
Ulcer Indexとは|最高値からの下落を測るリスク指標

定義と由来
Ulcer Indexは、Peter Martin氏が1987年に考案した指標です。Martin氏自身のページ(Tangotools)では、最高値からの下落率(パーセント)を二乗した値の平均の平方根と説明されています。1989年に、Byron McCann氏との共著『The Investor’s Guide to Fidelity Funds』で最初に紹介されました。二乗するので、浅い下落が長く続くより、深い下落のほうが大きく効きます。
図は、USD/JPYの日足の終値14本です。青い線が終値、オレンジの線がそれまでの最高値、赤い面が最高値からの下落です。3月27日の終値150.850円が窓の最高値で、4月3日には146.253円まで下がり、最高値から3.05%下に位置しました。この14日のUlcer Indexは1.35です。同じ日までの14日の日次変化率の標準偏差は0.67%でした。
値の読み方
単位は%です。値が大きいほど、最高値から下に離れた日が多いか、離れ方が深いことを表します。5通貨の14日の窓(14,030本)で測ると、Ulcer Indexの中央値は0.70で、小さいほうから10%目が0.25、90%目が1.86でした。標準偏差の中央値は0.48%で、10%目が0.29%、90%目が0.81%です。
アドバイスUlcer Indexは、最高値から下がった日が多いほど大きくなるよ。図の14日は1.35だったね。
Ulcer Indexの計算方法|14日の例を1日ずつ

計算の手順
- 窓の最初の日から数えて、その日までのいちばん高い終値を求めます。
- 各日の下落率を、終値÷最高値−1(%)で出します。最高値を更新した日は0です。
- 下落率を二乗して、14日分を平均します。
- その平均の平方根が、Ulcer Indexです。
表の14日では、二乗の合計が25.67、14で割ると1.834、平方根が1.35です。3月19日から3月27日までの7日間の二乗の合計は0.35で、全体の約1.4%です。4月2日から4月7日の4日間の二乗の合計は23.97で、全体の約93%を占めました。浅い下落が長く続いても値はあまり増えず、深い下落の日が値を大きく動かします。
期間と最高値の取り方
この記事は、窓の期間を14日にして、Martin氏のページにある擬似コードと同じく、窓の最初から数えた最高値を使いました。StockChartsのChartSchoolは、期間の初期値を14とし、各日の下落率を直近14日の最高終値から出して、14日分を二乗平均してから平方根をとる形で説明しています。最高値の取り方が違うため、同じ日の値は同じになりません。
5通貨で、両方の形が出せる13,970の窓について同じ日の値を比べると、StockChartsの形はこの記事の形の中央値で1.25倍でした。10%目から90%目までは1.00〜3.28倍です。Ulcer Indexは、使う形と期間をそろえて比べる指標です。
アドバイス図の14日は、下落率を二乗して平均して、平方根をとったら1.35になったよ。深く下がった4日で合計の約93%だったね。
Ulcer Indexと標準偏差の違い|どの局面でずれるか

測り方
日足は、Dukascopy のティックから作った1時間足(bid)を、協定世界時の0時で区切ってまとめて作りました。日曜の足は月曜に入れ、最後の途中の日は除いて、各通貨2,820本です。時間足が12本に満たない薄い日が各通貨13日ありますが、そのまま含めています。14日の窓を1日ずつずらし、5通貨で14,030本(各通貨2,806本)を作りました。標準偏差は、同じ日までの14日の日次変化率(%)の標本標準偏差です。
上がった窓と下がった窓
14日の窓を、最後の終値が最初の終値より高い窓(7,450本)と低い窓(6,578本)に分けました。最初と最後の終値が同じ2本は除いています。標準偏差の中央値は、上がった窓が0.48%、下がった窓が0.48%で同じでした。Ulcer Indexの中央値は、上がった窓が0.45、下がった窓が1.14で、下がった窓が約2.5倍です。標準偏差は上げ下げの向きを区別せず、Ulcer Indexは下落を拾うので、この差が出ます。

順位の重なり
通貨ごとに、標準偏差とUlcer Indexを小さい順に並べて5等分し、組み合わせごとの割合を出したのが図です。順位が無関係なら25マスとも4.0%になります。実際は、標準偏差もUlcer Indexも最も低いマスと最も高いマスが9.1%ずつでした。順位の相関(スピアマン)は、通貨ごとに0.30(EUR/USD)から0.64(USD/JPY)でした。
標準偏差が上位20%の窓のうち、Ulcer Indexも上位20%なのは45.6%、下位40%(1と2のグループ)は15.6%でした。Ulcer Indexが上位20%の窓で標準偏差が下位40%なのは14.4%です。2つの指標は同じ方向に動くことが多い一方、同じ標準偏差でも、下がって終わる窓ではUlcer Indexが大きくなります。
標準偏差・最大ドローダウンとの違い
| 項目 | Ulcer Index | 標準偏差 | 最大ドローダウン |
|---|---|---|---|
| 使う値 | 最高値からの下落率 | 日次変化率 | 最も深い下落率 |
| 上昇の扱い | 最高値の更新で下落率0 | 変動として入る | 下落だけ |
| 下落の長さ | 入る | 区別しない | 入らない |
| 単位 | % | % | % |
最大ドローダウンは、最も深い1点だけを見ます。下がって短期間で戻った場合も、長く戻らなかった場合も、最も深い値が同じなら同じ値です。Ulcer Indexは、最高値より下にいた日の分だけ値が積み上がるので、深さと長さの両方が入ります。
アドバイス標準偏差の中央値は、上がった窓も下がった窓も0.48%だったよ。Ulcer Indexは0.45と1.14で、違いが出たね。
Ulcer Indexが高いあとの値動き|下落の深さと戻りを測る

下落の深さ
14日の窓が終わった次の日から20営業日の終値のうち、最も安い終値までの下落率を、窓の最後の終値を基準に出しました。上がり続けて下がらなかった場合は0です。窓は5通貨で13,930本(20営業日先まで見られるもの)で、通貨ごとにUlcer Indexが上位20%・下位20%の窓、標準偏差が上位20%・下位20%の窓に分けました。各グループは約2,790本です。
比べる相手は、各通貨の日次変化の並び順を無作為に入れ替えて価格を作り直し、同じ手順で数える作業を1,000回繰り返した結果です。グループの境目も、作り直した系列の値で決め直しています。その中央値の5〜95パーセンタイルを、並べ替えた系列の範囲とします。窓は1日ずつずれて重なるため、約2,790本は独立ではなく、範囲も同じ重なり方で出しています。
下落の深さの中央値は、Ulcer Indexが高い20%が1.19%(範囲1.08〜1.32%)、低い20%が1.10%(範囲1.09〜1.34%)でした。標準偏差が高い20%は1.19%(範囲1.08〜1.34%)、低い20%は1.06%(範囲1.08〜1.35%)です。標準偏差が低い20%だけは、範囲の下端をわずかに下回りました。Ulcer Indexが高い窓と低い窓の差は0.09ポイントで、どちらも範囲に入り、偶然の差と区別できませんでした。

最高値へ戻るまで
窓の最後の終値から20営業日以内に、その窓のいちばん高い終値以上の終値をつけた窓の割合も数えました。Ulcer Indexが高い20%は31%で、並べ替えた系列の範囲(22〜28%)を約3ポイント上回りました。低い20%は84%(範囲85〜88%)で、範囲の下端をわずかに下回りました。標準偏差が高い20%は52%(範囲46〜54%)で範囲に入り、低い20%は64%(範囲65〜72%)で、同じく下端をわずかに下回りました。
最高値以上へ戻るまでの日数の中央値は、Ulcer Indexが高い20%が47日、低い20%が1日でした(60日たっても戻らなかった窓は60日として数えています)。Ulcer Indexが低い窓は、最後の終値も最高値に近いので、戻るまでの日数が短くなるのは計算の作りによるものです。範囲との差は最大でも約3ポイントで、売買に使える差かどうかは測っていません。
アドバイスUlcer Indexが高い窓のあとの下落の深さは1.19%で、範囲の1.08〜1.32%に入ったよ。高いから次も深く下がる、とは言えなかったね。
Ulcer Indexの使い方|UPIと買い持ちの例

UPI(Martin Ratio)
Martin氏のページでは、シャープレシオの分母の標準偏差をUlcer Indexに置き換えた指標を、Ulcer Performance Index(UPI)、またはMartin Ratioと呼んでいます。式は次のとおりです。
UPI =(年率リターン − 無リスク金利)÷ Ulcer Index
5通貨の買い持ちで測った例
5通貨ペアを2016年1月4日の終値で買い、2026年10月26日まで(約10.8年)持ち続けた場合の値を、日足の終値から出しました。スワップは含めず、無リスク金利は0としています。Ulcer Indexは14日の窓ではなく、期間全体で、それまでの最高終値からの下落率を二乗平均した平方根です。年率は−0.90〜2.89%、Ulcer Indexは6.92〜12.65、UPIは−0.07〜0.42でした。
Ulcer Indexが大きい順は、GBP/USD(12.65)、EUR/USD(10.10)、AUD/JPY(10.04)、USD/JPY(8.51)、EUR/JPY(6.92)です。最大下落率が大きい順は、AUD/JPY(30.44%)、GBP/USD(27.47%)、EUR/USD(23.30%)、USD/JPY(17.52%)、EUR/JPY(16.39%)で、先頭の2つが入れ替わります。最大下落率の順とUlcer Indexの順は一致しません。AUD/JPYは最も深く下がりましたが、期間全体で見たUlcer Indexは、GBP/USDのほうが大きい結果でした。
EAの資産曲線に使うとき
終値のかわりに、口座残高や有効証拠金の日次の値を入れても、同じ計算ができます。バックテストやフォワードの結果を、総利益や最大ドローダウンだけでなく、最高値より下にいた期間まで含めて比べられます。この記事では、EAの資産曲線は測っていません。リスクリワードや資金管理と合わせて、複数の物差しで見てください。EAを実績から選ぶ場合は、おすすめEAやEAの始め方にまとめています。
測っていないこと
この記事で測ったのは、日足での14日のUlcer Indexと標準偏差の関係、窓のあとの20営業日の下落の深さと戻り、5通貨の買い持ちの値です。14日以外の期間、時間足、EAの資産曲線、売買の損益、Ulcer Indexの値で売買を分けたときの成績は測っていません。値の良し悪しの境目も測っていないため、同じ通貨・同じ期間・同じ計算の形で比べる使い方になります。
アドバイス5通貨の買い持ちでは、Ulcer Indexが大きいのはGBP/USDの12.65、小さいのはEUR/JPYの6.92だったよ。最大下落率の順とは先頭が入れ替わったね。
要点
・Ulcer Indexは、最高値からの下落率(%)を二乗して平均し、平方根をとった指標。上昇だけなら0
・5通貨の日足の14日の窓(14,030本)で、中央値は0.70、10%目から90%目は0.25〜1.86
・14日が上がって終わった窓と下がって終わった窓で、標準偏差の中央値は同じ0.48%。Ulcer Indexは0.45と1.14
・標準偏差とUlcer Indexの順位の相関は、通貨ごとに0.30〜0.64
・Ulcer Indexが高い上位20%の窓のあと、20営業日の下落の深さの中央値は1.19%で、並べ替えた系列の範囲(1.08〜1.32%)に入った
・最高値へ20営業日以内に戻った割合は、Ulcer Indexが高い20%で31%(範囲22〜28%)
・測っていないのは、14日以外の期間、EAの資産曲線、売買の損益
Ulcer Indexのよくある質問
Ulcer Indexとは何ですか?
最高値からの下落率を二乗平均した、リスク指標です。下落が深く、長く続くほど値が大きくなります。
標準偏差とはどう違いますか?
標準偏差は上げ下げの向きを区別しません。5通貨の14日の窓では、上がって終わった窓も下がって終わった窓も標準偏差の中央値は0.48%で、Ulcer Indexは0.45と1.14でした。
いくつなら良い値ですか?
良し悪しの境目は測っていません。14日の窓の中央値は0.70で、10%目から90%目が0.25〜1.86です。同じ通貨・同じ期間・同じ計算の形で比べてください。
Ulcer Indexが高いと、このあと大きく下がりますか?
測った範囲では、言えませんでした。高い上位20%の窓のあと、20営業日の下落の深さの中央値は1.19%で、並べ替えた系列の範囲に入りました。
期間は何日にすればいいですか?
この記事は14日で測りました。StockChartsの初期値も14です。ほかの期間は測っていません。
EAの評価にも使えますか?
資産曲線の日次の値で、同じ計算ができます。EAの資産曲線は、この記事の測定に含めていません。
Ulcer Indexのまとめ
Ulcer Indexは、最高値からの下落率を二乗平均して平方根をとった指標で、最高値を更新し続けると0になります。Dukascopy のティックから作った5通貨の日足(2016年1月4日〜2026年10月26日)で14日の窓を測ると、中央値は0.70でした。標準偏差の中央値は、上がって終わった窓も下がって終わった窓も0.48%でしたが、Ulcer Indexは0.45と1.14で、下落を拾うのがUlcer Indexです。
Ulcer Indexが高い上位20%の窓のあと、20営業日の下落の深さの中央値は1.19%で、並べ替えた系列の範囲(1.08〜1.32%)に入りました。最高値へ20営業日以内に戻った割合は31%で、範囲(22〜28%)を約3ポイント上回りました。測っていない売買の損益やEAの資産曲線は、自分のデータで確かめてから使ってください。
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