
塩漬けとは|含み損のポジションを持ち続けること

塩漬けの意味と使う言葉
塩漬けは、決まった定義のある用語ではありません。この記事では、買いでも売りでも、含み損になったポジションを損切りせず、建値に戻るまで持ち続けることを指します。使う言葉は、次の表のとおりです。

pipsは、値動きの単位です。円が入る通貨ペア(USD/JPYなど)では1pipsが0.01円、EUR/USDとGBP/USDでは0.0001ドルです。USD/JPYの100pipsは1円の動きにあたります。
実例|含み損100pipsから建値に戻るまで
図は、測った件の中から選んだ1件です。2023年11月1日(UTC)の12時の1時間足の終値151.179でUSD/JPYを買い、11月2日(UTC)に含み損が100pips(1円)に届きました。その後も下がり、最大の含み損は約200pips(約2円)になっています。建値に戻ったのは11月9日(UTC)ごろで、含み損が100pipsに届いてから7.4日後です。
1件の例なので、ほかの件が同じ経過をたどるとは限りません。次の節で、同じ条件で測った120,000件の結果を見ます。
アドバイス塩漬けは、含み損のまま持ち続けることだよ。図の例は、建値に戻るまで7.4日かかったね。
塩漬けは何日で戻るか|含み損から建値に戻るまでの実測

測り方|含み損が届く・建値に戻る
5通貨それぞれで、2016年1月3日〜2026年10月27日の中から、乱数で12,000か所の1時間足を選びました。その足の終値で、買いと売りを1回ずつ建てます。1件は、この1回のポジションです。5通貨×12,000か所×買い売りで、120,000件になります。
「含み損が届いた」は、建てたあとの1時間足の安値(売りは高値)が、建値から20・50・100pips以上離れた最初の足です。建てて365日以内に届いた件だけを数えます。「建値に戻った」は、その足より後の足の高値(売りは安値)が建値に届いた最初の足です。1時間足の中の値動きの順番は分からないため、含み損が届いた足の中での戻りは数えていません。含み損が届いてから365日がデータに収まらない件は除きました。スプレッド・スワップ・ロスカットは含めていません。同じ時期に建てた件は値動きが重なるため、件数ほど独立した結果ではありません。
含み損が深いほど、戻る割合は下がる
含み損が届いた件は、20pipsが117,825件、50pipsが114,719件、100pipsが109,674件でした。含み損が届いてから365日以内に建値へ戻った割合は、20pipsが98.2%、50pipsが95.7%、100pipsが91.7%です。30日以内に戻った割合は93.9%・85.9%・73.5%、90日以内は96.4%・91.5%・83.8%でした。含み損が深いほど、戻る割合は低く、戻るまでの日数は長くなっています。
戻るまでの日数の中央値と90%点

365日以内に戻った件で見ると、戻るまでの日数の中央値(真ん中の件)は、20pipsが0.3日、50pipsが2.3日、100pipsが6.8日です。90%の件が戻った日数は、9.5日、31.2日、73.0日でした。含み損が100pipsに届いてから1日以内に戻った割合は13.0%、7日以内は46.8%です。
戻らなかった割合は、年・買いと売り・通貨で違う

含み損が100pipsに届いた年ごとに、365日以内に戻らなかった割合を出すと、2024年の2.2%から2021年の17.1%までありました。年ごとの件数は9,301〜12,143件で、合計は109,674件です。戻らなかった割合が高い年は、2021年・2025年・2018年・2022年の順でした。同じ年の件は値動きが重なるため、年ごとの差は、この測定だけでは理由が分かりません。
含み損が100pipsに届いた件を買いと売りで分けると、365日以内に戻った割合は、買い(54,009件)が93.9%、売り(55,665件)が89.5%でした。通貨ペアでは、GBP/USDが94.0%、AUD/JPYが92.2%、USD/JPYが91.7%、EUR/JPYが91.0%、EUR/USDが89.2%です。買いと売りの差は、この期間の相場の向きで出た差かもしれず、売りのほうが戻りにくいと言えるかは分かりません。
アドバイス含み損が100pipsに届いた件の91.7%は、365日以内に戻ったよ。戻らなかった8.3%が、塩漬けで残る部分だね。
塩漬けの含み損はどこまで広がるか|最大の含み損の実測

戻るまでに、含み損はどこまで深くなるか
含み損が100pipsに届いた109,674件で、建値に戻るまで(戻らない件は365日後まで)の最大の含み損を測りました。5通貨をまとめた中央値は201pips、90%の件が収まる値は995pipsです。通貨ペアごとでは、中央値が195〜213pips、90%点が929〜1,090pipsでした。含み損が100pipsに届いた件の半分は、最大でも約200pips(USD/JPYで約2円)までに収まっています。
戻らなかった件の含み損
含み損が100pipsに届いて、365日以内に戻らなかったのは9,150件です。その最大の含み損は、中央値が1,577pips、90%点が2,556pipsでした。USD/JPYでは1,577pipsが約15.8円にあたります。戻った件を含む全体の中央値(201pips)の約8倍です。
建てたあと1年で、どこまで含み損になったか
建てたあと365日の間に、最大の含み損が何pipsに届いたかも数えました。次の表は、120,000件のうち、含み損が各pips以上になった割合です。含み損が届いたあと365日がデータに収まる件に絞った前の節の件数(109,674件など)より、対象が広くなっています。

5通貨の合計では、100pips以上が91.9%、300pips以上が76.3%、700pips以上が47.6%、1,000pips以上が32.1%でした。1pipsの価格幅は通貨ペアで違い、700pipsは円が入る通貨ペアで7円、EUR/USDとGBP/USDで0.07ドルです。700pips以上の割合は、USD/JPYが47.4%、EUR/USDが35.7%、GBP/USDが52.4%、EUR/JPYが53.7%、AUD/JPYが49.0%でした。同じpips数でも、通貨ペアで届く割合は違います。
アドバイス含み損が100pipsに届いた件の半分は、最大でも約200pipsまでだったよ。戻らなかった件は、中央値で1,577pipsまで深くなっているね。
塩漬けのリスク|証拠金・スワップ・ロスカット

証拠金が拘束される
ポジションを持っている間は、必要証拠金が口座に拘束されます。個人のFXでは、必要な額は取引の額の4%(または為替の変動を適切に反映した額)と、金融商品取引業等に関する内閣府令(第117条第1項第27号・第7項・第8項)に定められています。USD/JPYを150円で10,000通貨買うと、取引の額は150万円で、4%の6万円が拘束されます。塩漬けにしている間は、この分を新しい取引に使えません。
スワップは受け取りも支払いもある
スワップポイントは、2通貨の金利差を調整した金額で、ポジションを翌日に持ち越すと、受け取ることも支払うこともあります。水準は取り扱う会社で違い、土日の分は、水曜日の持ち越しでまとめて3日分が付くのが一般的ですが、日は会社で異なります。松井証券のスワップポイントの解説で確認しました。仕組みと計算はスワップポイントの記事にまとめています。塩漬けが長引いたとき、払う側なら、含み損とは別に毎日の支払いが増えます。受け取る側でも、含み損の変動より小さいかは、この記事では測っていません。
ロスカットで強制決済される
FX会社は、証拠金に対する比率(維持率)が一定の水準を下回ると、ポジションを強制決済します。どの水準で決済するか、事前に知らせるかは会社の規定です。DMM FXの公式ページは、維持率50%以下で全ポジションを強制決済し、事前の通知はないと書いています。維持率が70%を下回ると、1営業日に1回、アラートのメールを送ります。SBI FXトレードの公式ページは、約20秒ごとに判定し、50%未満で強制決済、100%と60%でアラームを知らせると書いています。仕組みと計算はロスカットの記事にまとめています。
図は、維持率を有効証拠金÷必要証拠金とし、50%で決済される会社を想定した計算です。10,000通貨を150円で買い、必要証拠金は取引額の4%(6万円)に固定しています。資金が10万円なら、建てた時の維持率は167%で、7円下がった143円がロスカットの価格になります。7円はUSD/JPYの700pipsで、前の節の表では、建てたあと365日以内に含み損が700pips以上になった件が、USD/JPYで47.4%ありました。ロスカットされたかどうかは、レートで必要証拠金が変わるため、測っていません。
アドバイス資金10万円で10,000通貨なら、7円下がるとロスカットになる計算だよ。塩漬けの間は、証拠金も拘束されたままだね。
塩漬けの解消方法|損切り・ナンピン・待つ・スワップ

損切りで損失を確定する
損切りは、含み損のポジションを決済して、損失を確定します。建玉が減るので、拘束されていた証拠金も空き、ロスカットの心配もなくなります。確定した損失は、その後に相場が戻っても取り戻せません。前の節のとおり、含み損が100pipsに届いた件の91.7%は365日以内に戻っていますが、戻らなかった8.3%の最大の含み損は中央値で1,577pipsでした。
ナンピンで平均建値を下げる
ナンピンは、含み損のポジションに、同じ向きのポジションを買い増して(売りなら売り増して)、平均建値を建値に近づける方法です。含み損が50pipsに届いた114,719件で、そのまま持った場合と、その時点で同じ大きさを1本足した場合を比べました。足した場合の「戻る」は、2本分の損益がゼロに戻ること、つまり価格が平均建値(建値から25pips下)に届くことです。

30日以内に戻った割合は、持ち続けた場合が85.9%、買い増した場合が92.6%です。90日以内は91.5%と95.6%でした。365日以内に戻らなかった割合は4.3%(4,926件)から2.3%(2,673件)に下がり、戻るまでの日数の中央値は2.3日から0.5日になりました。一方、戻らなかった件の最大の含み損は、最初の1本が1pips動いたときの損益を1として、中央値が1,630から3,339へ、約2倍です。買い増すと戻りやすくなりますが、戻らなかったときの損失は、約2倍に増えています。
この比較は、買い増しの目標が平均建値で、建値より近いぶん、戻りやすく出る作りです。買い増しに必要な証拠金や、ロスカットは含めていません。ナンピンの考え方はナンピンの記事にまとめています。
戻るまで待つ

含み損が50pipsに届いた件のうち、届いてから545日がデータに収まる109,164件で、待った日数ごとのその後の戻りを測りました。届いた直後からの365日以内に戻った割合は95.8%です。30日たっても戻っていない15,609件では、そこからの365日以内に戻った割合は71.3%、90日たっても戻っていない9,393件では55.1%、180日たっても戻っていない6,312件では39.0%でした。待った日数が長いほど、その後に戻る割合は下がっています。待てば戻ると言える結果ではなく、待つ日数を決める材料の1つです。
スワップを受け取りながら持つ
スワップを受け取れるポジションなら、持ち続けるあいだ、毎日の受け取りが損益に加わります。ただし、ポジションの向きによっては払う側になり、金額は会社で違います。含み損の変動と比べた大きさは、この記事では測っていないため、スワップを理由に持ち続けるかは、自分の会社の表示で受け取りか支払いかを確かめてから決めてください。
アドバイスナンピンは戻りやすくなったけど、戻らなかったときの損失は約2倍になったよ。待つのも、日数が長いほど戻る割合は下がったね。
塩漬けの予防策|建玉の大きさと指標

建玉の大きさで、耐えられる値幅が決まる
資金10万円でUSD/JPYを150円で買うと、1,000通貨ならロスカットまで97円、5,000通貨なら17円、10,000通貨なら7円、20,000通貨なら2円下がるまで耐えられる計算です。1pipsの損益は、10円、50円、100円、200円になります。20,000通貨の2円(200pips)は、含み損が100pipsに届いた件の最大の含み損の中央値(201pips)とほぼ同じ幅です。建玉が大きいほど、含み損になったあとに耐えられる値幅は狭くなります。
指標は、建てる場所と損切りの価格を決める材料
移動平均線・RSI・MACDなどの指標は、建てる場所と、損切りの価格を決める材料になります。使い方は、移動平均線の記事、RSIの記事、MACDの記事、ダイバージェンスの記事にまとめています。指標を使うと塩漬けが減るかは、この記事では測っていません。通貨ペアで値幅が違うことは、通貨ペアの記事にあります。
アドバイス建玉を小さくすると、ロスカットまでの値幅が広がるよ。10万円なら、10,000通貨で7円、5,000通貨で17円だね。
塩漬けを避ける考え方|心理のクセと先に決める4つ

損失回避|損は、同じ額の得より重く感じやすい
人は、同じ金額でも、得より損のほうを重く感じやすいとされ、損失回避と呼ばれます。損失回避を扱った代表的な研究に、1992年のTverskyとKahnemanの論文(Journal of Risk and Uncertainty 5巻297〜323ページ)があります。含み損を決済すると損が確定するため、決済を先に延ばしたくなる、という説明がよく使われますが、塩漬けがこれで起きるかは、この記事では測っていません。
サンクコスト|使ったものを理由に続けてしまう
サンクコスト効果は、すでに使った時間・お金・労力があるために、将来を考えると続けないほうがよい場面でも、続けてしまう傾向です。ArkesとBlumerが1985年にThe Psychology of Sunk Cost(Organizational Behavior and Human Decision Processes 35巻124〜140ページ)で調べました。含み損の分を取り戻したい、という判断は、これにあたります。いまのポジションを今日の価格で新しく建てるか、という見方で考えると、使った分と切り離して判断できます。
建てる前に決める4つ
図の4つは、建てる前に書いておく項目です。損切りの価格は、どこまで下がったら決済するかです。建玉の大きさは、ロスカットまで何pipsあるかで決めます。持つ期限は、何日戻らなければ決済するかです。追加の買いは、するか、しないかを決めておきます。例は、USD/JPYを150円で10,000通貨買い、資金10万円の場合で、数字は例であり、おすすめの値ではありません。決めておけば、含み損になったあとの判断を、その場の気持ちだけで決めずにすみます。
日記・相場から離れる・自動売買
決めたとおりに動けたかを、トレード日記に残すと、あとで見直せます。含み損が気になって画面を見続けてしまうなら、チャートから離れる時間を決める方法もあります。自動売買(EA)は、決めた条件で決済する仕組みなので、先に決めた損切りを実行できますが、損切りのないEAは、含み損を持ち続けます。自動売買の運用はEAのポートフォリオ運用の記事にあります。
アドバイス損切りの価格・建玉の大きさ・持つ期限・追加の買いは、建てる前に決めておこう。例の数字はおすすめじゃないよ。
要点
・塩漬けは、含み損のポジションを損切りせず、建値に戻るまで持ち続けること。この記事の測定は、5通貨の1時間足の120,000件(2016年1月〜2026年10月)
・含み損が100pipsに届いた109,674件のうち、365日以内に戻ったのは91.7%。戻るまでの日数は中央値6.8日、90%点73.0日。戻らなかったのは9,150件(8.3%)
・戻らなかった件の最大の含み損は、中央値1,577pips、90%点2,556pips。含み損が100pipsに届いた件全体では、中央値201pips、90%点995pips
・含み損が50pipsに届いた件で買い増すと、365日以内に戻らなかった割合は4.3%から2.3%に下がったが、戻らなかった件の最大の含み損は約2倍
・資金10万円・150円・10,000通貨では、7円(700pips)下がるとロスカットの計算。測っていないのは、スプレッド・スワップ・ロスカットを含めた損益
塩漬けのよくある質問
塩漬けとは何ですか?
含み損のポジションを損切りせず、持ち続けることです。決まった定義のある用語ではなく、建値に戻るまで決済しない状態を指して使われます。
塩漬けにすると、どのくらいで戻りますか?
測った範囲では、含み損が100pipsなら、半分の件が約1週間以内に戻りました。9割の件は73.0日以内です。ただし、約12分の1の件は、365日たっても戻っていません。
ナンピンで塩漬けを解消できますか?
戻りやすくなりますが、戻らないときの損失が増えます。含み損が50pipsに届いた件では、30日以内に戻る割合が85.9%から92.6%に上がりました。戻らなかった件の含み損は約2倍です。
スワップがもらえるなら、塩漬けのまま持っていていいですか?
受け取れるかは、ポジションの向きと会社で違います。払う側なら、毎日の支払いが増えます。含み損の変動と比べた大きさは測っていません。
塩漬けを抱えたまま、新しいポジションを持っていいですか?
持てますが、維持率が下がります。塩漬けのポジションの必要証拠金は拘束されたままで、新しいポジションの必要証拠金も加わります。DMM FXの公式ページの式では、維持率の分母は、持っているポジションの必要証拠金です。
損切りが怖いときは、どうすればいいですか?
建てる前に、決済する価格と建玉の大きさを書いておきます。建玉を小さくすると、同じ値動きでも、損益の幅が小さくなります。
塩漬けのまとめ
塩漬けは、含み損のポジションを損切りせず、建値に戻るまで持ち続けることです。Dukascopy のティックから作った5通貨の1時間足(2016年1月〜2026年10月・120,000件)では、含み損が100pipsに届いた件の91.7%が365日以内に戻り、戻るまでの日数は中央値6.8日でした。戻らなかった8.3%の最大の含み損は、中央値で1,577pipsです。含み損が深いほど、戻る割合は下がり、日数は長くなります。
解消の方法は、損切り・ナンピン・待つ・スワップを受け取るの4つです。ナンピンは戻りやすくなる代わりに、戻らなかったときの損失が約2倍になりました。待つ日数が長いほど、あとから戻る割合は下がりました。測った結果は、スプレッド・スワップ・ロスカットを含めておらず、今後も同じとは限りません。建てる前に、損切りの価格・建玉の大きさ・持つ期限・追加の買いを決めてから使ってください。
この記事はFXの手法の情報提供で、特定の取引をすすめるものではありません。FXには価格変動のリスクがあり、元本を超える損失が出ることもあります。取引は自己責任で、リスク管理を自分で決めて行ってください。
⚠ リスクに関する注意事項
本記事は情報提供を目的としており、特定の金融商品の売買を推奨するものではありません。FX取引はレバレッジ取引の特性上、預託した証拠金以上の損失が生じる可能性があります。取引の際は、ご自身の判断と責任において行ってください。詳しくは特定商取引法に基づく表記をご確認ください。













