
FX 法人化とは|個人との違いと課税の仕組み

個人でFXをするときの税
個人のFXは、国内の金融商品取引業者との取引なら、利益に一律20.315%(所得税15%・復興特別所得税・住民税5%)がかかる申告分離課税です。損失が出た年は、翌年から3年間、利益と通算できます(国税庁 No.1521)。海外の業者との取引はこの扱いに入らず、ほかの所得と合わせて税率が上がる総合課税になります。所得税は5%から45%の7段階で、住民税10%が加わります(国税庁 No.2260)。
法人でFXをするときの税
法人にすると、FXの利益は会社の所得になり、図の5つの税がかかります。法人税は所得800万円まで15%、超える部分は23.2%です。これに地方法人税、法人都民税、法人事業税、特別法人事業税が加わります。会社が赤字でも、法人都民税の均等割として年7万円がかかります。
会社の利益は、個人の所得とは別です。会社に残した利益をあとで自分に移すには、役員報酬や配当を通すので、その分の税がもう一度かかります。次の節の計算は、会社に残した分も手取りに含めています。
アドバイス法人の税は、図の5つを足して考えるよ。赤字でも均等割の年7万円は払うんだ。
FX 法人化の税額比較|利益300万〜3,000万円で計算

計算の前提
比べたのは、年の利益が毎年同じ場合の手取りです。個人は、国内業者の申告分離課税と、海外業者の総合課税の2通りです。法人は、役員報酬を10万円刻みで変えて、手取りが最大になる額を選びました。手取りは、本人の現金と、会社に残る利益の合計です。
置いた条件は、東京23区に住む単身で、ほかの所得がなく、2026年分の税率で計算することです。法人は資本金1,000万円以下・従業者50人以下・事務所1か所で、協会けんぽ東京の料率(40歳未満)を使いました。個人の国民健康保険と国民年金は、この節の計算に入れていません。国保を入れた場合は、後の小節で別に出します。報酬を0円にした法人の本人の保険も、同じく入れていません。
手取りの比較

表の列は、利益、個人国内(申告分離)、個人海外(総合課税)、法人(役員報酬が最適な場合)の順です。利益1,000万円では、手取りが国内の個人808万円、海外の個人744万円、法人765万円でした。法人の役員報酬は、利益800万円までが0円、1,000万円が120万円、1,500万円から3,000万円が470万円です。
利益が300万円・500万円の段階では、法人は229万円・385万円で、どちらの個人よりも少なくなりました。利益が少ないうちは、会社に残す利益にも法人税等がかかる一方で、個人の税率は低いためです。
法人と個人の差

法人の手取りから個人の手取りを引くと、国内業者の個人に対しては、利益300万円で28万円少なく、1,000万円で43万円、3,000万円で290万円少なくなります。差はずっとマイナスで、損益が分かれる利益はありませんでした。
海外業者の個人に対しては、利益800万円でほぼ同じで、およそ810万円を境に法人が上回ります。差は、1,000万円で21万円、1,500万円で78万円、2,000万円で138万円、3,000万円で341万円です。海外業者の個人は総合課税の税率が上がっていくため、利益が増えるほど差が開きます。
利益1,000万円の内訳

利益1,000万円を4つの場合で分けると、個人の国内業者は税192万円で手取り808万円、海外業者は税256万円で手取り744万円です。役員報酬120万円の法人は、法人の税等と本人の住民税の合計が202万円、社会保険料が33万円で、手取り765万円になりました。
役員報酬を600万円にすると、法人の税等は75万円、本人の税は47万円まで下がります。しかし、社会保険料が170万円に増え、手取りは709万円です。報酬を上げて税を下げても、社会保険料の増え方が大きいため、手取りは減りました。
国保と年金を入れた国内業者の個人との比較

個人の国民健康保険と国民年金を引くと、国内業者の個人の手取りは下がります。国保は上限の96万円、国民年金は年21.5万円(月1万7,920円)を引いた場合の比較が表です。列の「法人−個人」は、法人の手取りから個人の手取りを引いた額で、プラスなら法人が上です。
利益1,000万円では、個人714万円・法人765万円で、法人が51万円上回ります。利益1,500万円は個人1,113万円・法人1,104万円で9万円下回り、2,000万円は75万円、3,000万円は196万円下回ります。法人が上回るのは、利益約1,430万円までです。
この比較は、国保を上限の96万円と置いた計算で、個人に不利な仮定です。実際の国保が上限より低ければ、個人の手取りは増え、法人との差は小さくなります。
法人が上回る利益のまとめ
| 比べる相手 | 法人が上回る利益 | 利益1,000万円の差 |
|---|---|---|
| 海外業者の個人 | 約810万円から | 21万円上 |
| 国内業者の個人(国保・年金なし) | 3,000万円まで上回らない | 43万円下 |
| 国内業者の個人(国保・年金あり) | 約1,430万円まで | 51万円上 |
表の「利益1,000万円の差」は、法人の手取りから、比べる相手の手取りを引いた額です。計算の条件は、前の小節と同じで、国保あり・なしの違いは個人の国民健康保険と国民年金を引くかどうかです。
アドバイス国保と年金を入れても、法人が上なのは利益1,430万円ごろまでだよ。それより上は、個人のほうが手取りが多いんだ。
FX 法人化の設立手続き|流れと費用

設立から届出までの流れ
株式会社は、定款を作って公証役場で認証を受けます。合同会社は認証が要りません。次に資本金を払い込み、法務局で設立登記をします。登記をした日が、会社の設立日です。
設立のあとは、税務署へ届出を出します。法人設立届出書は、設立の日から2か月以内です。青色申告の承認申請書は、設立から3か月後の日と最初の決算日のうち早い日の前日までに出します(国税庁 No.5100)。
設立にかかる最低費用

株式会社は、定款の認証が1万5,000円から5万円で、登録免許税は資本金の0.7%(最低15万円)です。認証が1万5,000円になるのは、資本金100万円未満で、発起人が個人3人以下、発起人が株式を全部引き受け、取締役会を置かない場合です。合同会社は、認証が要らず、登録免許税は資本金の0.7%(最低6万円)です。最低の合計は、株式会社が16万5,000円、合同会社が6万円で、印紙代や登記簿の取得費は含みません。
アドバイス設立の最低費用は、株式会社が16万5,000円、合同会社が6万円だよ。届出は期限があるから、日付を先に確かめてね。
FX 法人化後の税務管理|役員報酬・青色申告・消費税

役員報酬の決め方
法人が役員に払う給与は、図の3種類だけが経費(損金)になります。ふつうは、毎月同じ額を払う定期同額給与です。途中で額を変えると、経費にならない部分が出る場合があるので、変更の時期は原則として期首から3か月以内にします(国税庁 No.5211)。
前の節の計算では、役員報酬を0円から利益まで10万円刻みで変え、手取りが最大になる額を選びました。報酬を増やすと本人の税と社会保険料が増え、減らすと法人の税等が増えるため、手取りは報酬の額で変わります。
青色申告と赤字の繰越
法人も、青色申告の承認を受けると、赤字を繰り越せます。青色申告の法人は、赤字の繰越期間が10年です(国税庁 No.5762)。個人の申告分離課税は3年なので、期間は法人が長くなります。承認申請書は、前の節の期限までに出します。
消費税の判定
消費税は、基準期間(原則として2年前)の課税売上高が1,000万円以下なら、免税事業者になれます(国税庁 No.6501)。設立直後の事業年度は基準期間がなく、資本金などで判定が変わるため、設立時に税務署の案内で確かめます。
アドバイス役員報酬は、毎月同じ額にするのが基本だよ。赤字の繰越は、法人が10年、個人の申告分離が3年だね。
FX 法人化後の社会保険|保険料率と上限

社会保険の料率
役員報酬を払うと、本人と会社が社会保険に入ります。料率は、健康保険が9.85%、子ども・子育て支援金が0.23%、厚生年金が18.3%で、介護保険は40歳から64歳に1.62%が加わります。本人と会社が半分ずつ払います。健康保険の標準報酬月額は上限が139万円、厚生年金は65万円です。
計算では、40歳未満として、介護保険は入れていません。40歳以上の場合は、保険料が増えます。
役員報酬ごとの保険料

年の保険料は、役員報酬120万円で33万円、300万円で89万円、470万円で129万円、600万円で170万円、1,000万円で243万円でした。本人分と会社分を足した額です。報酬が増えると、会社が払う分も同じだけ増えます。
個人事業主の国民健康保険と国民年金は、利益の大きさに関わらず上限があるため、法人の社会保険料が重くなる場面があります。前の節の、国保と年金を入れた比較では、利益1,500万円以上で個人が上回りました。
アドバイス社会保険料は、本人と会社が半分ずつ払うよ。報酬600万円なら、年170万円になるんだ。
FX 法人化の判断手順|検討の4手順

4つの手順
1つ目は、取引している業者が国内か海外かを確かめることです。国内業者の個人は申告分離課税の20.315%で、海外業者は総合課税になります。この区分で、法人が上回る利益が約810万円か、上回らないかに分かれました。
2つ目は、年の利益の見込みを置くことです。赤字の年を含めた複数年で考えます。3つ目は、この記事の計算に、自分の国保・年金・住所の税率を入れ直して、個人と法人の手取りを並べることです。4つ目は、設立費用と決算の手間、会社に残した分を引き出すときの税を足すことです。
この計算に入れていないもの
この記事の計算は、毎年同じ利益が続くとした一例です。個人の国保と国民年金は、上限を置いた比較だけです。会社に残した利益をあとで引き出す税、税理士の報酬、決算の手間、資本金が1,000万円を超える場合の税率は入れていません。条件が違えば、結論も変わります。
アドバイス海外業者の個人は、利益約810万円で法人と並ぶよ。国内業者の個人は、国保を入れても約1,430万円までしか法人が上回らないね。
要点
・国内業者の個人は申告分離の20.315%。国保と年金を入れない計算では、利益3,000万円まで法人が上回らない
・海外業者の個人は総合課税。利益約810万円を境に、法人の手取りが上回る
・国保を上限の96万円で入れた国内業者の個人との比較では、法人が上回るのは利益約1,430万円まで。利益1,000万円で51万円差
・利益1,000万円の手取りは、国内の個人808万円・海外の個人744万円・法人765万円(役員報酬120万円)
・設立の最低費用は、株式会社が16万5,000円、合同会社が6万円。設立届は2か月以内
・役員報酬の社会保険料は、120万円で年33万円、600万円で170万円
FX 法人化のよくある質問
FX法人化は、利益がいくらから得ですか?
利益だけでは決まりません。国内業者の個人と比べると、国保と年金を入れない計算では、利益3,000万円まで法人が上回りませんでした。海外業者の個人なら、約810万円が境です。
設立にはいくらかかりますか?
最低で、株式会社が16万5,000円、合同会社が6万円です。定款の認証と登録免許税の下限の合計で、そのほかの実費は含みません。
役員報酬は、あとから自由に変えられますか?
自由には変えられません。毎月同じ額を払う定期同額給与が基本で、途中で変えると経費にならない部分が出る場合があります。
法人の赤字は、何年繰り越せますか?
青色申告の法人は10年です。個人の国内業者の申告分離課税は3年です。赤字の年も、法人は均等割として年7万円がかかります。
法人になると、消費税はかかりますか?
免税事業者になれる場合があります。基準期間の課税売上高が1,000万円以下なら免税です。設立直後の判定は、税務署の案内で確かめてください。
国民健康保険の代わりに、社会保険に入るのですか?
役員報酬を払うと入ります。協会けんぽ東京の料率は、健康保険が9.85%、厚生年金が18.3%で、本人と会社が半分ずつ払います。
FX 法人化のまとめ
この記事では、2026年分の税率を使い、利益が毎年同じ場合の手取りを個人と法人で比べました。国内業者の個人は申告分離の20.315%で、国保と年金を入れない計算では、利益3,000万円まで法人が上回りませんでした。国保を上限で入れた場合は、法人が上回るのは利益約1,430万円までです。海外業者の個人は総合課税で、約810万円を境に法人が上回ります。
利益1,000万円の手取りは、国内の個人808万円・海外の個人744万円・法人765万円です。法人にすると、設立に最低6万円から16万5,000円がかかり、役員報酬の社会保険料は年33万円から毎年かかります。個人の国保・年金の実額や会社に残した利益を引き出す税は、自分の条件で計算し直してください。





この記事はFXの税務の情報提供で、特定の取引や法人化をすすめるものではありません。税額は条件によって変わるため、実際の申告は税務署や税理士に確認してください。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。
⚠ リスクに関する注意事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。













