
FXのリスク管理とは|1回の損失を口座の何%にするかを決めること

FXで管理するリスクの種類
FXで管理するリスクは、大きく3つに分けられます。1つ目は価格変動のリスクで、持っている間に相場が不利な向きに動くと、損失が出ます。2つ目はレバレッジのリスクで、少ない証拠金で大きな金額を取引できるぶん、小さな値動きでも口座残高への影響が大きくなります。3つ目は、約定のずれです。損切りの注文を置いても、実際に決済される価格が注文の価格とずれて、損失が計画より大きくなることがあります。このずれの大きさは、後の節で測っています。
リスク管理は、この3つに対して、1回の損失を口座の何%までにするか、という1つの数字で上限を決める作業です。損切りの考え方は損切りルールの記事、資金管理の基本は資金管理の記事にまとめています。
下落を戻すには、下落より大きな上昇が要る
口座が下がるほど、元に戻すのに必要な上昇の割合は、急に大きくなります。残高が10%下がると、戻すには11.1%の上昇が必要です。20%下がると25.0%、30%下がると42.9%、50%下がると100.0%、70%下がると233.3%が必要になります。下落が深くなるほど、戻すのが難しくなるので、1回ごとの損失を小さくして、下落を浅く抑えることが、リスク管理の中心になります。
アドバイス口座が50%下がると、戻すには100%の上昇が必要だよ。深く下がる前に、1回の損失を小さく決めておこうね。
FXのリスク管理の制度|個人の証拠金は想定元本の4%以上、ロスカットは義務

証拠金とレバレッジの上限
金融先物取引業協会(FFAJ)の個人顧客を相手方とするFX取引に係る証拠金規制によると、FX会社は、個人の顧客から、取引金額(想定元本)の4%以上の証拠金を預かる必要があります。これがレバレッジの上限25倍にあたり、2011年8月1日から適用されています。施行(2010年8月1日)後の1年間は2%で、上限は50倍でした。
4%以上の証拠金が必要になるのは、新しく建てるときと、FX会社が営業日ごとに1回以上決める判定の時刻です。不足したときは、不足額を預けるか、ポジションを決済する必要があり、値が戻るのを待つことはできません。法人の口座は別の規制で、この記事は個人を対象にしています。
ロスカットの義務と、損失が証拠金を超える場合
FFAJのロスカット・ルールの整備・遵守の義務付けによると、2009年の内閣府令の改正で、ロスカットのルールを作り、お客さまと決めた内容を守ることが、FX会社の義務になりました。ロスカットは、損失の額を約束した金額に必ず限るものではありません。損失が決めた水準に達してから決済の手続きが始まるため、実際の損失は水準より大きくなることがあり、ルールどおりに実行されても、預けた証拠金を超える損失が出ることがあります。
金融庁の金融商品取引業者等向けの総合的な監督指針(IV 第一種金融商品取引業者関係)も、ロスカットのルールがあっても、相場の急激な変動で証拠金を上回る損失が生じるおそれがある場合は、広告などでその旨を適切に表示するよう求めています(IV-3-4-2)。ロスカットを発動する水準は、会社ごとの決まりなので、取引する会社の説明で確認してください。ロスカットと維持率の計算はロスカットの記事、追証との違いはマージンコールの記事で説明しています。
アドバイス個人の上限は25倍だよ。ただ、ロスカットがあっても、損失が証拠金を超えることはあるよ。
FXのリスク管理のロット計算|1回の損失率から、損切り幅とロットを決める

ロットの計算式と、実際の足での例
ロット(通貨の量)は、1回で許せる損失の金額を、損切り幅で割って決めます。たとえば、口座が100万円で、1回の損失を1%(1万円)にするとします。図は、実際のUSD/JPYの1時間足で、2025年7月31日9時(UTC)の始値付近の149.64円で買った例です。損切り幅は1.30円なので、損切りは148.34円、利確は150.94円になります。ロットは、10,000円 ÷ 1.30円で、約7,692通貨です。
このポジションの金額は約115万円で、口座に対する倍率(実効レバレッジ)は約1.15倍です。必要な証拠金は、4%で約4.6万円になります。この例は、損切りに届いた1件で、2025年8月1日13時台(UTC)に決済されました。損失は約1万円で、成績の例ではありません。同じ損切り幅で、1回の損失を5%(5万円)にすると、ロットは約38,462通貨、ポジションの金額は約575万円、実効レバレッジは約5.8倍になります。ロットの計算の詳細はロット計算の記事にまとめています。
損失率ごとの実効レバレッジ

損切り幅を、入る前の14日の1日の値幅(高値と安値の差)の平均にして、5通貨で実効レバレッジを計算しました。この値幅は、価格の中央値で、USD/JPYが0.74%(92pips)、EUR/USDが0.66%(74pips)、GBP/USDが0.76%(99pips)、EUR/JPYが0.75%(105pips)、AUD/JPYが0.96%(84pips)です。1回の損失率を、この割合で割ると、1%で1.0〜1.5倍、2%で2.1〜3.0倍、5%で5.2〜7.6倍になりました。
ペア別では、1%がUSD/JPY 1.4倍・EUR/USD 1.5倍・GBP/USD 1.3倍・EUR/JPY 1.3倍・AUD/JPY 1.0倍、2%が2.7倍・3.0倍・2.6倍・2.7倍・2.1倍、5%が6.8倍・7.6倍・6.6倍・6.7倍・5.2倍です。同じ損失率でも、損切り幅が小さい通貨ペアほど、ロットが大きくなり、実効レバレッジが高くなります。どれも25倍の上限よりずっと低い値でした。
アドバイスロットは「許せる損失 ÷ 損切り幅」で決めるよ。5%にすると、実効レバレッジは5〜8倍になるよ。
FXのリスク管理の測定条件|同じ売買に、1回の損失率だけを変える

売買のつくり方
測ったのは、1回の損失の大きさを変えると、口座の下落がどう変わるかです。売買の方法の良し悪しを探す測定ではないので、入る向きと時刻はランダムにしました。通貨は、USD/JPY・EUR/USD・GBP/USD・EUR/JPY・AUD/JPYの5つで、Dukascopyのティックから作った1時間足(bid、時刻はUTC)を使います。1日は、ニューヨーク時間の17時で区切りました。
入るのは、1時間足の始値で、向きは買いか売りをランダムに選びます。買いはask(bidに、その年のスプレッドの中央値を足した価格)で入ってbidで決済し、売りはbidで入ってaskで決済するので、往復のスプレッドを含みます。損切りと利確は同じ幅(1:1)で、入る前の14日の1日の値幅の平均です。1本の足の中で両方に届いたときは、損切りを先にしました。足の始値で線を飛び越えていた場合は、始値で決済します。240時間たっても決済されなければ、その足の終値で決済します。
口座の動かし方と、測定の限界
1回の損益を、損切り幅を1とした数(R)にして、残高に(1 + 損失率 × R)を掛けました。損失率は、1%・2%・5%の3つです。1本の売買列は、ランダムな開始の足から、前の売買が決済されたあとに次に入る形で、200回続きます。5通貨それぞれ4,000本、合計20,000本で、4,000,000回の売買です。開始の日は2016年1月21日〜2025年2月19日で、1本の期間の中央値は656日(537〜776日)でした。
全売買のRの平均は−0.0079で、スプレッド込みのため、わずかにマイナスです。損切りに届いたのが49.6%、利確に届いたのが48.8%、240時間の打ち切りなどが1.6%でした。同じ期間の相場を何本もの列が重なって使うので、20,000本は独立ではありません。開始の日は2025年2月までで、その後に始まった列はありません。損切り幅は、通貨ごとに価格の0.66〜0.96%(中央値)で、損切り幅を変えた場合は測っていません。
図は、同じ30本の売買列(5通貨から6本ずつ)に、損失率だけを変えて当てはめたものです。1%と2%では、残高が0.5以下になった列はなく、5%では30本のうち14本(47%)が0.5以下になりました。同じ売買でも、1回の損失を大きくすると、残高の振れ幅が大きくなります。
アドバイス図の30本は、どの損失率も同じ売買だよ。5%にすると、14本が残高0.5以下になったね。
FXのリスク管理と最大下落|損失率1%は15.1%、2%は28.6%、5%は60.2%

最大下落の中央値と、深く下がる列の割合
最大下落は、残高が高値から下がった割合の、200回の中での最大です。20,000本の中央値は、1%が15.1%、2%が28.6%、5%が60.2%でした。10%の列が超える下落は、1%が24.6%、2%が44.0%、5%が79.1%で、99%の列が超える下落は、1%が33.1%、2%が56.0%、5%が88.7%です。
最大下落が20%以上になった列の割合は、1%が24.9%、2%が82.3%、5%がほぼすべて(99.99%)でした。30%以上は、1%が2.6%、2%が45.3%、5%が98.9%です。50%以上は、1%が0%、2%が3.8%、5%が72.8%で、1%で最も深かった列は47.4%でした。
許せる下落から、損失率を逆算する
中央値の最大下落から戻すのに必要な上昇は、1%で17.8%、2%で40.1%、5%で151.4%です。たとえば、最大下落を30%までにしたいなら、この測定では、2%でも半分近い列(45.3%)が超えましたが、1%なら超えた列は2.6%でした。測定は売買の方法がランダムなもので、実際の売買では、勝ち負けの偏りで結果が変わります。口座の下落をどこまで許せるかを先に決め、そこから1回の損失率を決めてください。理論上の破産確率はバルサラの破産確率の記事で計算しています。
アドバイス最大下落の中央値は、1%で15.1%、2%で28.6%、5%で60.2%だったよ。損失率を5倍にすると、下落の中央値は約4倍になったね。
FXのリスク管理と口座が半分になる割合|損失率5%は47.2%、1%は0本

半分になった列の数と、通貨・開始年による違い
200回の途中で、残高が一度でも開始の半分以下になった列は、1%が0本、2%が417本(2.1%)、5%が9,444本(47.2%)でした。ペア別(各4,000本)では、2%がUSD/JPYの69本・EUR/USDの86本・GBP/USDの80本・EUR/JPYの93本・AUD/JPYの89本で、合計417本です。5%は1,920本・1,810本・1,878本・1,867本・1,969本で、合計9,444本になります。割合では、5%が45.3〜49.2%で、通貨による差は小さい結果でした。
開始の年ごとに見ても、5%の割合は、2016〜2024年の開始で45.4〜49.8%でした。どの年の相場から始めても、大きな差は出ていません。ただし、列は同じ相場を重ねて使うので、年ごとの差を、この結果だけで比べることはできません。
200回後の残高

200回後の残高(開始を1)の中央値は、1%が0.97、2%が0.93、5%が0.72でした。小さいほうから10%目の値は、1%が0.81、2%が0.65、5%が0.29で、大きいほうから10%目の値は、1.17・1.33・1.77です。損失率が大きいほど、残高の幅が広がり、小さくなる列も大きくなる列も増えました。開始の1を下回って終わった列は、1%が57.5%、2%が60.3%、5%が68.1%で、5%では5.2%の列が、残高が0.2以下まで下がりました。
売買はランダムで、1回あたりの平均がわずかにマイナスなので、開始の1を下回る列のほうが多くなりました。この測定で見るのは、勝ち負けではなく、同じ売買で損失率を変えたときに、下落と半分になる割合がどう変わるかです。ほかの損失率や、損切りと利確が1:1でない場合は測っていません。損切りの幅と勝率の関係はリスクリワードレシオの記事、通貨を分けたときの下落の重なりはEAのポートフォリオの記事で見られます。
アドバイス口座が半分になった列は、2%で2.1%、5%で47.2%だったよ。1%では、20,000本のうち1本もなかったよ。
FXのリスク管理と連敗|200回の中の最長連敗は、中央値7回・最大25回

最長連敗の回数
200回の売買列ごとに、続けて損切りになった最長の回数を数えました。20,000本の中央値は7回、90%の列が9回以内、99%の列が13回以内で、最も長かった列は25回でした。5回以上の連敗があった列は96.9%、7回以上は55.8%、10回以上は9.4%です。ランダムに入って、損切りと利確が同じ幅でも、7回前後の連敗は、200回の間によく起きました。
連敗で減る割合
k回続けて損切りになると、残高は(1 − 損失率)をk回掛けた値になります。7回の連敗で減る割合は、1%が6.8%、2%が13.2%、5%が30.2%です。13回の連敗では、1%が12.2%、2%が23.1%、5%が48.7%になります。連敗の回数は自分では選べませんが、1回の損失率は選べます。勝率を測った結果はFXで勝てない原因の記事で、連敗の回数も見られます。
アドバイス最長の連敗は、中央値で7回だったよ。5%で7回続くと、口座は30.2%減る計算だね。
FXのリスク管理と損切り|計画より大きい損失が出た割合

損切りの損失が、計画より大きくなる場合
5通貨で、1時間足ごとに買いと売りの両方で入った670,464回のうち、損切りに届いたのは326,568件です。損失が損切り幅の1.05倍を超えたのは2,670件(0.82%)、1.2倍を超えたのは1,644件(0.50%)、2倍を超えたのは330件(0.10%)でした。多くの損切りは、計画の損失とほぼ同じでしたが、まれに大きくなります。
1回の損失率を5%にしていた場合、1.05倍の損切りは5.3%超、1.2倍は6.0%超、2倍は10.0%超の損失です。大きくなった原因は、分けて調べていません。ロスカットのずれの実測はロスカットの記事にもあります。損失率を決めるときは、計画どおりに損切りされる場合に加えて、ときどき計画を超えることも、見込んでおく必要があります。
損切りの置き方と、記録の取り方
損切りは、入る前に決めて、注文として置いておきます。幅は、そのときの値幅(ボラティリティ)をもとにして、ロットで1回の損失率をそろえます。損切りと利確を同時に置く注文はIFD・OCO・IFO注文の記事、利益を伸ばしながら損切りを動かす方法はトレーリングストップの記事で説明しています。
取引の記録(取引日記)には、入った日時・通貨・向き・損切り幅・ロット・結果を残します。1回の損失率が計画どおりだったか、連敗がどこまで続いたかを、自分のデータで確かめるためです。両建てでリスクを抑える方法はヘッジの記事、ナンピンやグリッドで損失が膨らむ場合はナンピンマーチンの記事とグリッドトレードの記事で測っています。
アドバイス損切りが計画の2倍を超えた件は、0.10%だったよ。まれでも起きるから、損失率に余裕を持たせてね。
要点
・リスク管理は、1回の損失を口座の何%にするかを先に決め、損切り幅からロットを逆算すること
・個人のFXは、証拠金が想定元本の4%以上(25倍まで)。ロスカットがあっても、損失が証拠金を超えることがある
・5通貨・20,000本の測定で、最大下落の中央値は、1回の損失が1%で15.1%、2%で28.6%、5%で60.2%
・口座が一度でも半分になった列は、1%が0本、2%が2.1%、5%が47.2%
・最長連敗の中央値は7回、最大は25回。5%で7連敗すると30.2%減る
・損切りの損失が計画の2倍を超えた件は0.10%。まれでも、損失率に余裕を持たせる
FXのリスク管理のよくある質問
FXのリスク管理で、まず何を決めればよいですか?
1回の損失を、口座残高の何%にするかです。その金額を損切り幅で割って、ロットを決めます。
1回の損失は、口座の何%にすればよいですか?
許せる下落から逆算して決めます。この測定では、最大下落の中央値が、1%で15.1%、2%で28.6%、5%で60.2%でした。
ロスカットがあれば、損失は証拠金の中に収まりますか?
収まらないことがあります。FFAJは、ルールどおりに実行されても、証拠金を超える損失が出ることがあると説明しています。
個人のFXのレバレッジは、何倍までですか?
25倍までです。証拠金が想定元本の4%以上、という規制によるもので、2011年8月1日から適用されています。
損切り幅から、ロットはどう計算しますか?
許せる損失の金額 ÷ 損切り幅です。1万円 ÷ 1.30円なら、約7,692通貨になります。
連敗は、何回くらい続きますか?
この測定では、200回の中の最長が、中央値で7回でした。99%の列は13回以内で、最長は25回です。
FXのリスク管理のまとめ
FXのリスク管理は、1回の損失を口座の何%にするかを決め、損切り幅からロットを逆算することです。個人のFXは、証拠金が想定元本の4%以上(25倍まで)で、ロスカットは義務ですが、ロスカットがあっても、損失が証拠金を超えることがあります。Dukascopyのティックから作った足で、5通貨のランダムな売買20,000本を測ると、最大下落の中央値は、1回の損失が1%で15.1%、2%で28.6%、5%で60.2%でした。
口座が一度でも半分になった列は、1%が0本、2%が2.1%、5%が47.2%です。損切りの損失が計画の2倍を超えた件も、0.10%ありました。測ったのはランダムな売買で、売買の方法の優劣は測っていません。許せる下落を先に決めて、そこから1回の損失率を決めてください。FX退場の記事では、実効レバレッジごとに資金がゼロになる逆行幅を測っています。
この記事はFXの情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。
⚠ リスクに関する注意事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。













