EAのプログラムから経済カレンダーを読む関数(CalendarValueHistoryなど)もあります。MT4にはこのタブがないので、前の節の公表予定で日付を確かめてください。
MT4・MT5の時刻は、FX会社のサーバー時間です。日本時間との差はFX会社ごとに違い、夏時間と冬時間で差が変わる会社もあるので、自分の口座のサーバー時間を、チャートの時刻と日本時間で見比べて確かめてください。EAの運用の見守り方は、EAの監視と、ボラティリティの記事にまとめています。
この測定でわからないこと
測ったのは値幅とスプレッドで、市場予想との差、向きが続くかどうか、止めた場合の損益は測っていません。気配値はDukascopyのもので、ほかのFX会社のスプレッドや約定とは違います。平常時の日に別の指標が入ることがある点も、前の節で書いたとおりです。
アドバイスUSD/JPYの発表後5分は、29.2〜42.0pips動いたよ。自分のEAの損切り幅と比べてみてね。
要点
・測ったのは、2016年1月〜2026年9月の雇用統計128回・CPI128回・FOMC85回(USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD)
・USD/JPYの発表後5分の値幅の中央値は、雇用統計42.0pips(平常時の3.9倍)、CPI29.2pips(3.2倍)、FOMC34.4pips(5.2倍)
・発表前30分の値幅は平常時の0.8〜1.2倍。スプレッドは発表の1分前から広がり、USD/JPYで1.8〜2.8倍
・値幅が2倍を超えていた区間は、雇用統計とCPIが発表後30分まで、FOMCが60分まで
・USD/JPYの発表後5分の値幅の中央値は年で大きく違い、2020年が最小(雇用統計18.4pips・CPI5.7pips・FOMC14.6pips)、2024年が最大(98.9pips・86.2pips・54.2pips)
・5分後の向きが60分後も同じだった割合は、発表時68〜80%、平常時60〜69%
・発表0〜1分の最大スプレッドは、大きい方から5%目の回でUSD/JPYが16.9〜27.5pips(平常時3.1〜6.0pips)
・測っていないのは、止めた場合の損益、市場予想との差、FX会社ごとのスプレッドと約定
経済指標とEAのよくある質問
経済指標の発表時、EAは止めたほうがよいですか?
止めるかどうかは、EAの損切り幅と保有時間で決めます。USD/JPYの発表後30分の値幅は、平常時の2.2〜3.5倍でした。止めた場合の損益は、この記事では測っていません。
雇用統計は日本時間の何時に発表されますか?
夏時間は21時30分、冬時間は22時30分です。米国の発表は、午前8時30分(米東部時間)です。CPIも同じ時刻です。
FOMCの政策金利は、日本時間の何時に発表されますか?
夏時間は翌日の3時、冬時間は翌日の4時です。米東部時間の午後2時の発表で、記者会見は午後2時30分に始まります。
発表の前から、EAを止めますか?
値幅は発表の2分前まで平常時に近く、スプレッドは1分前から広がります。USD/JPYの発表前30分の値幅は0.8〜1.2倍、発表の1分前のスプレッドは1.8〜2.8倍でした。
発表のとき、スプレッドはどれくらい広がりますか?
USD/JPYの発表0〜1分の中央値は、0.8〜1.0pipsでした。平常時の同じ時間は0.44〜0.46pipsです。最大のスプレッドは、大きい方から5%目の回で16.9〜27.5pipsでした。FX会社ごとに違うので、自分の口座で確かめてください。
発表後に動いた向きは、そのまま続きますか?
5分後の向きが60分後も同じだった割合は、発表時で68〜80%、平常時で60〜69%でした。平常時でも6割以上は同じ向きです。止めた場合の損益は、測っていません。
MT4・MT5で、発表の時間にEAを止めるにはどうしますか?
EAの時間フィルターで、止める区間をサーバー時間で指定します。MT5はカレンダータブで発表予定を確認でき、MT4は公表予定で日付を確かめます。
経済指標でEAを止めるかのまとめ
Dukascopy のティックから作った足で、2016年1月〜2026年9月の雇用統計128回・CPI128回・FOMC85回を測ると、USD/JPYの発表後5分の値幅の中央値は、雇用統計が42.0pips(平常時の3.9倍)、CPIが29.2pips(3.2倍)、FOMCが34.4pips(5.2倍)でした。発表前30分の値幅は平常時の0.8〜1.2倍で、スプレッドは発表の1分前から広がりました。
値幅が2倍を超えていた区間は、雇用統計とCPIが発表後30分まで、FOMCが60分まででした。止めた場合の損益は測っていないので、止める区間は、自分のEAのバックテストとフォワードで確かめてから決めてください。発表時刻は夏時間と冬時間で1時間ずれるので、日本時間とサーバー時間の両方で見直してください。急な値動きへの備えは、EAの異常検知の記事にもまとめています。
この記事はFXの手法の情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。
⚠ リスクに関する注意事項
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